介護
2026.06.22 作成
2026.06.22 更新
高齢の親に免許返納をどう切り出す?家族ができる話し合いの進め方
高齢の親の運転に不安を感じています。免許返納を勧めたいがどのように切り出せばよいでしょうか?
目次
- 1. 高齢の親に免許返納を勧める前に知っておくこと
- 1-1. 医師に相談して判断する免許返納のサイン
- 1-2. 車に頼る「親の生活パターン」を把握する
- 1-3. 免許返納で得られるメリットと維持費の節約効果
- 1-4. 運転免許センターでの返納手続きの流れ
- 2. 高齢の親を傷つけない免許返納の切り出し方
- 2-1. 免許返納を嫌がる親の心理を理解する
- 2-2. 親へのNGワードと言い換え例
- 2-3. 「危ない」ではなく孫と一緒に「心配」を伝える
- 2-4. 説得より「一緒に考える」姿勢が納得を生む
- 3. 免許返納後に高齢の親を支える買い物・通院の代替手段
- 3-1. 地域包括支援センターに運転の代替手段を相談
- 3-2. 免許返納後の買い物には移動販売や通販を活用
- 3-3. 返納後も外出するモチベーションを保つ工夫
- 3-4. 地元とのつながりで状況の変化にも対応
- 4. まとめ:高齢の親が納得して免許を返納するために「今できること」
専門家の回答
高齢の親に免許返納を勧める前に知っておくこと

「いつ親に切り出すか」を考える前に、どのような傾向が見られれば、返納すべきかを知ることが重要です。さらに返納による親の日常生活への影響、返納手続きの具体的な流れも把握しておきましょう。
事前に準備を整えたうえで話し合えば、親からの強い反発も和らぐはずです。
医師に相談して判断する免許返納のサイン
「そろそろ返納を考えてほしい」と感じていても、何を判断材料にすればよいか迷う方は多いのではないでしょうか。
かかりつけ医への相談は、返納のタイミングを判断するうえで、とても有効です。
親の健康状態や運動機能を把握している医師は、記録をもとに客観的なアドバイスをしてくれます。
特に記憶力や判断力が徐々に低下する認知症は、家族でも初期症状に気づきにくいため、医師による診察結果は重要です。
もし日常の運転で次のようなサインが見られたら、専門家への相談を検討しましょう。
- 駐車や車庫入れに以前より時間がかかるようになった
- ブレーキのタイミングが遅れ、急ブレーキが増えた
- 走り慣れた道なのに迷うようになった
- 小さな接触や車の擦り傷が増えた
- 運転中にぼんやりしている様子が見られる
気になることがあれば「念のために体の状態を確認しておこう」と親の同意を得て、かかりつけ医に認知機能の診察を受けてもらうようにすすめましょう。
車に頼る「親の生活パターン」を把握する
免許の返納を勧める前に、「親が今どれほど車に依存しているか」を把握しなければなりません。
特に買い物や通院に不便な地域ならば、代替手段をあらかじめ用意しておく必要があります。
週にどのくらい・どこへ車を使っているか、さりげなく聞いてみましょう。
以下のように整理しておけば、親が「返納した後どうやって生活するの?」と不安を感じても、すぐに代替手段を説明できます。
| 用途 | 頻度の目安 | 代替手段の例 |
|---|---|---|
| 買い物 | 週2〜3回 | コープ宅配・ネットスーパー・移動販売 |
| 通院 | 月1〜2回 | 乗合タクシー・病院送迎サービス・家族の付き添い |
| 趣味・外出 | 不定期 | コミュニティバス・デイサービスの送迎 |
漠然と「返納しても大丈夫」と伝えるよりも、具体的な代替案を示すほうが、親も安心して話し合いに応じやすくなります。
免許返納で得られるメリットと維持費の節約効果
自主返納には、安全面以外にも、さまざまなメリットがあります。
返納後に受け取れる「運転経歴証明書」を提示すれば、以下のような特典が受けられる地域も少なくありません。
- バス・鉄道・タクシーなどの運賃割引
- 温泉施設・ホテル・観光地の割引利用
- ショッピングや食事で利用できる割引券の交付
さらに運転経歴証明書は、公的な身分証明書としても使えるため、「別の証明書がもらえる」と説明すると親も受け入れやすくなるでしょう。
また、車を手放すことで次のような維持費の節約も期待できます。
- ガソリン代・駐車場代(月々数千円〜数万円)
- 自動車保険料(年間数万円)
- 自動車税(年間数万円)
- 車検費用(2年ごとに数万円〜十数万円)
- 定期的なメンテナンス費用(タイヤ交換など)
