リハビリ・介護予防
目次
- 1. 高齢者に歩行訓練やリハビリが必要な理由
- 2. 室内でできる歩行訓練・リハビリ方法
- 2-1. 椅子を使った足ぶみ運動
- 2-2. 椅子からの立ち上がり訓練(スクワットの代替)
- 2-3. 片足立ち(転倒注意)
- 2-4. 横歩き(サイドステップ)
- 2-5. かかとあげ・つま先あげ運動
- 2-6. その場で足ぶみ
- 3. 室内用のリハビリシューズは必要?
- 4. 歩行訓練やリハビリを始める前に知っておきたい3つのポイント
- 4-1. 安全を確保する
- 4-2. 無理をしない
- 4-3. 水分補給や室温調整をする
- 5. 室内歩行やリハビリを続けるコツ
- 5-1. 短時間から始める
- 5-2. 習慣化させる
- 5-3. やったことを記録する
- 6. まとめ
専門家の回答
高齢者に歩行訓練やリハビリが必要な理由

高齢者にとって、歩行訓練やリハビリは大切です。歩行訓練やリハビリを通し、筋力をつけると、転んだりけがをしたりするリスクを下げられる可能性があります。
年齢を重ね、筋力が低下し、関節の動きが衰えると、日常生活の中でつまずいたり、よろけたりすることが増えます。転ぶと骨が折れたり、頭をぶつけ脳出血を引き起こしたりして介護が必要になるケースも少なくありません。
筋力を保つためにも歩行訓練やリハビリは効果的です。
室内でできる歩行訓練・リハビリ方法
室内でできる歩行訓練やリハビリを知っていると、日々継続しやすくなります。それぞれ見てみましょう。
椅子を使った足ぶみ運動
椅子を使った足ぶみ運動は、日常生活の中で気軽に取り入れやすい運動のひとつです。次をご覧ください。
項目 | 具体例 |
---|---|
方法 | ・背もたれのある椅子に座る ・背筋をのばし、両手は椅子の横におく ・太ももを持ち上げるように片足ずつ足ぶみをする |
注意点 | ・椅子が滑らないよう、必要時に滑り止めを使用する ・痛みが出る場合はすぐに中止する ・背もたれに寄りかかりすぎないようにする |
椅子を使った足ぶみでは、太ももやふくらはぎの筋力の強化が期待できます。運動することで、血流がよくなり、むくみの改善につながるケースもあります。
足ぶみ運動は、一度にたくさんの回数をこなすことを目指すのではなく、こまめにやることを心がけましょう。
椅子からの立ち上がり訓練(スクワットの代替)
立ち上がりができる場合には、椅子から立ったり座ったりする運動も効果的です。詳しくみてみましょう。
項目 | 具体例 |
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方法 | ・背もたれのある椅子に浅く腰掛ける ・目の前の机やテーブルなどに手を置き、少し前かがみになる ・支えを持ちながら立ち上がる (支えがなくてもできる方は手を使わずに行う) |
注意点 | ・支えが必要な場合は、テーブルや机など体重がかかっても倒れないものを準備する ・立ち上がるときは、勢いをつけずゆっくりおこなう |
椅子からの立ち上がり訓練は、お尻から足にかけての筋力の維持に役立ちます。立ち上がり動作は、日常生活のあらゆる場面で必要です。立ったり座ったりをするだけでも、下半身の強化につながります。
立ち上がり動作に不安がある方は、テーブルや机など支えを使い、無理なくおこないましょう。例えば、1日10回を朝晩でそれぞれやるというように、無理のない範囲で回数を決めてみてください。
片足立ち(転倒注意)
片足ずつ立てそうな方は、次のような片足立ちの練習も効果的です。
項目 | 具体例 |
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方法 | ・安定した椅子の背もたれや机などをつかまる ・片足を軽く持ち上げて数秒間キープする ・左右交互に行う |
注意点 | ・必ず安定した支えを持った状態で行う ・体調が悪いときやふらつきを感じた場合は中止する |
片足立ちでは、バランス力や体幹の強化が期待できます。足を高くあげることを意識しすぎると転倒のリスクが上がるため注意が必要です。
ひとりで不安な場合には、無理をせず、誰かが見守っているときにチャレンジしてみましょう。ただし、運動機能のレベルによっては、効果よりもけがのリスクが高くなる恐れがあるため、主治医に確認してみてください。
横歩き(サイドステップ)
歩行が安定している方は、横歩きにもおすすめです。
項目 | 具体例 |
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方法 | ・安定したテーブルや手すりなどをつかまる ・ゆっくり横方向に歩く |
注意点 | ・安定した支えを持った状態で行う ・前かがみにならないよう注意する |
横歩きは、普段あまり使わない筋力を使うため無理せず行うことが大切です。お尻の外側の筋肉を意識しながらやってみましょう。
慣れない動作のため、ゆっくり無理せず実施してみてください。
かかとあげ・つま先あげ運動
かかとあげ・つま先あげ運動は、ご自身の状態に応じて立ってやるか、座ってやるか選びましょう。
項目 | 具体例 |
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方法 | 立ってやる場合 ・安定したテーブルや手すりなどをつかまる 座ってやる場合 ・椅子に腰をかけ、手は椅子の横か前のテーブルなど支えになる場所を持つ 共通の手順 ・かかとをゆっくりあげて、つま先で立つ ・かかとをゆっくり戻す ・つま先をゆっくりあげて、かかとで立つ ・つま先をゆっくり戻す |
注意点 | 安定した支えを持った状態で行う |
足の筋力強化や、足首の運動にも役立ちます。かかとをあげたり、つま先をあげたりするときには、無理をすると転倒のリスクにつながるため、できる範囲で実施することが大切です。
その場で足ぶみ
立った状態で足ぶみができる場合には、室内でも意識的に足ぶみしてみましょう。ポイントは次の通りです。
項目 | 具体例 |
---|---|
方法 | ・足ぶみするスペースを確保する ・机や椅子など支えを持つ ・その場で足ぶみする |
注意点 | ・ゆっくり行う ・痛みがある場合には無理をしない |
足ぶみは、下半身全体の筋力をきたえるために役立ちます。膝をあげることを意識してみましょう。ただし、痛みがある場合や、ふらつく場合には無理に立っておこなわず、中止したり、座ったままやってみたりしてみてください。
室内用のリハビリシューズは必要?
