寝たきりの母を自宅で介護しています。床ずれを防ぐために体の向きを変えた方がよいと聞きましたが、どのくらいの頻度で、どのように体位変換すればよいのでしょうか?身体が硬くなっていて横向きにしづらいこともあり、無理に動かしてよいのか不安です。
介護のコツ・生活
目次
- 1. 床ずれ予防で行う「体位変換」とは?
- 2. まず「自分で寝返りができるか」を確認しましょう
- 3. 体位変換は「何時間ごと」と決めればいい?
- 4. 体位変換の基本は「圧がかかる場所を変える」こと
- 4-1. 30度側臥位は「30度ぴったり」にする必要はありません
- 5. 体位変換だけでなく、皮膚や全身状態も確認しましょう
- 6. クッションは「姿勢を支えて圧を分散する」ために使います
- 6-1. 在宅ではビーズクッションやタオルを使うこともあります
- 7. かかとの床ずれにも注意しましょう
- 8. 身体を引きずるような体位変換は避けましょう
- 9. 拘縮や痛みがあると、思うように体位変換できないこともあります
- 10. 体位変換をした後に確認したいこと
- 11. ベッドを起こした後は「背抜き」も確認しましょう
- 12. 家族だけで体位変換するのが難しいときは福祉用具も検討できます
- 13. よくあるQ&A
- 13-1. 体位変換は必ず2時間ごとにしないといけませんか?
- 13-2. 30度側臥位にすれば床ずれは防げますか?
- 13-3. 横向きにすると痛がる場合はどうすればいいですか?
- 13-4. 家にあるタオルやクッションを使ってもいいですか?
- 13-5. 一人で体位変換できない場合はどうすればいいですか?
- 14. まとめ
専門家の回答
床ずれ予防で行う「体位変換」とは?

体位変換とは、ベッドや椅子などに接して体重がかかっている場所を、身体の向きや姿勢を変えることで移動させることです。
自分で寝返りができない方では、同じ姿勢が長く続くと特定の場所に圧が集中します。特に仙骨やかかとなど骨が突出している場所は圧迫されやすいため、体位変換や体圧分散寝具などを組み合わせて圧を減らします。
床ずれというと仙骨やお尻をイメージしやすいですが、実際には肘やかかと、くるぶしなどにもできます。靴が合わず、足の一部に圧や摩擦が続いて皮膚トラブルにつながっていたケースもありました。
「床ずれ予防=お尻の向きを変える」と考えるのではなく、その方が普段どんな姿勢で過ごし、どこに圧が集中しているのかを見ることが大切です。
まず「自分で寝返りができるか」を確認しましょう
体位変換を考える前に確認したいのが、本人がどの程度自分で身体を動かせるかです。
- 自分で寝返りができる
- 声をかければ身体の向きを変えられる
- 少し介助すれば横向きになれる
- 自分ではほとんど身体を動かせない
- 拘縮や痛みがあり、動かせる方向が限られている
できる動作まで家族がすべて介助する必要はありません。本人ができる動きを活かしながら、難しい部分だけを手伝う方が、介助する家族の負担も減らせます。
体位変換は「何時間ごと」と決めればいい?
日本褥瘡学会の一般向け情報では、基本的な目安として2時間を超えない範囲での体位変換が紹介されています。一方で、体圧分散寝具の種類や骨の突出具合などによって個人差があり、一部の体圧分散マットレスでは4時間を超えない範囲とする方法も示されています。
そのため、在宅介護で「誰でも必ず2時間ごと」と機械的に考えるのではなく、本人の身体状態、皮膚の状態、使用しているマットレス、家族が継続できる介護方法などを専門職と一緒に考えることが大切です。
在宅では、「2時間ごとに体位変換」と言われても、家族が夜中に何度も起きて対応し続けることが難しいケースもありました。介護する家族にも睡眠や仕事、日常生活があります。
体位変換だけで何とかしようとせず、本人に合った体圧分散マットレスやエアマット、クッションなども含めて、その家庭で続けられる方法を考えることが大切です。
体位変換の基本は「圧がかかる場所を変える」こと
体位変換というと、身体を大きく右向き・左向きへ動かすことを想像するかもしれません。しかし目的は、特定の場所に圧がかかり続けるのを避けることです。
仰向けから横向きへ姿勢を変える、クッションを使って身体を支えるなど、本人の状態に合わせて接触する場所や圧のかかり方を変えます。
30度側臥位は「30度ぴったり」にする必要はありません
床ずれ予防でよく紹介される姿勢の一つに「30度側臥位」があります。真横まで身体を向けるのではなく、背中側へクッションなどを入れ、骨の突出が少ない広い面で身体を支える方法です。