節約できる費用を具体的に示したうえで「節約したお金で温泉に行けるよ」と伝えれば、親も前向きに考えてくれるでしょう。
運転免許センターでの返納手続きの流れ
手続き自体は簡単です。一般的に運転免許証と印鑑を持参すれば、最寄りの警察署の運転免許センターなどで返納手続きができます。
手続きの流れは、おおむね以下のとおりです。
- 窓口で「運転免許取消申請書」に必要事項を記入する
- 記入した運転免許取消申請書を添えて、運転免許証を窓口に提出する
- 「運転経歴証明書」を希望する場合には交付の申請をする
※交付は任意だが、申請には手数料と写真(縦3cm×横2.4cm、6か月以内の撮影)が必要 - 審査後、運転経歴証明書が交付される(後日交付となるケースもある)
20〜30分程度で手続きは完了しますが、親が不安を感じないように返納当日は付き添うようにしましょう。
なお、都道府県によって申請に必要な書類が異なるケースもあるうえ、窓口によって受付可能な曜日や時間帯も変わるため注意が必要です。
手続きに行く前には、各都道府県警察の運転免許センターの公式サイト、もしくは電話で確認しましょう。
高齢の親を傷つけない免許返納の切り出し方
返納を勧める準備が整ったら、親への切り出し方を考える段階です。
親の心理を理解したうえで言葉を選べば、感情的な対立も避けられ、話し合いがスムーズに進められるでしょう。
免許返納を嫌がる親の心理を理解する
返納を嫌がるのは、わがままだからではありません。
高齢ドライバーにとって、車は単なる移動手段ではなく「好きなときに出かけられる」という自由を与え、社会とのつながりを支えてくれる大切な存在です。
特に不便な地域であれば、車は日々の生活に直結するため、拒否反応は強くなります。
「まだ運転できる」という言葉の裏には、「自立した生活を失いたくない」という気持ちが隠れているのです。
その気持ちを理解してから話し合いを始めることが、親の心を開くための第一歩です。
親へのNGワードと言い換え例
返納を切り出す際に使う言葉は、慎重に選ばなければなりません。
よかれと思って言った一言が、親の心を深く傷つけるときもあります。
避けるべきNGワードと伝わりやすい言い換え例を以下にまとめましたので、参考にしてください。
| NGワード | 親が感じること | 言い換え例 |
|---|---|---|
| 「もう運転は危ないよ」 | 運転能力を否定される | 「お父さん(お母さん)のことが心配なんだよ」 |
| 「免許を返しなさい」 | 命令されている | 「次の車検の前に、一度話し合えないかな」 |
| 「事故を起こしてからじゃ遅いよ」 | 責められている | 「万が一のことがあると、わたしも辛いから」 |
| 「もうトシなんだから」 | 老いを突きつけられる | 「最近、道が混んでて疲れるんじゃないかと思って」 |
返納の話は、批判や命令ではなく、親を思う気持ちを言葉にすることが大切です。
「あなたを思うからこそ一緒に考えたい」というメッセージを伝えましょう。
「危ない」ではなく孫と一緒に「心配」を伝える
子どもから直接「危ない」と言われると、親はどうしても「自分は大丈夫!」と反発しがちです。
このような場合に、もし孫がいれば「家族みんなが心配している」と伝えるのも一つの方法です。
孫の名前を出して「おじいちゃん(おばあちゃん)のことが心配って言ってたよ」という一言は、否定や批判ではなく、純粋な愛情として受け取ってくれるはずです。
孫が近くに住んでいれば、一緒に話すようにしましょう。
孫から直接聞く言葉は、親の心を動かすきっかけになります。
説得より「一緒に考える」姿勢が納得を生む
免許返納の話し合いでは、「説得しよう」という考えは手放しましょう。
一方的に説得しようとすると、親は反論するか黙り込んでしまいます。
「一緒に考えよう」という姿勢で臨めば、意見を押しつけられるとは感じず、親も話し合いの当事者として参加してくれるでしょう。
具体的には、次のような話し方が効果的です。
- 「車の維持費について一緒に考えたいんだけど」と相談する形で切り出す
- 「免許返納後の代替手段を調べてみたよ」と情報を共有する
- 「○○さんのお父さんも最近返納したって聞いたよ」と身近な事例を紹介する
- 「もし返したとしたら何が一番不便だと思う?」と親の不安を引き出す
親が「不便なのは買い物かな」と答えたら、宅配サービスを一緒に調べましょう。
そういった小さなやり取りの積み重ねが、自然と親の気持ちにつながります。
