介護
2026.09.10 作成
2026.09.14 更新
親が物忘れの受診を嫌がる…家族だけで相談できる?声かけと相談先
専門家の回答
親が受診を嫌がっていても、家族だけで相談できる

「まず本人を病院へ連れてこないと、何も始められない」と感じているご家族もいるかもしれません。地域包括支援センターでは、家族のみでも、認知症の診断を受ける前でも相談できます。親が住む地域のセンターへ、受診を勧めた際の反応や、生活で困っていることを伝えてみましょう。3)
医療機関での検査や受診の進め方については、認知症疾患医療センターも相談先です。例えば長崎大学病院は、本人が受診を嫌がる場合の話し方や、近くの専門医療機関について家族から相談できると案内しています。相談方法や対象地域は、最寄りの窓口へ事前に確認してください。4)
家族だけの相談で、本人の診断や薬の処方まで済むとは限りません。まずは相談員と状況を整理し、本人への説明や診察の段取りを考える場として使います。
認知症月間を、受診への不安を聞くきっかけに
9月は認知症月間、9月21日は認知症の日です。本人や家族が、認知症について知り、相談先を確かめるきっかけにできます。1)
国立長寿医療研究センターが公開した早期発見の手引き第2版では、本人・家族への聞き取りから、受診を後押しする声かけや相談先の分かりやすさ、通院手段の難しさなどが取り上げられています。本人・家族5組への聞き取りも含む知見であり、特定の言葉を使えば誰でも受診できると示したものではありません。2)
家族ができる工夫として、受診を繰り返し勧める前に「何が一番気になる?」と聞いてみる方法があります。病名を告げられるのが怖いのか、待ち時間がつらいのか、病院まで行くことが大変なのかで、相談したい内容は変わります。
「認知症かどうか」より、本人が困っていることから話す
家族は物忘れが心配でも、本人は別のことを困りごととして感じている場合があります。困っていることがあれば、その内容を一緒に医師へ聞く形で誘ってみてください。本人の気持ちや、知りたいという希望を尊重しながら進めることが大切です。5)
| 本人の話・様子 | 家族からの声かけや準備の例 |
|---|---|
| 悪い結果を聞くのが怖い | 「何を言われるか心配なんだね。まず相談で何をするか聞いてみようか」 |
| 病院まで行くのが大変 | 移動方法や付き添い、予約時刻を先に相談する |
| 困っていないと感じている | 家族が気づいた具体的な場面を一つ伝え、まず家族だけで相談する |
| 本人にも困りごとがある | 「そのことで困っているんだね。先生に一緒に聞いてみようか」 |
表は声かけの例で、監修者の実話ではありません。本人が話していない不安を決めつけたり、「認知症だから分からないのだ」と説明したりせず、実際の言葉を聞いて使い方を変えてください。
「散歩に行く」とだけ伝えて突然検査へ連れて行くより、行く場所や相談する目的を、本人が理解しやすい言葉で説明しましょう。話すたびに言い争いになる場合は、その場で結論を出そうとせず、支援者に説明の方法を相談します。
訪問看護では、ご本人も物忘れに気づいている一方で、その話をされることに抵抗がある方もいました。最初から「認知症」と病名を持ち出さず、忘れっぽさの話をしやすい雰囲気で接するようにしていました。
これは、物忘れを「年齢のせいだから受診しなくてよい」と決めることではありません。本人の気持ちを受け止めながら、困っている場面を一つ聞き、相談する目的を伝えていきます。
家族が相談に持っていくのは、できなかったことの一覧より具体的な場面
相談では「最近おかしい」「物忘れがひどい」だけでなく、いつごろから、どんな場面で、どのような変化があったかを伝えます。本人の前では言いにくい内容は、あらかじめメモを渡せるか、受付や看護師へ確認できます。5)
例えば「先月から、同じ支払いを済ませたか何度も確認するようになった。以前は自分で管理していた」というように、以前との違いを短く記録します。本人が自分で続けられていることや、受診についてどう話しているかも添えてください。
最初の電話で、持参物と家族だけの相談の方法を確認しておくと準備しやすくなります。お薬手帳や過去の検査結果なども、必要に応じて用意します。予約や紹介状の要否は医療機関によって異なります。3)
受診までの間も、生活で困っていることは相談してよい
受診日が決まるまで、家族がすべて抱える必要はありません。薬の管理、買い物、食事、通院の付き添いなど、今すでに難しい場面を地域包括支援センターへ伝え、どんな支援を相談できるか確認します。診断がない段階から相談できます。3)
訪問看護や介護サービスを利用している場合は、担当者にも家での変化を共有します。複数の家族が別々に受診を迫るより、誰が本人と話し、誰が窓口へ連絡するかを決めておくと、同じ説明を繰り返す負担を減らせます。
家族から相談を受けたときは、本人が受診を嫌がっていることを予約の際に伝え、どんな物忘れがあるかをあらかじめまとめておくよう案内していました。予約の段階で相談しておくと、当日どのように情報を伝えるかも確認できます。
急に様子が変わったときは、受診の説得を続ける場面ではない
このページは、普段の物忘れが気になり、相談のきっかけを探している場合の説明です。呼びかけに反応しない、突然ろれつが回らない、片側の手足に力が入らないなどの場合は119番へ連絡してください。「認知症が進んだのだろう」と待たないでください。6)
急な体調変化があり、いつもの本人と違う場合も、かかりつけ医などへその時点の状態を伝えます。ゆっくり受診への不安を聞く話し合いと、今起きている症状への対応を分けて考えましょう。6)
まとめ:本人を説得しきる前に、家族から相談を始める
親が物忘れの受診を嫌がるときは、本人の心配や通院の負担を聞き、生活の変化を具体的に整理します。本人がまだ受診に同意していなくても、地域包括支援センターなどへ家族だけで相談し、次の進め方を一緒に考えられます。
出典・参考資料
- 厚生労働省「認知症の日/認知症月間」2026年度
- 国立長寿医療研究センター「認知症発症/進行リスク早期発見の手引き 第2版」公開の発表
- 国立長寿医療研究センター J-DEPP研究「よくある質問」家族のみの相談
- 長崎大学病院 基幹型認知症疾患医療センター「ご本人・ご家族さま」専門医療相談
- 国立長寿医療研究センター「軽度認知障害(MCI)ハンドブック 第2版」Q35・受診時の情報整理
- 消防庁「救急車利用マニュアル」高齢者の症状
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
地域包括支援センターでは、認知症の診断前でも家族だけで相談できます。本人が受診を嫌がる理由と、家で起きている変化を整理して伝え、声かけや受診の段取りを相談してみましょう。3)