病気・症状
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どんな研究?認知症のない高齢者の診療データを比較

2026年8月21日、統計数理研究所などの研究グループは、高血圧の薬の種類と、その後の認知症の発症リスクとの関連を発表しました。薬が脳の健康にも関わる可能性を検討した研究です。1)
対象は、認知症の診断がなく、ARBまたはCCBという種類の降圧薬を新たに使い始めた65歳以上の52,019人です。ARBもCCBも血圧を下げる薬で、研究では既存の診療データを使い、年齢や持病などの違いを統計的に調整して比較しています。2)
| 項目 | 確認できた内容 |
|---|---|
| 対象 | 65歳以上で認知症のない、新たに降圧薬を開始した人 |
| 比較 | ARBを開始した群とCCBを開始した群 |
| 5年後の認知症累積発症率の推定 | ARB群8.0%、CCB群8.8%。差は0.8ポイント |
| 認知症の種類による違い | 血管性認知症で関連が強く、アルツハイマー病は主解析で統計学的に有意な差がなかった |
| 研究の方法 | 観察研究。参加者に薬を無作為に割り当てた臨床試験ではない |
出典:原著論文。5年後の数値は集団の推定で、「親がこの薬へ替えれば、その分だけ確実に発症を防げる」という意味ではありません。また、すでに認知症がある方の症状改善を調べた研究でもありません。2)
この結果だけで「薬を替えた方がよい」とはいえない理由
研究では条件の違いをできるだけ調整していますが、生活習慣や実際の服薬状況など、診療データに十分記録されていない要因の影響は残ります。薬の種類だけが結果の差を生んだとは断定できません。発表も、自己判断で薬を変更することは勧めていません。1)
降圧薬を選ぶときには、血圧だけでなく、腎臓や心臓の状態、副作用、ほかの薬との組み合わせなども考慮します。今使っている薬がCCBだったとしても、この研究から「今の処方が間違いだった」と考える必要はありません。1)
家族が薬の種類を調べる際は、錠剤の色や形より、お薬手帳や薬局の説明書を使うと確認しやすくなります。薬の名前を見ても分からない場合は、薬剤師に「これはどんな目的の薬ですか」と聞いて構いません。
主治医には、研究の話と親の今の様子を一緒に伝える
ニュースについて質問するときは、記事の画面やURLを見せると、どの研究の話かが伝わります。「この薬へ替えてください」と結論を先に決めず、今の処方の理由と、親の場合に見直す必要があるかを確認しましょう。
| 家族の疑問 | 聞き方の例 |
|---|---|
| 今の薬が選ばれている理由 | 父の持病や体調を考えると、この薬にはどんな目的がありますか |
| 研究結果が親にも当てはまるか | この研究を見ました。今の治療方針に関係する内容でしょうか |
| 家庭で確認すること | 血圧はいつ測り、どんな体調変化があれば連絡すればよいですか |
| 飲みにくさ・飲み忘れ | 飲み忘れがあるのですが、管理の方法も一緒に相談できますか |
これらは相談のための例です。すべてを一度に聞く必要はありません。本人が一番気にしていること、家族が気づいた変化を一つずつ整理して持っていきます。
訪問看護では、血圧の数値を見て不安になったご家族を、医師への相談につないだことがありました。心配なときは、本人の場合の目標値と、どのような変化があれば連絡するかを確認しておくと、家庭での判断に役立ちます。
要介護の高齢者では、血圧の数値に加え、転倒や生活の質なども考えて治療を調整します。「高齢だから高くても問題ない」と家族だけで判断せず、本人の状態に合う目標を主治医に確認してください。6)
急な症状がなく、普段の治療について聞きたい場合は、診察時に質問をまとめて持参したり、電話相談の受付時間を確認したりすると伝えやすくなります。急な体調変化がある場合は、次の予約まで待たず、その時点で連絡してください。
家庭でできることは、血圧と服薬状況を記録すること
日本高血圧学会は、診察室以外での血圧を知るために家庭での測定を勧めています。普段の記録があると、受診した日の数値だけでなく、家での状態を主治医と共有できます。4)
測定方法は主治医などに確認し、できるだけ同じ条件で測ります。国立循環器病研究センターの案内では、朝は起床後1時間以内の食事・服薬前、夜は就寝前などが示されています。測った値を選んで書かず、時刻と一緒に残しましょう。3)
家族が記録を手伝う場合は、実際に飲めたか、飲み忘れがなかったかも確認します。「薬は毎日飲んでいるはず」という前提だけで相談するより、分かっている範囲を伝える方が、処方や管理方法を検討しやすくなります。
血圧が低く見えた日や、ふらつきなどがある日も、自己判断で薬を減らす前に主治医へ相談してください。個別に調整の指示を受けている場合は、その内容を確認します。薬の中断で血圧が再び上がることもあります。3)
食品や健康食品の話を、薬をやめる理由にしない
「玉ねぎを食べれば血液がサラサラになり、血圧も下がる」といった話を聞いても、特定の食品を食べることと、必要な治療を続けることを置き換えないでください。健康食品は薬の代わりにはなりません。利用しているものがあれば、商品名や量を医師・薬剤師に伝えましょう。7)
物忘れが気になる場合は、血圧の相談だけで終えない
最近の物忘れや生活の変化が心配なら、そのことも別に伝えます。降圧薬の相談をしただけで、認知症の評価を受けたことにはなりません。「同じ支払いを繰り返す」「予定の管理が難しくなった」など、気づいた場面と時期を説明してください。
認知症が心配なときは、まずかかりつけ医へ相談できます。かかりつけ医がいない場合は、もの忘れ外来や認知症疾患医療センター、地域包括支援センターなどが相談先になります。5)
まとめ:ニュースを、今の治療を理解するきっかけに
今回の研究は、降圧薬の種類と将来の認知症リスクとの関連を示しています。個人の薬を変更する結論に直結させず、お薬手帳と家庭血圧の記録をもとに、今の処方の目的や気になる症状を主治医へ相談しましょう。
出典・参考資料
- 統計数理研究所「高齢者の高血圧治療薬選択が認知症リスクに関連」2026年8月21日
- Nomaほか「Angiotensin receptor blockers and dementia risk in older adults: A target trial emulation」2026年8月20日オンライン公開
- 国立循環器病研究センター「高血圧」家庭での測定・薬の扱い
- 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」
- 国立長寿医療研究センター J-DEPP研究「よくある質問」受診先・相談先
- 日本高血圧学会・日本老年医学会「要介護高齢者における降圧療法の適正化に関する実践的指針」
- 消費者庁「健康食品(一般の方向け)」
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
薬の種類と認知症リスクとの関連を示した研究はありますが、それだけで親の薬を変更すべきとはいえません。自己判断で薬を替えたり中止したりせず、今の処方の理由と研究結果が親の治療に関係するかを主治医に確認しましょう。