80代の母が一人暮らしをしています。今のところ自分で歩いて買い物にも行けていますが、最近物忘れも増えてきて、このまま一人で暮らしていて大丈夫なのか心配です。高齢者の一人暮らしは、どのような状態になったら見直した方がいいのでしょうか?
介護のコツ・生活
目次
- 1. 高齢者の一人暮らしに「何歳まで」という基準はありません
- 2. 寝たきりでも一人暮らしを続けられるケースはあります
- 3. 逆に、身体が元気でも一人暮らしが難しくなることもあります
- 4. 本人が「大丈夫」と言っていても生活を確認してみましょう
- 5. 一人暮らしの継続を考えるときに確認したいポイント
- 5-1. 食事がとれているか
- 5-2. 薬を管理できているか
- 5-3. 排泄や清潔を保てているか
- 5-4. 部屋を管理できているか
- 5-5. お金を管理できているか
- 5-6. 外出して自宅へ戻れるか
- 5-7. 緊急時に助けを求められるか
- 6. 「できないこと」より「誰かが補えるか」を考えましょう
- 7. 家族と介護サービスを組み合わせて支える方法もあります
- 8. 一人暮らしの継続を見直したいサイン
- 9. 本人だけでなく、支える家族が続けられるかも大切です
- 10. 本人が「まだ一人で暮らせる」と言う場合
- 11. 一人暮らしが難しくなったら、住まい方を考え直す
- 12. まずは地域包括支援センターなどへ相談してみましょう
- 13. よくあるQ&A
- 13-1. 認知症でも一人暮らしはできますか?
- 13-2. 寝たきりでも一人暮らしはできますか?
- 13-3. 遠方に住んでいて毎日親を見に行けない場合は?
- 13-4. 親が施設への入所を嫌がる場合はどうすればいい?
- 13-5. 一人暮らしが心配になったら、どこへ相談すればいい?
- 14. まとめ
専門家の回答
高齢者の一人暮らしに「何歳まで」という基準はありません

高齢の親が一人暮らしをしていると、70代、80代と年齢を重ねるにつれて、「そろそろ一人では難しいのでは」と考えることもあると思います。
しかし、一人暮らしを続けられるかどうかは年齢だけでは判断できません。
身体の状態、認知機能、食事や服薬などの日常生活、家族の支援、利用している介護・医療サービスなどを合わせて考える必要があります。
一人でできないことがあっても、家族やサービスで補うことで自宅での生活を続けられる場合もあります。
寝たきりでも一人暮らしを続けられるケースはあります
訪問看護で関わった方の中には、ほぼ寝たきりの状態でも一人暮らしを続けていた方がいました。
朝と夜は近くに住むご家族が訪問し、日中は訪問介護、訪問看護、訪問リハビリなどが時間を分けて入り、生活を支えていました。
このように、身体的な介助が多く必要な状態でも、家族や介護・医療サービスを組み合わせることで一人暮らしを続けられるケースがあります。
「一人暮らし=身の回りのことをすべて一人でできる」という意味ではありません。
できない部分を誰が、どのように補えるのかも一緒に考えることが重要です。
逆に、身体が元気でも一人暮らしが難しくなることもあります
歩くことができ、身の回りの動作もある程度できているからといって、必ずしも安全に一人暮らしを続けられるとは限りません。
特に認知症があり身体は元気な方では、外出したあと自宅へ帰れなくなったり、通帳など大切なものを何度もなくしたりすることがありました。
また、ご本人に悪意はなくても、会計をしたつもりで商品を持って帰ってしまうなど、生活の中でトラブルにつながることもあります。
身体が動くからこそ行動範囲が広くなり、家族や訪問サービスがいない時間帯に問題が起きることもあります。
一人暮らしを考えるときは「歩けるか」だけではなく、生活全体が安全に回っているかを見ることが大切です。
本人が「大丈夫」と言っていても生活を確認してみましょう
離れて暮らす親に電話をすると、いつも通り話せて「ちゃんとやっているよ」「大丈夫」と答えることがあります。
そのため、家族も「まだ一人で大丈夫そう」と思うかもしれません。
訪問看護では、電話では普通に会話ができ、ご本人も「大丈夫」と話していても、実際に自宅へ伺うと生活がうまく回っていないことがありました。
何日前に入れたのか分からないお茶を飲み続けていたり、傷んだ食品を食べていたり、使用済みの尿パッドが部屋に置かれたままになっていたりするケースもあります。
