介護
専門家の回答
回数だけでなく、以前できていた生活への影響を見る

名前がすぐ出てこないことだけで、認知症とは判断できません。一方、同じような困りごとが繰り返され、日常の用事が進まなくなっている場合は相談のきっかけになります。認知症は記憶だけでなく、判断や段取りなどにも関係する状態です。2)
| 生活の場面 | メモにできること |
|---|---|
| 約束・予定 | 約束を何度も確認する、予定の日時を取り違える |
| 買い物・支払い | 同じ物を重ねて買う、慣れた支払いの手順に困る |
| 食事・薬 | 食べたか分からない、薬を飲んだか確認できない |
| 外出・家事 | 慣れた道や作業で迷う、これまでの段取りが難しい |
これは当てはまった数で診断する表ではありません。いつから、どのくらい繰り返し、本人が何に困っているかを伝えるための例です。家族が手伝って初めて用事が済んでいる場合は、その手助けも含めて記録すると状況が伝わります。
訪問看護で関わる中では、電話でははっきり受け答えができていても、ご家族が帰省すると郵便物がたまっていたり、支払いが滞っていたりすることがありました。ごみ出しができていない、冷蔵庫に期限の切れた食品が残っているといった場面もあります。ご家族には受診を勧め、医師には生活の中で実際に起きていたことを伝えていました。
電話で会話ができていることと、日々の用事をこなせていることは別に確認したい点です。帰省時には本人の話を聞きながら、郵便物や支払い、食事の管理など、以前と変わったことを具体的にメモしておくと相談に役立ちます。こうした変化だけで認知症と判断するものではありません。
「自覚があるから大丈夫」「年齢のせい」と決めない
本人が変化を気にしていることも、家族と受け止め方が違うこともあります。困っている自覚があるかどうかだけで、認知症を否定したり決めたりしないでください。本人の話を聞き、生活で起きている事実と一緒に医療職へ伝えます。
もの忘れに似た症状には、うつやせん妄、身体の病気などが関わる場合もあります。原因を老化か認知症かの二択にせず、診察で確認することが大切です。受診時には、処方薬だけでなく市販薬も含め、現在使っている薬を伝えてください。1)
急な変化は、ゆっくりしたもの忘れと分けて対応する
突然ろれつが回らない、顔の片側がゆがむ、片方の手足に力が入らない、意識や反応がおかしい場合は119番へ。「認知症が進んだのだろう」と待たないでください。3)
数時間から数日で様子が変わった場合や、発熱・食事や水分の減少などもある場合は、早めに医療機関へ連絡します。いつ最後に普段どおりだったかを伝えると、急な変化かどうかを整理しやすくなります。
相談メモは、評価の言葉より実際に起きたことを書く
「ひどくなった」「何もできない」だけでは、医療職が生活場面を想像しにくいことがあります。「今週、同じ料金の支払いを二度しようとした」「朝の薬を飲んだ後、もう一度飲もうとした」のように、時期と行動を短くまとめる方法があります。これらは書き方の例で、特定の病気を示すものではありません。
本人ができていることや、助けを借りればできることも添えます。困っている点だけを並べるより、どの部分を支えれば生活を続けやすいかの相談につながります。本人の前で話しづらい内容は、メモを先に渡せるか受付に確認しても構いません。
最初はかかりつけ医や地域包括支援センターに相談できる
かかりつけ医に変化を伝え、必要に応じてもの忘れ外来などへつないでもらいます。どこに相談するか分からない場合は、地域包括支援センターへ相談する方法もあります。予約の要否や持参物は、相談先へ事前に確認してください。1)
親へ話すときは、抜き打ちで日付や記憶を試すより、「最近、薬のことで困ることはない?」「一緒に相談してみない?」と、具体的な困りごとから始めます。受診を嫌がる場合の関わり方は別のテーマとして考え、本人を説得できるまで家族も相談を控える必要はありません。
受診を嫌がる親への声のかけ方と、家族だけで相談する際の準備は、こちらで詳しく紹介しています。
親が物忘れの受診を嫌がる…家族だけで相談できる?声かけと相談先
受診後も、家族だけで診断名から生活のすべてを決めず、本人が希望することと必要な支えを話し合います。もの忘れに気づいた時点で事実を少しずつ整理しておくことが、その人に合う支援を考える出発点になります。
参考
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
忘れた回数だけでなく、以前できていた用事や生活にどんな影響が出ているかを確かめましょう。本人の困りごとと具体的な出来事をメモして相談できます。突然の言葉や手足・意識の変化は、もの忘れとは分けて救急対応を考えてください。