日本褥瘡学会でも、30度はあくまで目安で個人差があるとしています。体格、拘縮、痛み、呼吸状態などによって取りやすい姿勢は異なるため、角度だけにこだわらないようにしましょう。
体位変換だけでなく、皮膚や全身状態も確認しましょう
床ずれは圧迫だけで決まるものではありません。体位変換を行っていても、本人の身体状態や皮膚の状態によって床ずれのリスクは変わります。
訪問では、かなり痩せて骨が目立っている方、浮腫がある方、おむつ内が尿や便で湿った状態になりやすい方などもいました。こうした方では、体位変換だけでなく、皮膚の状態や栄養、排泄ケアなども合わせて見ていく必要があります。
- 痩せて骨の突出が強くなっていないか
- 浮腫があり皮膚の状態が変化していないか
- おむつ内が尿や便で湿った状態になっていないか
- 食事量が落ち、栄養状態が悪くなっていないか
- 肘・かかと・くるぶし・足など、仙骨以外にも圧が集中していないか
クッションは「姿勢を支えて圧を分散する」ために使います
クッションは、単に身体の下へ入れればよいわけではありません。身体を安定させ、できるだけ広い面で支えることで、特定の場所への圧を減らすために使用します。
- 横向きでは背中側を支え、無理なく姿勢を保てるようにする
- 膝同士やくるぶし同士が強く当たり続けないようにする
- かかとなど圧が集中しやすい場所にも注意する
- クッションを入れたことで別の場所に強い圧がかかっていないか確認する
在宅ではビーズクッションやタオルを使うこともあります
在宅では、身体を支えるためにビーズクッションを使っている方もいました。専用のポジショニングクッションだけでなく、タオルを折ったり丸めたりして、姿勢を支えるために使うこともあります。
クッションは汗や尿などで汚れることもあるため、洗い替えを用意したり、交換しやすいようタオルを巻いたりしているご家庭もありました。
ただし、タオルやクッションを硬く小さくまとめて身体へ当てると、狭い場所に圧が集中することがあります。入れた後は、本人が痛くないか、皮膚に強い跡がついていないか、別の場所が圧迫されていないかを確認しましょう。
また、在宅では「汚れたときに洗えるか」「交換できるか」も大切です。尿や汗などで濡れたクッションをそのまま使い続けず、洗濯できるカバーや洗い替えなど、日々の介護で管理しやすい方法も考えてみましょう。
本人に合わないクッションの入れ方では、かえって姿勢が崩れたり別の場所に圧が集中したりすることがあります。使い方が分からない場合は、訪問看護師や福祉用具専門相談員などへ実際のベッド上で確認してもらうとよいでしょう。
かかとの床ずれにも注意しましょう
かかとは骨が突出しており、仰向けで寝ているとマットレスへ圧がかかりやすい場所です。
日本褥瘡学会の資料では、下肢を広い範囲で支えてかかとへの圧を減らす方法も紹介されています。かかとのすぐ下だけに小さなクッションを入れるのではなく、本人の姿勢や膝への負担も含めて調整することが大切です。
身体を引きずるような体位変換は避けましょう
床ずれは圧迫だけでなく、摩擦や「ずれ」も関係します。身体をシーツの上で強く引きずるように移動すると、皮膚に負担がかかります。
- 腕だけを強く引っ張る
- 身体をシーツの上で引きずる
- 無理に一人で身体全体を持ち上げようとする
- 本人が痛がっているのに同じ方向へ動かし続ける
日本褥瘡学会では、摩擦やずれを減らすため、可能であれば2人で体位変換を行うことや、一人の場合は身体を少しずつ移動させる方法、スライディングシートなどを利用する方法を紹介しています。
拘縮や痛みがあると、思うように体位変換できないこともあります
高齢者では、関節が動かしにくくなる拘縮や、骨折・関節疾患などによる痛みがあり、身体を向けられる方向が限られていることがあります。
実際の在宅介護では、「右向きにはできるけれど左向きは難しい」といった方もいます。拘縮が強い方を、床ずれ予防だからと無理に反対側へ向けることはできません。
取れる姿勢の中でどこに圧が集中しているのかを確認し、クッションや体圧分散寝具なども使いながら調整していきます。
左右均等に体位変換できないからといって、家族だけで無理に動かす必要はありません。本人が安全に取れる姿勢を、訪問看護師、理学療法士、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員などと一緒に考えましょう。
体位変換をした後に確認したいこと
身体の向きを変えたら、それで終わりではありません。新しい姿勢が本人にとって無理のない状態になっているかを確認します。
- 痛みや息苦しさがないか
- 身体が不自然にねじれていないか