掃除やゴミ出しができず、家の中に物やゴミがたまっていたこともありました。
会話がしっかりしていることと、一人で生活を管理できていることは同じではありません。
一人暮らしが心配になってきたら、電話での会話だけで判断せず、実際に自宅を訪れて生活の様子を確認してみましょう。
一人暮らしの継続を考えるときに確認したいポイント
食事がとれているか
「食べている」と本人が話していても、実際には食事量が減っていたり、同じものばかり食べていたりすることがあります。
- 1日何回食事をとっているか
- 体重が減っていないか
- 冷蔵庫に傷んだ食品が残っていないか
- 同じ食品を何度も買っていないか
- 水分をとれているか
- 食品の賞味・消費期限を確認できているか
食事の準備が難しくなっている場合は、家族が準備する以外にも、配食サービスや訪問介護などを利用できる場合があります。
薬を管理できているか
薬の飲み忘れや重複服用が増えていないかも確認したいポイントです。
ただし、服薬管理が難しくなったからといって、それだけで一人暮らしができないと判断するものではありません。
薬の内容や本人の状態によっては、家族、訪問看護、訪問介護、薬局などと相談しながら管理方法を整えることもできます。
- 飲み忘れが増えていないか
- 薬が大量に余っていないか
- いつ飲む薬か理解できているか
- 同じ薬を繰り返し飲んでいないか
- 薬の変更を理解できているか
薬によって飲み忘れなどの影響は異なるため、自己判断で調整せず、管理が難しくなってきた場合は医師、薬剤師、訪問看護師などへ相談しましょう。
排泄や清潔を保てているか
トイレに行けるかだけでなく、失禁後の処理や衣類の交換、入浴なども確認します。
- 汚れた下着や尿パッドが放置されていないか
- 同じ服を何日も着続けていないか
- 入浴や清拭ができているか
- 部屋に強い尿臭などがないか
- トイレが極端に汚れていないか
自分で入浴や掃除ができなくても、訪問介護などを利用することで補える場合があります。
部屋を管理できているか
以前はきれいにしていた家にゴミや物が増えてきた場合は、生活管理が難しくなっている可能性もあります。
- ゴミ出しができているか
- 食べ終わった容器などが放置されていないか
- 通路に物が積み上がっていないか
- 掃除ができているか
- 必要なものと不要なものを整理できているか
部屋が散らかると衛生面だけでなく、転倒などの危険にもつながります。
お金を管理できているか
金銭管理の変化は、家族が気づきにくい部分です。
- 通帳や印鑑を何度もなくしていないか
- 公共料金などの支払いが滞っていないか
- 同じ商品を何度も購入していないか
- 必要以上の現金を引き出していないか
- 契約内容を理解できないまま契約していないか
金銭管理が難しくなっている場合は、家族だけでなく、地域包括支援センターなどに相談しながら支援方法を考えることもできます。
外出して自宅へ戻れるか
自分で買い物や散歩に出かけられることは、その人らしい生活を続ける上で大切です。
一方で、外出したあと自宅へ戻れなくなったことがある、目的地が分からなくなることが増えたなどの場合は注意が必要です。
緊急時に助けを求められるか
一人暮らしでは、転倒や急な体調不良が起きたときに助けを呼べるかどうかも確認しておきたいポイントです。
訪問看護で関わった方の中には、夜間に自宅で転倒し、そのまま起き上がることができず、翌日訪ねてきた娘さんに発見された方もいました。
その後は緊急入院となり、退院時には入院前より介護が必要な状態になっていました。
ただし、転倒や突然の体調変化をすべて予測して防ぐことはできません。
「事故が起きる可能性があるから一人暮らしはできない」と単純に考えるのではなく、緊急時に助けを求める手段や、定期的に様子を確認できる体制を整えることも大切です。
「できないこと」より「誰かが補えるか」を考えましょう
高齢になると、今まで自分でできていたことが少しずつ難しくなることがあります。
しかし、できないことが一つ増えたからといって、すぐに一人暮らしをやめなければならないわけではありません。
| 難しくなったこと | 検討できる支援の例 |
|---|---|
| 食事の準備 | 配食サービス、訪問介護、家族による準備 |
| 服薬管理 | 家族、訪問看護、薬局などへの相談 |