室内用のリハビリシューズは必須ではありません。しかし、靴を履いている方が、滑りにくく安全面で安心です。
特に介護用の室内履きは、転倒予防のために滑り止めがついているものがほとんどです。滑りやすいと、転倒やけがにつながるため、室内用のリハビリシューズや介護用の靴の使用を検討するのをおすすめします。
スリッパは滑りやすく、転んだりつまずいたりするきっかけになるため、室内で歩行練習やリハビリをする場合には使用しないようにしましょう。
歩行訓練やリハビリを始める前に知っておきたい3つのポイント
歩行練習やリハビリを始める前に知っておきたい3つのポイントを解説します。
安全を確保する
歩行訓練やリハビリをするうえで、安全を確保するのは重要です。安全を確保しないまま、リハビリを進めても、かえってけがをするきっかけになります。
歩行訓練やリハビリをする場合には次の注意点を確認してみましょう。
- 転んだり、つまずいたりしそうなものが近くにないか
- 支えになるもの(机や椅子など)は安定しているか
- 椅子や机などの滑り止めはついているか
- 脱げにくい靴を履いているか
万が一に備えて、近くに携帯電話や固定電話など、外部と連絡が取れる手段をおいておくと安心です。
無理をしない
歩行訓練やリハビリをするときは、無理をしないことが大切です。「今日は体が重たいな」「ふらふらするな」と感じるときは、休息を取りましょう。
痛みがあるときに、無理してリハビリを続けると症状の悪化につながります。できる範囲で行うことが、歩行訓練やリハビリを続けるうえで重要です。
水分補給や室温調整をする
高齢になると喉がかわきにくかったり、室温の変化を感じにくかったりするケースがあります。「喉がかわいたら水分をとる」「部屋が暑くなったらエアコンをつける」と自分の感覚では、水分不足や室温調整が不十分になる恐れもあり、注意が必要です。
そのため「運動前後で水をひとくちずつ飲む」「室温が⚪︎度になったらエアコンをつける」など具体的に決めることをおすすめします。
室内歩行やリハビリを続けるコツ
室内歩行やリハビリは、すぐに効果が出るわけではないため、継続が大切です。ここでは、継続するコツを説明します。
短時間から始める
短時間から始めるのを意識してみましょう。まとまった時間を確保しなくてはいけないと思うと、室内歩行やリハビリを続けるのが難しくなります。
「1日5分から」「テレビのCMの間だけ」というような短時間からでも、始めてみるのが大切です。
1日のうちに少しの時間でもやるのが習慣になってきたら、徐々に時間を伸ばしていきましょう。
習慣化させる
室内歩行やリハビリは習慣化させるのがポイントです。すぐに結果がでないケースもあり、地道に続けるのが、筋力の維持や強化には欠かせません。
習慣化させるためには、毎日決まった時間を作るのも効果的です。具体例をご覧ください。
- 昼ごはんの前
- テレビ番組が終わったら
- 夕食準備の前
- トイレに立ったとき
毎日必ずやることの合間に、歩行訓練やリハビリの時間を確保すると継続しやすくなります。
やったことを記録する
やったことを記録すると「こんなに継続できた」「昨日より回数を増やせた」など自信につながるためおすすめです。
例えば、カレンダーにやったことを書いてみます。どのくらい継続できているのかが、一目でわかるため、自信につながり楽しみながら続けられるでしょう。
やった回数や内容を記載すると、日々の変化を感じられます。
まとめ
高齢者にとって、歩行訓練やリハビリは筋力の維持や転倒予防に役立ちます。筋力や体力は、年齢とともに低下しやすいため、日常生活の中にリハビリを取り入れることが大切です。
室内でもできるリハビリは、手軽にでき、継続もしやすいのが利点ですが、安全確保や無理のない範囲での実施など注意も必要です。リハビリや歩行訓練を始めるときは、主治医にどのような運動ならしてもいいのかを確認してみましょう。
リハビリを始めるには、短時間から始め、習慣化させることが大事なポイントです。無理のない範囲で少しずつ取り組み、健康的な毎日を過ごすことを心がけてみてください。
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
「一人でできるリハビリはある?」「どのようなリハビリをすればいいのかわからない」
室内でリハビリをしようと思っていても、やり方がわからず迷っていませんか。
リハビリと聞くと、難しくて一人ではできないと感じている方もいるでしょう。本記事では、一人でも安心してできる歩行訓練やリハビリの方法を解説します。
歩行訓練やリハビリについて悩まれている方の疑問が解決されれば幸いです。