介護のコツ・生活
専門家の回答
服を買い替える前に、どの動作が難しいかを見る

親の着替えに時間がかかるようになると、介護用の服をそろえた方がよいのか迷うかもしれません。まずは普段の着替えで、どこに手助けが必要なのかを確認します。腕を上げることと、ボタンをつまむことでは、選ぶ服のポイントが変わります。
| 困っていること | 試すときに見ること |
|---|---|
| 頭からかぶると腕や肩がつらい | 前開きの服で、腕を大きく上げずに着られるか |
| 袖に手を通しにくい | 袖口や脇にゆとりがあり、布が引っかからないか |
| 小さなボタンを留めにくい | 本人が扱える留め具か。面ファスナーなども試せるか |
| ズボンの上げ下げが難しい | 腰回りのゆとりと、つかみやすさ。トイレでも扱えるか |
| 着替えの途中でふらつく | 服の変更に加え、姿勢や介助方法の相談が必要か |
これは選び方を相談するための整理です。本人が普段している動作を一緒に見て、痛みやふらつきがあれば、無理に続けて試さないでください。着替えは座っていても身体を傾ける動きがあり、服だけ変えれば安全になるとは限りません。1)
上着は「前開き」と「留めやすさ」を分けて考える
腕を上げにくい場合は、前が開く上着が候補になります。袖口が広く、身体を通す部分にゆとりがあるかも確かめます。リハビリテーションの資料でも、着替えやすい服の形や、動かしやすさに合わせた工夫が紹介されています。1)2)
訪問看護では、かぶる服だと腕が上がらず着替えにくい方に、前開きで面ファスナーの服を勧めたことがありました。服を選ぶときは、腕を通しやすいかに加えて、留め具を本人が扱えるかも確かめると、手伝う部分を考えやすくなります。
前開きでも、小さいボタンが並んでいると指先の操作が負担になることがあります。大きめのボタンや面ファスナーなどを候補にし、実際に留め外しできるかを試します。家族が留めやすいことと、本人が自分で扱いやすいことは、別々に確認してください。
また、留め具が開いたときに肌へ当たらないか、閉じる位置が本人から見えるかも確認点です。「介護用」という表示だけで決めず、普段の着替えで困っている動作が楽になる形かを見ていきます。
ズボンは着替えだけでなく、トイレの場面でも確かめる
ズボンは、はくときに足を通せるか、腰まで上げられるかに加えて、トイレで下ろして戻す動作も考えます。腰回りが楽でも、自分でつかむ場所が分かりにくいと扱いにくい場合があります。普段のトイレの介助者にも、困っている場面を聞いてみてください。
ウエストや裾がきつすぎないか、逆に長すぎて足元に余っていないかを確認します。立ったまま片足を上げることが不安な方は、服選びと一緒に、安全に着替えられる姿勢を看護師やリハビリ担当者へ相談してください。家族が腕を引っ張って支えながら急いではかせる方法で補おうとしないことが大切です。
訪問看護では、ズボンをゴムのウエストのものに替えて、一人で着脱できるようにしたことがありました。ズボンを選ぶときは、ベルトや前の留め具が負担になっていないかも確認してみてください。
寝ている時間が長い人は、着た後の状態も見る
着替えが済んだ後も、背中や脇に布がたまっていないか、縫い目や留め具が当たって不快でないかを本人に聞きます。座っているときと寝ているときでは、衣類の位置が変わります。肌に赤みや傷がある場合は、服のせいと決めず、訪問看護師などへ見てもらってください。
身体の向きを変えることが難しい、腕や脚が動かしにくい場合は、どこまで開く服なら介助しやすいかを相談します。袖に通すために関節を無理に伸ばすのではなく、今の動く範囲に合う服と介助方法を選びます。3)
点滴やチューブ、傷の処置がある場合は、購入前に看護師へ相談してください。着替えのために家族が器具を外したり、管を強く引いたりしないよう、衣類の開き方と介助する人を確認します。
本人の好みと、洗濯して使い続けられることも大切
着替えやすさだけで服を全部入れ替えると、本人が着たくない服ばかりになることも考えられます。好きな色や形、普段着と寝間着を分けたいかなど、本人の希望も聞いて選んでください。選択肢が多いと迷う場合は、候補を少なくして見比べる方法もあります。3)
「人前では必ずベルトをしたい」と考えている方が、ベルトを着けられないことで訪問を断ったことがありました。その方とは、信頼関係を築きながら訪問に慣れていただきました。着替えやすい服を勧める前に、本人が人に会うときに大事にしている身だしなみも聞いてみてください。
最初は一着を試し、着る・脱ぐ・トイレで扱うところまで確認してから買い足すと、合わない服をまとめてそろえることを避けられます。店頭で十分に試せない場合は、寸法や開口部、交換条件を購入前に確かめてください。
洗濯表示も確認します。普段使う洗濯機や乾燥方法で手入れできるか、乾くまでに替えが必要かを考えます。デイサービスなどへ持参する場合は、名前の付け方や着替えを扱う際の注意も事業所へ聞いておくと準備しやすくなります。
服を変えても難しいときは、普段の一着を持って相談する
「着替えができない」だけでなく、どの服で、どこまで自分でできるかを伝えます。例えば「袖は通せるけれどボタンは難しい」「上着は着られるがズボンでふらつく」と分けて説明すると、服を変える部分と介助する部分を相談できます。
相談先は訪問看護師や、リハビリに関わる作業療法士などです。作業療法では日常生活の動作を支援します。普段着ている服を見てもらい、本人の手の動きや姿勢に合う方法を確認してください。4)
よくある質問
高齢者には前開きの服が必ずよいですか?
一律には決まりません。頭を通す動作が難しい方には候補ですが、留め具の操作が負担になる方もいます。本人が着慣れた形も含め、どの動作を助けたいかで選びます。
大きいサイズを買えば着替えやすくなりますか?
大きさだけでは判断できません。袖口や脇に必要なゆとりがあるか、着た後に布が余りすぎないかを確認します。裾丈も含め、普段の姿勢で確かめてください。
家族が全部着せた方が早いのですが?
時間がないときは手伝う場面もありますが、本人ができる動作まで一律に代わる必要はありません。袖を通す、留め具の一部を扱うなど、できるところと介助が必要なところを支援者と整理します。3)
まとめ:着替えにくい動作を一つ決めて、服を試す
親の服選びは、腕を通す、留め具を扱う、ズボンを上げ下げするなど、難しい動作から考えます。本人の好みを聞き、一着で普段の着替えやトイレの動作を試してみてください。痛みやふらつき、介助の難しさがあるときは、服だけで解決しようとせず、看護師や作業療法士へ相談しましょう。
出典・参考資料
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
まず、腕を上げる・袖を通す・ボタンを留めるなど、どの動作が難しいかを確認します。前開きや扱いやすい留め具を候補にし、本人の好みも聞いて一着から試してください。痛みやふらつきがある場合は、服と介助方法を看護師や作業療法士へ相談します。