| 掃除・洗濯 | 訪問介護など |
| 入浴 | 訪問介護、デイサービスなど |
| 移動 | 福祉用具、訪問リハビリ、介護サービスなど |
| 見守り | 家族の訪問、介護サービス、自治体等の見守り支援など |
訪問介護や訪問看護などの在宅サービスを利用しながら暮らしを続ける選択肢もあります。介護保険では、居宅で生活する要介護者等を対象に、訪問介護、訪問看護、通所介護などさまざまなサービスが用意されています。
家族と介護サービスを組み合わせて支える方法もあります
介護サービスだけですべての時間を埋めるのではなく、家族の訪問と組み合わせて生活を支えているケースもあります。
先ほどご紹介したほぼ寝たきりの方も、朝と夜は近くに住むご家族が訪問し、日中は訪問介護、訪問看護、訪問リハビリなどが断続的に入ることで一人暮らしを続けていました。
本人がすべて一人でできなくても、「誰がどこを支えるか」が組めれば、自宅での生活を続けられることがあります。
一方で、支える家族が毎朝・毎晩通い続けることが難しくなれば、今まで成り立っていた生活を見直す必要が出てくる場合もあります。
一人暮らしの継続を見直したいサイン
「この状態になったら必ず施設」という明確な線引きがあるわけではありません。
ただ、次のような状況が重なってきた場合は、今の支援体制のままで生活を続けられるか、一度見直してみましょう。
- 食事や水分摂取が安定せず、健康状態への影響が出ている
- 服薬管理が難しく、支援を入れても安全に管理することが難しい
- 外出後に帰宅できないことが繰り返される
- 金銭管理や買い物で大きなトラブルが増えている
- 衛生状態や住環境を保つことが難しくなっている
- 転倒や急変時に自分で助けを求めることが難しい
- サービスが入っていない時間帯の安全を保つことが難しい
- 支えている家族の負担が大きく、現在の支援を続けることが難しい
大切なのは、問題があるかないかだけではなく、家族やサービスを追加・調整することで補えるのか、それでも難しいのかを考えることです。
本人だけでなく、支える家族が続けられるかも大切です
本人は一人暮らしを続けられているように見えても、実際には家族が毎日何度も訪問することで成り立っている場合があります。
朝晩の訪問、買い物、通院、急な呼び出しなどが続けば、支える家族にも負担がかかります。
一人暮らしを続けられるかどうかは、ご本人の状態だけではなく、現在の支援体制を家族やサービスが無理なく続けられるかも含めて考えましょう。
本人が「まだ一人で暮らせる」と言う場合
長く暮らしてきた自宅を離れたくないと思うのは自然なことです。
家族が心配していても、ご本人は「まだ一人で大丈夫」と考えていることもあります。
いきなり「もう一人では無理」「施設に入って」と伝えるより、まず困っている部分を具体的に整理してみましょう。
例えば、食事だけが難しいのであれば配食サービス、掃除が難しいのであれば訪問介護など、一部の支援から始める方法もあります。
本人と家族だけでは話が進まない場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーなど第三者に相談することもできます。
一人暮らしが難しくなったら、住まい方を考え直す
支援を増やしても安全な生活を維持することが難しくなった場合は、住まい方そのものを見直すことも選択肢になります。
- 家族との同居
- 家族の近くへの転居
- サービス付き高齢者向け住宅
- 有料老人ホームなどの高齢者向け住まい
- 本人の状態に応じた介護施設
施設に入ることだけが唯一の選択肢ではありません。
ご本人の状態や希望、家族の負担、費用などを確認しながら、今後の生活を考えていきましょう。
まずは地域包括支援センターなどへ相談してみましょう
「まだ介護が必要というほどではないけれど、一人暮らしが心配」という段階でも相談できます。
地域包括支援センターは、高齢者の生活や介護に関する相談窓口です。
利用できる介護サービスや地域の見守り支援などについて相談できます。
すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、食事や服薬、外出、転倒など気になっている変化を具体的に伝え、サービスの見直しが必要か相談してみましょう。
よくあるQ&A
認知症でも一人暮らしはできますか?