免許の返納は、子どもが強制できるものではありません。
焦らず話し合いを重ねる姿勢が、親の納得感につながります。
免許返納後に高齢の親を支える買い物・通院の代替手段
免許を手放した後も、不便なく生活が送れるかどうかが、親の決断を左右します。
地元の相談窓口を活用して、利用できるサービスを知れば、車がない生活にも不便を感じなくなるでしょう。
生活の質を維持できることがわかれば、免許返納に対して、親も前向きになってくれるはずです。
地域包括支援センターに運転の代替手段を相談
このセンターは、高齢者の生活全般を支援する公的な相談機関です。
全国の市区町村に設置されており、ここに相談をすれば、コミュニティバスや乗合タクシーなどを紹介してくれます。
いずれも運賃が安く、定期的な通院や買い物にも利用が可能です。
インターネットで「地域名+地域包括支援センター」で検索すれば、最寄りの相談窓口が簡単に調べられます。
通院のために送迎サービスを提供している病院もあるので、かかりつけの病院にも確認してみましょう。
免許返納後の買い物には移動販売や通販を活用
実家が商店から遠い場合は、地元の移動販売を調べてみましょう。
移動販売車が実家の近くまで来てくれれば、生鮮食料品や日用雑貨なども手軽に購入できます。
重たい米や飲み物などは、Amazonや楽天市場などのインターネット通販サービスが便利です。
親に代わって定期購入の設定をしておけば、定期的に実家まで届けてもらえます。
返納後も外出するモチベーションを保つ工夫
免許を返納すると外出の機会が減り、引きこもりがちになる高齢者は少なくありません。
外出が減ると体力や認知機能の低下につながる恐れがあります。
返納後も、親が積極的に外出するように、次のような工夫をしましょう。
- 「毎週日曜日は釣りに行く」など週1回、家族や友人と一緒に出かける日を作る
- 地元の健康増進施設の利用を促す
- 趣味のサークルやシニア向けの体操教室を探して親に紹介する
「車がなくても外出が楽しい」という体験を積み重ねれば、返納後の生活への不安も自然と和らぐはずです。
最初は付き添って一緒に外出し、慣れてきたら一人でも出かけられるよう見守っていきましょう。
地元とのつながりで状況の変化にも対応
地元企業や行政機関のサービスの内容変更や廃止によって、親の生活が突然不便になってしまう恐れもあります。
一方でボランティアやNPO団体が、送迎サービスなどを開始する地域も少なくありません。
このような状況の変化も、地元の親族や実家の隣人と定期的に連絡を取り合える関係を作っておけば、早めに情報が得られるときがあります。
親族や隣人からの情報により、利用するサービスの切り替えが必要になったら、地域包括支援センターに相談しましょう。
親と離れて暮らしている場合には、地元の人たちは心強い存在です。
日頃からつながりを持っておくと、相手から「何かあったらすぐに連絡するよ」や「ときどき様子を見て声をかけるよ」と言ってくれる場合もあります。
まとめ:高齢の親が納得して免許を返納するために「今できること」
高齢の親に、免許返納を焦って勧めてはいけません。
切り出すタイミングを見極めて、代替手段を整理したうえで、親の気持ちに寄り添いながら話し合いを重ねましょう。
「心配している」という思いは、親の心を動かすきっかけになります。
地域包括支援センターや地元の力も借りながら、親が生き生きと暮らせる環境を整えていきましょう。
ぜひ本記事を参考に、免許返納について親と話をしてみてください。
出典
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
親に危ないとは言えないし、かといって何もしないのも怖い。
高齢の親を持つ方のなかには、そんなもどかしい気持ちを抱えている方も多いのではないでしょうか。
警察庁の発表による「免許保有者10万人当たりの死亡事故件数」では、75歳以上の高齢運転者による事故件数は、75歳未満の件数の約2倍にのぼります。
さらに高齢者による死亡事故の割合は、全体のなかで増加傾向にある状況です。
こうした状況から、親に「免許返納をさせたい」と思っている方も多いと思いますが、切り出すタイミングや言い方を誤ると親子関係にしこりを残しかねません。
この記事では返納を決断するタイミングの見極め方から、親の心情を傷つけない切り出し方、返納後の自家用車の代替手段までを具体的に解説します。
免許返納について「親と話し合いたい」とお考えの方の参考になれば幸いです。