病気・症状
専門家の回答
まず、便の回数より先に本人の様子を確認する

呼びかけへの反応がない、意識がもうろうとしている、突然の激しい腹痛がある場合は119番へ連絡してください。便の写真を撮ったり、訪問看護からの折り返しを待ったりするより、救急要請を優先します。2)
そこまでの様子でなくても、血便が出る、水分を飲めない、飲んでも吐いてしまう、尿が明らかに少ないなどの場合は、速やかに医療機関へ連絡し、受診の方法を確認します。高齢の方の下痢が続くときは、脱水にも注意が必要です。3)4)
「今日は何回だから大丈夫」と回数だけで決めず、飲めているか、尿は出ているか、会話や動きが普段と違わないかを見てください。本人が「平気」と言っていても、家族から見た変化を一緒に伝えます。
高齢者施設のO157集団感染のニュースから考えたいこと
2026年9月9日、栃木県は高齢者施設で腸管出血性大腸菌O157の集団感染があったと発表しました。8月31日から9月6日の届出患者は入所者7人で、発表時点では2人が入院加療中とされています。この発表だけでは、原因食品や感染経路は特定できません。1)
ニュースを見て「親の下痢もO157では」と心配になるかもしれません。ただし、下痢や血便の原因は一つではなく、便の見た目だけでは診断できません。O157かどうかを家族が判断するより、症状が出た時刻と今の状態を医師へ伝えることが先です。3)
電話・受診で伝えることを、短くメモする
下痢の回数、便の状態、水分や食事、排尿状況の記録は、診察の手がかりになります。分からない項目があっても、連絡を先延ばしにする必要はありません。見た範囲と本人から聞いた内容を分けて伝えましょう。4)
| 確認すること | 伝え方の例 |
|---|---|
| 始まった時期・便の様子 | 昨夜から水のような便が出ている。朝から3回、血が混じって見える |
| 水分・食事・尿 | 何をどのくらい飲めたか。吐いていないか。最後に尿が出たのはいつか |
| 一緒にある症状 | 腹痛、発熱、吐き気。返事や動く様子の普段との違い |
| 持病・使っている薬 | お薬手帳を用意し、下剤や最近始まった薬、市販薬も伝える |
| 食事・周囲の状況 | 最近食べたもの、同居家族や利用施設で似た症状を聞いているか |
表は伝え方の例で、実際の患者さんの記録ではありません。服薬や食事の情報も、原因を決めつけるためではなく、医師が確認する材料として用意します。食中毒が疑われる場合は、食べた食品の包装やレシートなどが調査に役立つこともあります。5)
相談までの水分補給と薬で気をつけること
飲める状態かを確認し、無理に飲ませない
下痢や嘔吐では水分が失われるため、水分補給が必要です。ただし、飲むこと自体が難しいときは、自宅で補おうとし続けず医療機関へ相談してください。意識がはっきりしない方には、口から無理に飲ませないでください。4)5)
経口補水液は、脱水時に水分や電解質を補うための病者用食品です。製品ごとに対象となる状態が異なるので、表示を確認します。日常の飲み物の代わりに大量に飲むものではありません。必要性や使い方は医師・薬剤師などに相談し、特に塩分やカリウム等の摂取を制限されている方は事前に確認してください。6)
下痢止めや残っている薬を自己判断で追加しない
食中毒が疑われる場合は、手元の薬を自己判断で飲む前に診察を受けましょう。下痢を早く止めたいと思っても、以前の処方薬や家族の薬を使わず、今回の状態に合う対応を確認します。5)
普段から下剤などを使っている方は、薬の名前と最後に使った時刻を伝え、次の分をどうするかを処方元へ確認してください。あらかじめ個別の調整方法を説明されている場合は、その指示を確認します。
トイレに間に合わない・下着が汚れることも相談してよい
訪問看護で関わった方には、下痢でトイレに間に合わず、失禁や下着の汚れに困っている方もいました。「便がゆるい」という症状だけでなく、着替えや片づけが増えていることも相談時に伝えてください。
家族が手伝うときは、本人に声をかけ、着替えを準備します。便で汚れた下着の扱いは、周囲に汚れを広げないことも大切です。食中毒が疑われる場合、農林水産省は下着・衣類を別に洗うよう案内しています。具体的な処理・消毒方法は次の節も参考にしてください。5)
家族の排泄介助では、便を扱った後の手洗いを
原因がまだ分からない段階でも、排泄介助後と食事の前には、石けんと流水で手を洗います。O157などは、便に含まれる菌が手や物を介して口へ入ることで感染することがあります。3)
便や吐いた物を片づけるときは、使い捨て手袋・エプロン・マスクを着け、ペーパータオルなどで静かに取り除きます。使ったおむつや紙は袋を閉じて処分し、手袋を外した後も手を洗います。汚れた衣類を振り回すなど、周りへ飛び散らせる扱いは避けましょう。7)
消毒方法は原因となる病原体や素材によって異なります。例えばノロウイルスでは、アルコール消毒だけで十分とはいえません。汚れた場所の消毒や衣類の処理は、受診先・訪問看護師に確認し、公的な手順と製品表示に沿って行ってください。7)
下痢が出た日は、デイサービスなどにも利用前に連絡し、症状と医療機関からの説明を伝えます。「何日休めばよい」と一律に決めず、原因や回復の状況に応じた利用再開の条件を確認しましょう。
まとめ:症状と飲めている量を伝え、早めに相談する
高齢の親が下痢をしたら、まず意識や腹痛など緊急性のある変化を確認します。便の状態、水分、尿、普段との違いを短くメモし、かかりつけ医などへ伝えてください。原因を家族で決めず、受診と家庭でのケアの方法を確認することが大切です。
出典・参考資料
- 栃木県「腸管出血性大腸菌感染症(3類)患者の集団発生について」2026年9月9日発表
- 消防庁「救急車利用マニュアル」高齢者の症状
- 厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」症状・診断・予防
- 国立がん研究センター がん情報サービス「下痢」相談時の記録等を参照
- 農林水産省「食中毒かな?と思ったら」
- 消費者庁「経口補水液について」
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」便・吐物の処理
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
意識がおかしい、突然の激しい腹痛がある場合は119番へ。血便、水分を飲めない、尿が明らかに少ないなどの場合も、速やかに医療機関へ連絡してください。便の回数だけでなく、飲めている量や普段との違いを伝えます。2)3)4)