介護
専門家の回答
認知症によって起きやすい被害妄想「物盗られ妄想」
高齢になると「財布をどこに置いたか忘れた」といった物忘れが多くなります。老化による物忘れは「自分でどこかに置いたが忘れた」という自覚があります。
ですが、認知症の場合「自分が忘れた・無くした」という自覚がなく、「探し物がない」=「盗られた」と判断してしまいます。
被害妄想を引き起こす背景
物盗られ妄想が見られるときは、認知症による記憶障害でどこに物を置いたのか忘れてしまっているのですが、認知症だと認めたくないために、「誰かに盗まれた」と周りのせいにしてしまうということも考えられます。単なる物忘れではなく、認知症であることへの不安から自分を守るための手段となっていることが多いです。
物盗られ妄想では、身近で介護を行っている人物が犯人ではないかと疑ってしまうことがよくあります。それは、周囲の人に自分の不安を解消して欲しくて無意識に周囲の人へ助けを求めているメッセージでもあります。
対応方法
「あなたが盗った」と自分が妄想の対象となっていたとしても、まずは否定も肯定もせず「大変ですね」と物がなくなってしまった不安に共感して、話を聞いてあげましょう。
物盗られ妄想がみられるときは興奮状態の場合が多いため、否定しご本人に不快感を与えると、より被害妄想を強めたり、この人はわかってくれないと判断されてしまう可能性があります。
話を聞き、「一緒に探してみましょう」と声をかけ身の回りを探しましょう。
もし物が見つかった場合は、ご本人に直接教えるのではなく、見つけやすい場所に置き直してご本人に直接見つけてもらうのが最適です。「自分で見つけた」という自信は物忘れへの不安解消へもつながり、精神面でのケアにもなります。
また、財布や通帳、印鑑などの大事なものはご家族の管理するのも一つの手です。
お金は必要なものだけお渡しし、ご飯などは配食を利用したり訪問介護の方に買い物や食事の作り置きを用意してもらうなどすれば生活の基盤を保ったままご本人の尊厳を傷つけることも少なくなります。
強引に預かり受けてしまうと逆効果ですので、ご本人の性格に合わせて時には担当のケアマネージャー同席のもとでお話をされる場合もあります。
物盗られ妄想を単なる物忘れだと決めつけてしまうと、ご本人からのメッセージを見落としてしまう可能性があります。まずは、ご本人の主張に耳を傾け、不安を解消してあげることから始めてみましょう。
認知症によって起きやすい被害妄想のひとつに「物盗られ妄想」があります。
認知症は自分が無くした自覚がないため「盗まれた」と判断してしまいます。また、認知症への苦しみや孤独感、周囲への不満などが、被害妄想を引き起こしているとも考えられます。