- 骨が突出した場所へ強い圧がかかっていないか
- かかと、くるぶし、膝などが強く当たっていないか
- 衣類やシーツに大きなしわがないか
- チューブ類が身体の下に入り込んでいないか
- 赤みなど皮膚の変化がないか
- 靴や装具などが同じ場所に当たり続けていないか
ベッドを起こした後は「背抜き」も確認しましょう
電動ベッドで背中を起こしたときは、身体が足側へずれたり、背中や仙骨まわりにずれ力がかかったりすることがあります。
背上げ後には、身体と寝具の間に生じたつっぱりやずれを軽減する「背抜き」を行う方法があります。背抜きの詳しい方法は、ケアポケの「褥瘡予防の『背抜き』の効果と正しいやり方」の記事も参考にしてください。
家族だけで体位変換するのが難しいときは福祉用具も検討できます
自力で寝返りができない方や、家族だけでは十分に体位変換できない場合には、体圧分散マットレスなどを利用する方法があります。
体圧分散寝具にはさまざまな種類があり、本人の床ずれリスク、身体状態、介護環境などによって適したものは異なります。日本褥瘡学会では、自力で体位変換できない方に圧切替型エアマットレスを使用することも勧めています。
介護保険の福祉用具貸与には「床ずれ防止用具」が含まれており、一定の条件を満たす場合はエアマットなどをレンタルできることがあります。要介護度や本人の状態によって給付対象となるかが異なるため、利用を検討するときはケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ確認しましょう。
現在使っているマットレスでよいか分からない場合も、家族だけで選ぶのではなく、本人の身体状態や床ずれリスクを見てもらったうえで相談するとよいでしょう。
よくあるQ&A
体位変換は必ず2時間ごとにしないといけませんか?
日本褥瘡学会では基本的な目安として2時間を超えない範囲での体位変換を紹介していますが、体圧分散寝具の種類や骨突出などによって個人差があります。家族だけで一律のスケジュールを決めるのではなく、本人の状態に合わせて専門職と相談してください。
30度側臥位にすれば床ずれは防げますか?
30度側臥位は体位変換の方法の一つですが、30度という角度は目安です。本人の体格や拘縮、痛みなどによって適した姿勢は異なります。また、体位変換だけでなく体圧分散寝具、栄養、スキンケアなどを合わせて考えることが大切です。
横向きにすると痛がる場合はどうすればいいですか?
痛みがある方向へ無理に動かさないでください。原因によっては姿勢そのものを見直す必要があります。取れる姿勢やクッションの使い方、マットレスなどを訪問看護師や理学療法士などへ相談しましょう。
家にあるタオルやクッションを使ってもいいですか?
身体を無理なく支えるために、タオルやクッションを利用できる場合があります。ただし、硬く丸めすぎたり、小さな面で身体を強く押したりすると、別の場所へ圧が集中することがあります。本人に合った使い方が分からない場合は、訪問看護師や福祉用具専門相談員などに実際の姿勢を見てもらいましょう。
一人で体位変換できない場合はどうすればいいですか?
無理に一人で持ち上げたり引っ張ったりすると、本人だけでなく介護者がけがをする可能性があります。介助方法を専門職に実際のベッド上で確認してもらったり、スライディングシートや体圧分散寝具などを検討したりする方法があります。
まとめ
床ずれ予防で大切なのは、「何時間ごとに右・左」と決めることだけではありません。その人の生活や身体状態を見て、どこに圧が集中しているのかを探し、家族が続けられる方法で圧を逃がしていくことが大切です。
自力で寝返りできるか、拘縮や痛みがないか、皮膚に赤みがないかなどを確認しながら行いましょう。体位変換後には、シーツのしわや身体のねじれ、かかとなど別の場所への圧迫も確認します。
在宅では家族だけで何度も体位変換することが難しい場合もあります。無理をせず、訪問看護師、ケアマネジャー、理学療法士、福祉用具専門相談員などに相談し、体圧分散寝具なども含めて続けられる方法を考えましょう。
参考
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
床ずれ予防では、同じ場所に長時間圧がかかり続けないようにすることが大切です。ただし、「必ずこの姿勢」「全員同じ間隔」で体位変換すればよいわけではありません。
本人が自分で寝返りできるか、拘縮や痛みがないか、どのようなマットレスを使っているかなどによって方法は変わります。家族一人では安全に動かせない場合は、無理に行わず訪問看護師やケアマネジャーなどへ相談しましょう。