病気・症状
目次
- 1. 口腔ケアと感染症のニュースで、何が分かった?
- 1-1. 自宅でも同じ割合で減る、とまでは分からない
- 2. 口の中のケアが、なぜ肺炎と関係するの?
- 3. 親の口腔ケアは、「磨いているか」より「どこまでできるか」を確認する
- 4. 自宅で見直したいケアと、無理に進めない方がよい場面
- 4-1. 歯磨きは、力を入れすぎずに続けられる方法へ
- 4-2. うがいが難しい人に、洗口液を無理に使わない
- 4-3. 入れ歯だけでなく、外した後の口も確認する
- 5. 準備を手伝い、本人が取り組みやすいきっかけをつくる
- 6. 相談するときは、普段の道具と困る場面を伝える
- 7. よくある質問
- 7-1. 洗口液を使えば、歯ブラシで磨かなくてもよいですか?
- 7-2. 1日3回できなければ意味がありませんか?
- 7-3. 口腔ケアで尿路感染症も防げますか?
- 8. まとめ:親が今できるケアを、一緒に見直すところから
- 9. 出典・参考資料
専門家の回答
口腔ケアと感染症のニュースで、何が分かった?

2026年9月8日、広島大学病院が入院患者の口腔ケアに関する研究成果を発表しました。大学の資料では、歯科医師・歯科衛生士が患者に合った方法を伝え、歯ブラシや洗口液などを渡して、自分でケアを続けることを支援しています。1)
| 調べた感染症 | 前年同期群より相対的に低かった割合 |
|---|---|
| 院内肺炎 | 約43% |
| 菌血症(血液中に細菌が入る状態) | 約62% |
| 尿路感染症 | 約20% |
出典:広島大学発表資料。数値は比較した集団間の相対的な差で、「患者100人中43人の肺炎を防いだ」という意味ではありません。1)
原著論文では、2022年7月~2023年3月のプログラム参加者4,893人と、前年同期の入院患者をもとに比較しています。条件に合わない人を除き、患者背景をそろえる解析を行った研究です。2)
自宅でも同じ割合で減る、とまでは分からない
同時期にくじ引きでケアの有無を決めた試験ではなく、過去の入院記録を調べた研究です。背景を調整しても、年による医療環境などの違いが残る可能性があります。口腔ケアだけが減少の原因と断定したり、在宅の高齢者にも同じ効果があると当てはめたりはできません。2)
また、用品の配布だけでなく専門職による支援を含む取り組みです。「この洗口液を買えば肺炎を防げる」と受け取るのではなく、親に合った方法で続けられているかを見直すきっかけにしてみてください。研究では企業から用品提供があり、論文には企業が研究過程に関与しなかったと記載されています。1)2)
口の中のケアが、なぜ肺炎と関係するの?
誤嚥(ごえん)は、飲食物や唾液などが誤って気管へ入ることです。口の中の細菌を含む唾液などが肺に入り、肺炎につながる場合があります。食事中に大きくむせる場合だけでなく、本人や家族が気づかないうちに起こることもあります。3)
口を清潔に保つことは大切ですが、飲み込む力や全身の状態への対応も必要です。口腔ケアをしていれば誤嚥しない、肺炎にならないという意味ではありません。むせと誤嚥の違いは、高齢者の「むせ」と「誤嚥」の記事で説明しています。
親の口腔ケアは、「磨いているか」より「どこまでできるか」を確認する
「毎日磨いているよ」と聞くと安心しますが、歯ブラシを持てることと、口全体を手入れできることは別です。本人を試すように聞くのではなく、「奥の方は磨きにくくない?」「入れ歯を外すときに困らない?」と、手伝える部分を探してみましょう。
| 確認すること | 困っていたら伝えること |
|---|---|
| 歯ブラシを動かせるか | 握りにくい、奥に届かない、途中で疲れる |
| うがいして吐き出せるか | 水を飲んでしまう、むせる、口にためられない |
| 入れ歯を扱えるか | 外せない、洗えていない、つけると痛い |
| 歯や口の中に変化がないか | 痛み、出血、乾き、食べかすが残る |
日本歯科医師会の資料でも、歯磨き・入れ歯の着脱・うがいをそれぞれ確認します。全部を家族が代わるのではなく、本人ができることと、手助けが必要なことを分けて歯科へ伝えると相談しやすくなります。4)
訪問時、歯の汚れや歯磨き道具のほこりから、ケアの状況が気になったことがありました。入れ歯をつけずに食事をしている方もいました。道具があっても使えているとは限らないため、家族も実際に使う様子を一緒に見て、困っている動作がないか確認してみてください。
自宅で見直したいケアと、無理に進めない方がよい場面
歯磨きは、力を入れすぎずに続けられる方法へ
