リハビリ・介護予防
専門家の回答
「発症を防ぐ話」と「診断後の暮らしを支える話」を分ける

認知症になるリスクを下げる研究と、すでに認知症と診断された人の進行や生活への影響を調べる研究は、対象も目的も異なります。「予防によい」と紹介された食品や運動が、そのまま診断後の進行を止める方法になるわけではありません。1)2)
診断名や現在の症状を確認し、治療で目指すこと、家庭で気をつけることを担当医と共有します。困りごとが変わったときは、「進んだから仕方がない」と抱え込まず、薬・体調・生活環境も含めて相談してください。
食事は特定の食品に頼らず、食べられる状態を整える
特定のビタミンや飲み物を増やせば進行を抑えられると考えず、食事の偏りや量を確認しましょう。国立長寿医療研究センターは、認知症のリスクを下げる取り組みとして、バランスのよい食事や運動、人との交流などを組み合わせる考え方を示しています。1)
家族が「何を食べた?」と聞くだけでは分かりにくいときは、買い置きの減り方や食事の準備を本人と一緒に見ます。食材はあっても調理の手順が難しい、同じ物ばかり買うなど、どこに手助けが必要かを探すためです。監視ではなく、食べたい物や困っている作業を聞くところから始めてください。
食事量や体重が減っている、むせる、入れ歯が合わないといった場合は、栄養や口の状態について医師・歯科医師・管理栄養士などに相談します。「認知症によい食品」を探すことが、食べにくさへの対応より先にならないようにしましょう。
運動・リハビリは、本人が安全に続けられる活動から
身体を動かすことや知的活動は、健康や生活機能を支える取り組みです。ただし、本人の病状や歩行の安定性に合う方法が必要です。運動を始める際の注意点は、医師やリハビリ職に確認してください。3)
二つのことを同時にする運動に取り組む場合も、歩きながら難しい計算をさせることを優先しません。ふらつくなら安定した姿勢でできる方法を相談します。「できる回数」だけでなく、痛み・疲れ・本人の嫌がる様子がないかも見て、負担を調整します。
| 場面 | 家族が確認すること |
|---|---|
| 食事 | 何を増やすかより、食べられない理由や準備の難しさがないか |
| 活動 | 以前好きだったことを、今も無理なく楽しめるか |
| 薬 | 飲み忘れ・重複や飲んだ後の困りごとがないか |
| 暮らし | 助けが必要な作業と、本人が続けたい作業は何か |
本人ができることを残し、難しい部分だけ支える
すべて家族が代わりに行う前に、本人ができる部分を一緒に確かめます。例えば料理の全部が難しくても、材料を選ぶなど参加しやすい作業があるかもしれません。火や刃物などの危険に配慮しつつ、本人の希望を聞いて役割を考える方法があります。これは進行を止める保証ではなく、生活のしやすさを考える工夫です。
課題を毎日こなすことが、本人や家族の負担になる場合もあります。続けられなかった日に責めず、何が難しかったのかを伝えて支援内容を見直してください。認知症の変化を、本人の努力不足や家族の世話の不足と結び付けないことも大切です。
訪問看護では、親の今の状態を受け止めることが難しく、本人の行動を家族の思うように変えようとしていると感じる場面がありました。そうしたときは、今の様子を知ってもらえるよう、実際に起きていることを家族に伝えていました。
家族もすぐに気持ちを切り替えられるとは限りません。「前はできたのに」と感じることがあれば、その場面を医療職に伝え、今もできる部分と手助けが必要な部分を一緒に整理してみましょう。親の状態を尊重することは、治療や相談を諦めることではありません。
診察で聞くことを二つか三つに絞ってメモする
「進行を遅らせたい」という希望に加えて、最近困っていることを具体的に伝えます。「夕方に薬を飲んだか分からなくなる」「食事の準備に時間がかかる」など、いつ・何が難しいかが相談の材料になります。
次の診察では、治療の目標、家庭での支援、次の受診までに連絡すべき変化を確認すると整理しやすくなります。急に反応が鈍くなったり体調が大きく変わったりしたときは、予定を待たず医療機関へ連絡してください。
食事や活動は、薬の代わりに自己判断で選ぶものではありません。本人の暮らしを保つために、治療と生活支援をどう組み合わせるかを、担当者と一緒に考えていきましょう。
参考
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
特定の食品や脳トレだけで進行を止められるとはいえません。診断や治療の目標を確認し、食べること・身体を動かすこと・薬の管理など、今困っている場面から支援を考えましょう。本人と家族が続けられる方法を選ぶことが大切です。