認知症があることだけで、一人暮らしができないと決まるわけではありません。
症状や生活状況、家族・地域・介護サービスによる支援体制などによって異なります。
ただし、外出して帰れない、金銭管理ができない、食品や火の管理が難しいなど、安全な生活を維持できない場面が増えている場合は、支援方法や住まい方を見直す必要があります。
寝たきりでも一人暮らしはできますか?
身体的な介助が多く必要でも、家族や訪問介護、訪問看護などの支援体制によっては自宅で生活している方もいます。
ただし、必要な介助量や医療的な管理、夜間の対応、家族の負担などによって状況は大きく異なります。本人の状態に合わせてケアマネジャーなどへ相談しましょう。
遠方に住んでいて毎日親を見に行けない場合は?
家族が毎日訪問できなくても、訪問介護、訪問看護、デイサービス、配食、地域の見守りなどを組み合わせられる場合があります。
自治体によっては、一人暮らし高齢者を対象とした訪問・見守りや緊急通報などの支援を行っている場合もあります。お住まいの地域の地域包括支援センターや自治体へ確認してみましょう。
親が施設への入所を嫌がる場合はどうすればいい?
まずは、本人が何を不安に感じているのか確認してみましょう。
自宅を離れたくない、費用が心配、施設の生活が分からないなど、理由によって対応も変わります。
すぐに施設入所だけを考えるのではなく、在宅サービスを増やして生活を続けられないか検討する方法もあります。家族だけで話し合うことが難しい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどへ相談してみましょう。
一人暮らしが心配になったら、どこへ相談すればいい?
まずはお住まいの地域の地域包括支援センターへ相談できます。
すでに介護保険サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーへ相談しましょう。
食事量の低下、体重減少、転倒、服薬の問題、認知機能の変化など健康面で気になることがある場合は、かかりつけ医や訪問看護師などへ相談することも大切です。
まとめ
高齢の親が一人暮らしを続けられるかどうかは、「何歳になったか」だけで判断できるものではありません。
また、歩けるから一人暮らしができる、寝たきりだから一人暮らしはできない、という単純なものでもありません。
食事、服薬、排泄、清潔、金銭管理、外出、緊急時の対応など、実際の生活がどの程度維持できているかを確認しましょう。
一人でできないことがあっても、家族や訪問介護、訪問看護などの支援で補える場合があります。
大切なのは「何ができなくなったか」だけではなく、「その部分を誰かが補えるか」、そしてその支援を継続できるかという視点です。
本人が「大丈夫」と話していても、電話だけでは分からない生活の変化が隠れていることもあります。心配になったときは実際の生活環境を確認し、必要に応じて地域包括支援センターやケアマネジャーなどへ相談してみましょう。
参考
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
高齢の親が一人で暮らしていると、「いつまで一人暮らしを続けられるのだろう」と心配になることがありますよね。
ただ、一人暮らしを続けられるかどうかは、年齢や「歩ける・歩けない」だけで決まるものではありません。
今回は、生活のどこを確認すればよいのか、一人暮らしの継続を見直したいサイン、家族や介護サービスでできることについてご紹介します。