歯や歯ぐきの境目、歯と歯の間などは磨き残しやすい部分です。歯ブラシは軽く持ち、強くこすらずに手入れします。痛みがあるとケアを嫌がる理由にもなるため、「嫌がるから仕方ない」と片づけず、痛い場所や道具が合っているかを確認してください。5)
家族が手伝う場合も、本人にひと言伝えてから始めます。口を開けないときは押さえつけて進めず、痛みや不安、声かけが伝わっているかを考え、歯科医師・歯科衛生士に方法を相談してください。6)
うがいが難しい人に、洗口液を無理に使わない
口に含んだ水を吐き出せない、うがいでむせる場合は、研究の方法をそのまままねしないでください。水分や汚れがのどへ流れ込まないよう、姿勢と水分量、汚れの取り除き方を教わる必要があります。スポンジブラシも水分が多いとむせる原因になるため、道具だけで安全が決まるわけではありません。5)
寝たきりで座ることが難しい方や、飲み込みに問題がある方は、普段の姿勢を訪問看護師や歯科へ見てもらい、自宅でできる方法を相談します。ケア中にむせたり苦しそうにしたりしたら、いったん中止して状態を確認してください。5)6)
入れ歯だけでなく、外した後の口も確認する
入れ歯を洗うことに加えて、外した後の歯ぐきや粘膜もケアの対象です。歯が少ない・ない場合も、口の中の手入れが不要になるわけではありません。痛みや傷、外しにくさがあるときは、無理に動かさず歯科へ伝えます。7)

準備を手伝い、本人が取り組みやすいきっかけをつくる
「面倒だから」と口腔ケアに気が進まない方もおり、準備を手伝うことや、ご褒美が取り組むきっかけになったことがありました。声をかけても始められないときは、本人にとって何が手間なのかを聞き、準備のどこを手伝えるか考える方法があります。
例えば、本人と相談して使う道具をそろえたり、手の届く場所に置いたりする方法があります。楽しみをきっかけにする場合も、本人の好みや意向を尊重し、無理強いせず、取り組みやすい方法を一緒に選びます。
相談するときは、普段の道具と困る場面を伝える
かかりつけの歯科へ、使っている歯ブラシ・歯磨き剤、入れ歯の有無、いつ誰がケアしているかを伝えます。「やり方を教えてほしい」と相談して構いません。家族が毎回手伝えない場合も、その事情を含めて続けられる方法を考えます。
通院が難しければ、訪問で歯科診療を受けられるか、かかりつけ歯科やケアマネジャーに確認する方法があります。訪問看護やデイサービスを利用している方は、家庭で困っている場面を伝え、サービス利用中の様子も聞いてみてください。対応範囲や利用条件は個別に確認します。
よくある質問
洗口液を使えば、歯ブラシで磨かなくてもよいですか?
洗口液だけに置き換えるものではありません。洗口液と液体歯磨きは使い方が異なり、製品表示の確認が必要です。口の状態とうがいができるかを踏まえ、歯科へ相談してください。8)
1日3回できなければ意味がありませんか?
今回の研究から、回数だけで家庭での効果の有無を判断することはできません。できない時間帯や介助の負担を伝え、どのように毎日のケアを続けるか相談しましょう。
口腔ケアで尿路感染症も防げますか?
今回の研究では発症の少なさとの関連が示されましたが、口腔ケアだけで予防できると確定したわけではありません。尿の変化や体調不良がある場合は、歯磨きを増やして様子を見るのではなく医療職へ相談してください。2)
まとめ:親が今できるケアを、一緒に見直すところから
口腔ケアの研究は、毎日の手入れを見直すきっかけになります。まずは歯磨き・うがい・入れ歯のケアで、親が困っていることを一つ聞いてみてください。むせる、痛い、道具を扱えないなどの問題があれば、歯科や訪問看護師に伝え、本人と家族が続けられる方法を相談していきましょう。
出典・参考資料
- 広島大学「セルフオーラルケア、入院患者の感染症予防に効果」2026年8月28日
- Nishiほか:入院患者のセルフ口腔ケア支援と院内感染の関連(2026年、原著論文抄録)
- 日本訪問歯科協会「高齢者に多い誤嚥性肺炎」
- 日本歯科医師会「歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版」口腔清掃の自立度
- 日本歯科衛生士会「適切な口腔ケアの手技」
- 日本訪問歯科協会「口腔ケアQ&A〈1〉正しい方法」
- 日本訪問歯科協会「入れ歯をはずした後のお口のケア」
- 日本訪問歯科協会「洗口液と液体ハミガキ」
情報確認日:2026年9月9日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
口腔ケアは、口を清潔に保つための大切な習慣です。入院患者の研究では感染症が少ないこととの関連が示されましたが、自宅でも同じ効果があるとは言い切れません。まず歯磨き・うがい・入れ歯の手入れがどこまでできるか確認し、本人に合う方法を歯科へ相談します。