病気・症状

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2026.09.14 作成

2026.09.15 更新

ピロリ菌は膵臓がんにも関係する?日本人の研究で分かったこと

ピロリ菌が膵臓がんにも関係するというニュースを見ました。親は以前にピロリ菌を指摘されています。追加の検査や除菌を急ぐべきでしょうか。

専門家の回答

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日本人を対象とした研究で、ピロリ菌と膵臓がんの一部との関連が示されました。ただし、原因であることや、除菌によって膵臓がんを防げることは証明されていません。ニュースだけで治療を変えず、これまでの検査・除菌の結果と、気になる症状を医師に確認しましょう。

日本人を対象に、ピロリ菌と二つのがんの関連を調べた研究

愛知県がんセンター研究所の山本清花氏らによる研究が、2026年7月14日に国際医学誌「International Journal of Cancer」で公開されました。胃がんとの関係が知られるピロリ菌について、胆道がんや膵臓がんにも関係するのかを調べています。1)

対象は、2001〜2013年に同センターを初診した18〜79歳の研究参加者です。胆道がんの患者116人、膵臓がんの患者417人と、がんではない対照者3,086人を比べた症例対照研究で、高齢者だけの研究ではありません。2)

感染の評価には、血液中のピロリ菌抗体と、胃粘膜の萎縮を調べるペプシノゲン検査を用いました。抗体だけでなく胃の変化も見ることで、長く感染した後に抗体が低下した可能性のある状態も考慮しています。2)

膵臓がんとの関連は、調べ方や部位で異なった

膵臓がん全体では、抗体が陽性か陰性かという二つの分類で、明確な関連は認められませんでした。一方、抗体の量を連続した数値として調べると、高いほど膵臓がんと関連する結果でした。「陽性の人は一律に膵臓がんになりやすい」とまとめないことが大切です。1)2)

今回の主な結果
調べた対象 分かったこと
膵臓がん全体 抗体価が10 U/mL高いごとのオッズ比は1.04(95%信頼区間1.01〜1.07)
膵頭部がん 抗体陰性で胃粘膜萎縮の指標が陽性の群に、関連が見られた
膵体部がん ピロリ菌抗体陽性の群に、関連が見られた
膵尾部がん 明確な関連は認められなかった
胆道がん 全体でも、今回調べた発生部位別でも明確な関連は認められなかった

膵頭部・膵体部・膵尾部は、膵臓の中でがんが発生した位置の違いです。表の「オッズ比」は関連の強さを比べる統計上の指標で、1.04という数値から「親の発症確率が4%増える」とは計算できません。親が将来がんになる確率を示した結果ではないためです。

遺伝や生活習慣との組み合わせについては、明確な差が出なかった

研究では、年齢・性別に加えて、遺伝性がんに関わる生まれつきの遺伝子の変化や、喫煙・飲酒などを考慮して解析しています。ピロリ菌との組み合わせによって関連の強さが変わる「交互作用」は、今回、明確には認められませんでした。1)

これは遺伝や喫煙ががんに関係しないという意味ではありません。また、この結果だけを理由に、家族全員が遺伝子検査を受ける必要があるともいえません。「今回、何との組み合わせを調べたのか」と「それぞれの要因がもつリスク」は分けて読みましょう。

除菌すれば膵臓がんを予防できる、と証明した研究ではない

今回の研究は、除菌する人としない人を分けて、その後のがん発症を比べた試験ではありません。そのため、ピロリ菌が膵臓がんの原因だと断定したり、除菌による膵臓がんの予防効果を示したりするものではありません。2)

血液検査による感染評価には限界があり、部位別に分けると一部の症例数は少なくなります。発生部位が分からない症例を除いたことによる偏りも考えられます。愛知県がんセンターは、さらに大きな研究や、除菌歴を詳しく把握した研究などによる確認が必要としています。2)

胆道がんで明確な関連がなかったことも、「絶対に関係がない」と決まったわけではありません。今回の結果は、新しい予防法が確立したというニュースではなく、今後調べるべき関連が見えてきた段階と受け止められます。

親にピロリ菌が見つかっている場合、今確認したいこと

今回のニュースをきっかけに、以前の検査結果や除菌後の予定を確認することはできます。ピロリ菌の除菌は胃がんのリスクを下げますが、ゼロにはしません。除菌後も胃の内視鏡検査を定期的に受けることが勧められています。3)

家族が整理して診察で聞けること
状況 確認すること
陽性と聞いたが、その後が分からない 何の検査で分かり、除菌や追加検査の説明を受けたか
以前に除菌薬を飲んだ 除菌できたかを調べる判定検査を受け、結果を確認したか
除菌は成功した 次の胃の検査はいつか。通院予定を見返せるか
膵臓がんのニュースで不安になった 親の病歴・症状に照らして、追加の確認が必要か

抗体検査では除菌成功後も陽性が続く場合があります。検査の数字だけで「まだ菌がいる」と決めて薬を探さず、検査方法と過去の治療を医師に伝えます。今回の研究だけで、症状のない人全員に膵臓の検査が必要と決まったわけでもありません。3)

体重減少や黄疸などは、ニュースの読み方とは別に相談する

意図しない体重減少、続くおなかや背中の痛み、皮膚や白目が黄色くなる黄疸などがある場合は、医療機関へ相談してください。糖尿病が新たに見つかったり悪化したりした場合も、担当医に検査の必要性を確認できます。これらは膵臓がん以外でも起こり、症状だけで診断はできません。4)

家族は「ピロリ菌のせいだろう」「除菌したから大丈夫」と理由を決めず、いつから何が変わったかを伝えます。強い症状や急な悪化があるときは、予定している定期受診を待たず連絡してください。

今回の研究から家庭で新しい治療を始める必要はありません。すでに受けた検査・除菌の結果と今後の予定を確認し、普段と違う症状は別に相談する。この二つを分けると、ニュースへの不安を具体的な確認につなげられます。

出典・参考資料

  1. Yamamoto Sら「Helicobacter pylori Infection and the Risk of Biliary Tract and Pancreatic Cancers」(2026年7月14日、原著抄録)
  2. 愛知県がんセンター「ピロリ菌感染と膵臓がんリスクとの関連を示唆」
  3. 日本ヘリコバクター学会「ピロリ菌に関するQ&A」
  4. 国立がん研究センター「膵臓がんについて」

情報確認日:2026年9月14日

この記事を監修した人

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野崎理香 / 正看護師

正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。

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