介護
専門家の回答
物忘れが増える原因
高齢者の物忘れには「老化によるもの」と「認知症によるもの」の二つの原因が考えられます。
人の脳は加齢とともに機能が老化し、記憶力のほか、判断力や適応力などが衰えてきます。物忘れも次第に増えていきますが、自然な老化現象であって認知症ではありません。
老化による物忘れは自覚症状があったり、生活に支障をきたすことがなかったりします。
一方、認知症の物忘れは自覚症状がなく、慣れた道で迷子になってしまうなど日常生活にも影響が出ることがあります。
怒りやすくなる原因
認知症の場合、老化にはあまりみられない「怒りやすくなる」などの変化がみられます。
認知症になると、状況の把握ができない、適切な判断ができないなどの「認知機能障害」が現れ、怒りにつながることがあります。
また、急に不機嫌になったり、大声をあげ威嚇するといった性格の変化は「易怒性(いどせい)」という認知症の症状のひとつです。認知症になると感情抑制が出来なくなり、怒りっぽくなります。
他にも、認知症の方は自分が認知症だという自覚がなくても、以前はできていたことができなくなった、能力が落ちたといった自覚はしているため、それを指摘されたり否定されることでプライドが傷つき、怒りにつながる可能性もあります。
怒りっぽくなった人への対処法
認知症により怒りっぽくなってしまう方は、ご自身でも「怒り」の原因がほとんどわからない状態のため、混乱している場合もあります。
怒りのぶつけどころがなく、ご家族にだけ辛く当たってしまうケースもしばしば。
医者や介護士などには愛想を良くしていることも多く、ご家族が周りに実情を理解して貰えないという悩みはよく聞きます。
しかし、怒っている方に対して同じように怒ってしまうと、ご本人は「なぜか怒られた」という事実のみ理解し、ご家族の方との関係が悪化してしまう事につながります。
そのため、時折怒りっぽくなる方などに対しては、言われた言葉を鵜呑みにしてしまうと言われた側も大変辛いと思いますので、真面目に受け止めず時には聞き流すことも大切です。
日頃から怒りの感情が抑えられなくなってしまっている方は、認知症が進み混乱も強くなっている場合があるので、施設への入所や訪問サービスの利用など、一度距離を取れるように専門家に相談をすると良いでしょう。
症状が進行し暴言を言ったり暴力も振るうようになってしまったら
話を聞いても落ち着かず、興奮している状態ではどのように対応しても怒りを引き立ててしまう可能性があります。
事故や怪我につながることもあり危険ですので、そうなってしまった場合は周りに危険なものがないかだけ確認し、落ち着くまで距離を置きましょう。
距離を置くための対応策
- 介護を違う人にお願いする
- 訪問型サービスや介護施設を利用する
物理的に距離を置くことで、認知症の方の気分転換になり落ち着かせる効果が期待できます。
また、認知症の方だけでなく介護をしている方の気分転換、休息にもなります。介護者の方も無理はせずに息抜きをしましょう。
「認知症」は病気ではなく、特有の症状や状態を表現する言葉です。高齢者の7人に1人が認知症といわれています。初期症状が見られたらすぐに医師に相談してみましょう。
日常生活に支障をきたすような物忘れが多くなったり、以前より怒りやすくなったりした場合は認知症の可能性があります。
老化による物忘れと比較しながら、認知症について簡単に説明します。