介護

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2025.06.06 作成

2025.06.06 更新

介護される側の本音とは?『ありがとう』の裏にある思いをご存知ですか

介護に不安を感じています。高齢の親に『ありがとう』と言われるけど、本当にそう思ってくれているのか自信がありません。どうすれば相手の本音を引き出せるでしょうか?家族の本音を引き出す方法は?

専門家の回答

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「ありがとう」と言われたときに、感謝以外の気持ちが隠れていると感じたことはありませんか?
介護される側は、介護してくれる人に対し本音を言えないこともあります。
本記事では、介護される側が抱えやすい本音や、本音を引き出すために効果的な関わり方について解説します。
相手の本音を引き出しながら、寄り添った介護をしたいとお考えの方のお役に立てれば幸いです。

本音を言えないまま抱えている思いがあるかもしれません

介護される側の本音とは?『ありがとう』の裏にある思いをご存知ですか

介護で「ありがとう」と言われたとき、裏に本音が隠れているかもしれません。
介護される側は、感謝以外にも次のようなさまざまな感情を持っているためです。

  • 介護をしてもらう申し訳なさやプライドの葛藤
  • できなくなってしまった喪失体験への戸惑い
  • 入浴や排泄の介護を受ける恥ずかしさ
  • 介護や介護者への不満

介護される側の隠された本音を知ることは、よりよいケアや関わりにつながります。
声のトーンや表情などから、「ありがとう」という言葉に、それ以外の意味が隠れてないか考えてみることが大切です。

介護される側のよくある本音

介護される側が持つ本音に、迷惑をかけて申し訳ないという気持ちや、自分でできないことがつらいと思う気持ちがあります。

これ以上は頼めない、迷惑をかけたくないという気持ちから、手伝ってほしいのに遠慮したり、「自分でできる」と拒否したりすることも少なくありません。

「ありがとう」は感謝だけではなく、これ以上は頼めないと感じているサインの可能性があります。

介護する側とされる側に生まれる気持ちのすれ違い

介護に悩む女性

介護する側と介護される側には、気持ちのすれ違いが生じる場合があります。

例えば、冬のトイレ介助です。
介護する側はトイレは寒いため早く終われるようにテキパキと動きました。
一方、介護される側は寒いと関節が痛むため、テキパキ動くことを負担に思っています。
しかし、介護をしてもらう申し訳なさから、本当はゆっくり動いてほしいことを伝えられません。

このようなすれ違いが生じると、いいと思ってとった行動が、相手にとっては負担となっている場合もあります。
介護するときには、介護される側の表情や動作から、隠れた感情を読み取ることが大切です。

本音を引き出すためにできる関わり方

本音を引き出すためには、介護される側の言葉を聴く姿勢が大切です。
介護される側に「ありがとう」と感謝を伝えられた場合は、「気になることはないか」の声かけをすることで、介護される側の思いに触れられます。

伝えてくれた思いには「そのように思っていたのですね」と共感を示し、否定せずに受け止めましょう。
本音を伝えてくれた場合は、「伝えてくれてありがとう」と添えることで、介護される側の気持ちを楽にできます。

会話で沈黙になったときに気まずく思うことはありません。
沈黙もコミュニケーションの一つであるからです。
相手のペースに合わせて、急かさずに返答を待ちましょう。

返答を待つことで、ゆっくり話を聞いてもらえる人だと伝えられ、相手に安心感を与えられます。
「ゆっくりでいいですよ」などの声かけも効果的です。

相手の言葉だけでなく、表情や態度、声のトーンなどを観察し、変化が気になったときは尋ねてみてください。

言葉には出さないけど、いつもより元気がないと感じた場合に「今日はいつもより元気がなさそうだけど、どうしたの?」とさりげなく声をかけてみるのもいいでしょう。
普段から相手を注意深く観察することで、小さな変化にも気が付くようになります。

本音を引き出しにくくする関わり方

介護する側の関わり方によっては、相手の本音を引き出しにくくしてしまいます。
以下のような関わり方は避けましょう。

  • 否定やアドバイスをする
  • 抽象的な聞き方をする
  • 介護する側の都合や感情を優先させる
  • 沈黙が気まずくて話し続ける

自分の気持ちや発言を否定されたり、求めていないのにアドバイスをもらったりすると、相手は自分と違う考え方やとらえ方をしていると感じます。

そのため、自分の思いを話しても分かってもらえないと感じ、本音を言いにくくなってしまいます。
介護される側の気持ちや発言は傾聴し、最後まで遮らずに聞くことが大切です。

「大丈夫?」のような抽象的な聞き方は、「大丈夫です」と尋ねた通りの返答を招きやすいです。
「~は大丈夫ですか?」のように尋ねることで、会話を深められます。

介護される側の心理に寄り添う支援や工夫

寄り添い合う高齢者とその家族

介護される側の心に寄り添うためのポイントを2つ紹介します。それぞれみてみましょう。

自尊心を保つ声かけや環境づくり

介護される側の心に寄り添うには、自尊心を保つ声かけや、安心して話せる環境づくりが欠かせません。
会話の際は相手の言葉に共感し、傾聴します。

会話の途中で事実と異なる内容や、違和感を覚えた場合は否定せずに、「そう思われるのですね」と受け止めましょう。

落ち着いて会話をするには、静かな環境とプライバシーの確保が大切です。
時間に余裕があるときを選び、相手のペースに合わせて対応しましょう。

本音を話しやすい「第三者の存在」の重要性

家族以外の「第三者」が本音を話しやすい重要な存在になる場合もあります。
家族は日常的に接するため、介護される側は心配や迷惑をかけたくない、甘えたくないという気持ちを持つケースもあります。

その一方で、ケアマネや訪問ヘルパーなどは、たまに会うからこそ普段との違いに気が付きやすい場合もあります。
「第三者」とも連携を取り、介護される側の本音に触れる機会を作りましょう。

体験談・声から学ぶ介護される側の本音

実際の体験談をみてみましょう。

介護が必要になってから、娘が毎日お世話をしてくれるようになりました。
お風呂やトイレも手伝ってくれて本当にありがたい。でも、申し訳ない気持ちの方が強くて、「ありがとう」しか言えないんです。

本当はもっといろんな気持ちがあるけど、言えば迷惑をかける気がします。
自分のことが自分でできなくなったことが悔しいし、恥ずかしい。

だから、感謝の言葉に気持ちを押し込めるようにしているのかもしれません。
娘には「もっとゆっくりしてくれていいのに」と思うけど、それも言えずにいます。

このように「ありがとう」の言葉には、感謝だけでなく遠慮や葛藤が含まれている可能性があります。
「ありがとう」の奥に別の思いがあるかもしれない、と思って接してみると、別の思いに気付けるかもしれません。

介護をする側は、表情や声のトーン、動作の変化などをていねいに観察して、言葉にならない気持ちに目を向けてみましょう。

まとめ

介護される側の「ありがとう」の言葉には、感謝だけでなく、遠慮や戸惑い、つらさといった本音が隠れている可能性があります。
介護される側が本音を言えない背景には、申し訳なさやプライド、自分らしさを失う不安など、複雑な感情が存在します。

介護する側は、表情やしぐさ、声のトーンなどから相手の変化を感じ取り、ゆっくりと話を聴く姿勢が大切です。
本音を引き出すには、共感し、否定せずに受け止める関わりが欠かせません。

ときには家族以外の第三者が、本音を話しやすい存在となることもあります。
相手の心に寄り添う介護を目指すために、表に出ない気持ちに耳を傾ける姿勢を大切にしましょう。

この記事を監修した人

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野崎理香 / 正看護師

正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。

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