介護のコツ・生活
2026.10.08 作成
2026.10.08 更新
定年後、夫婦でずっと一緒にいるのがしんどい…一人の時間と家事をどう分ける?
専門家の回答
一緒にいたい気持ちと、一人になりたい気持ちは両方あってよい

定年後、これからは二人でゆっくり過ごせると思っていたのに、昼食の準備が増えたり、何をするにも相手の予定が気になったりする。「嫌いになったわけではないけれど、ずっと一緒はしんどい」と感じたとき、そんな自分を責めなくてもよいのではないでしょうか。
長年の関係や暮らし方を、退職という区切りだけで急に変えるのは簡単ではありません。「せっかく時間ができたのだから、もっと仲よく」と言われても、その前に一息つきたいことはあるはずです。ここでは、どちらか一人に我慢を求めず、日々の負担を話し合うための工夫を考えます。
その年齢になって急に「仲よくしましょう」と言われても、難しいことはあると思います。それでも、家事に手を出してみる、相手の趣味に少し付き合ってみるなど、双方が歩み寄ろうとする姿勢は大切にしたいです。
歩み寄りは、相手の予定に毎回合わせたり、嫌なことも引き受けたりする意味ではありません。「これは一緒にできる」「この時間は一人でいたい」の両方を伝えることも、暮らしを続けるための話し合いです。
「ずっと家にいられると困る」を、具体的な一場面にする
不満が大きいほど、「何もしない」「いつも邪魔される」と言いたくなるかもしれません。話を始めるなら、最近負担だった場面を一つ選んで伝えてみます。例えば、次のような言い方です。実際の相談者の発言ではなく、話し方の例として紹介します。
- 「昼ごはんを毎日二人分考えるのが大変。週に何日か、自分の分は自分で用意する形にできないかな」
- 「午前中は一人で静かに過ごす時間がほしい。用事の相談は昼食の後にできる?」
- 「出かけるたびに予定を聞かれると落ち着かない。帰る時間だけ伝える形にしたい」
相手の返事も、すぐに言い負かそうとせず聞く時間を取ります。厚生労働省「こころの耳」では、家族の話を否定せず聴き、語りたがらないときは無理に聞き出さない姿勢を紹介しています。これは夫婦関係を必ず改善する方法ではありませんが、話を受け止める際の参考になります。1)
家事は「何かあったら言って」から、一つ引き受ける形へ
家事を頼むたびに説明が必要だと、頼む側には用事を見つけて伝える負担が残ります。まずは一つ、始めから終わりまで引き受けられる用事を決めるのはどうでしょうか。
例えば昼食なら、何を食べるか考える、用意する、片づけるところまで。洗濯なら、洗うだけでなく干す・取り込むまで。最初からすべて任せようとせず、できる範囲を相談して決めます。料理が得意でなければ、買ってきた物を使うなど、続けやすい方法でも構いません。
担当は性別だけで決めず、体調、得意なこと、これまで担ってきた量も踏まえます。「これまで家にいた方が全部続ける」「退職した方が急に全部する」のどちらかに固定する必要はありません。やってみて負担が偏るなら、その用事から調整します。
相手の趣味を全部好きになる必要はない
一緒の趣味を持てたら楽しいかもしれませんが、無理に同じことを楽しもうとすると疲れてしまうこともあります。話を少し聞く、一度だけ見に行く、短い散歩に付き合う。その程度の関わり方を選んでもよいと思います。
誘う側も「今日はやめておく」という返事を受け止めることが大切です。相手が断るたびに機嫌を損ねてしまうと、選べるはずの誘いが負担になります。二人で過ごす時間と、それぞれが好きなことをする時間を、別々に持つ方法もあります。
外で働くことだけを解決策にしない
再雇用や短時間の仕事を続けたい人もいれば、体を休めたい人、外出が負担な人もいます。「家にいると困るから働いてきて」とだけ伝える前に、しんどさの原因が家事なのか、会話の頻度なのか、一人の時間の少なさなのかを確かめたいところです。
仕事や趣味で外出する予定を作っても、帰宅後の家事が一方に集中したままなら、その負担は残ります。外へ出ることと、家の中の役割を分けることを、別々に話してみてください。毎日外へ出なくても、別の部屋や時間帯でそれぞれに過ごす工夫を試せます。
子どもは「仲よくして」で片づけなくてよい
親から相談された子どもも、二人をすぐ仲直りさせようと背負わなくて構いません。「どの時間が一番しんどい?」「まず何が減ると楽になりそう?」と、困っている場面を聞く役割から始められます。
本人に断らず相手へ話を伝えたり、間に入って結論を決めたりすると、相談しにくくなることも考えられます。誰に何を伝えてよいかは、話した本人と確かめてください。
歩み寄りを考えても、相手が話を聞いてくれないことはあります。一人が頑張れば関係が変わると約束できるものではありません。まずは自分が休める時間を守り、夫婦だけで抱えるのがつらければ、信頼できる人に話す選択も残しておきましょう。
今日決めるのは、これからの夫婦関係すべてでなくて構いません。「次の昼食はどうするか」「明日の午前は一人で過ごせるか」。お互いの負担を一つ知り、一つ見直すくらいの話し合いから始めてみませんか。
参考
情報確認日:2026年9月28日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
一緒にいる時間が増えて疲れると感じたら、無理に仲のよい夫婦を目指す前に、どの時間や用事で負担が増えたのかを言葉にしてみてください。一人で過ごす時間と家事の担い方を、双方が少しずつ見直すところから始める方法があります。