介護
目次
- 1. はじめに:「何をそろえればいいの?」と悩む方へ
- 2. どこで買える?介護用品の購入・レンタルガイド
- 2-1. 介護保険を利用して介護用品のレンタル・購入ができる
- 2-2. 介護保険が使える用品と対象条件
- 2-3. 介護用品はどこで買えば良い?
- 3. 在宅介護に必要な介護用品|カテゴリ別まとめ
- 3-1. 移動・姿勢保持サポート用品
- 3-2. 排泄ケア用品
- 3-3. 入浴・清拭用品
- 3-4. 食事・栄養サポート用品
- 3-5. 衣類・更衣・日常ケア用品
- 3-6. 見守り・安全管理用品
- 4. 家族介護のリアルな声「これがあってよかった!」
- 4-1. トイレのたびに悩んでいた → ポータブルトイレで負担軽減
- 4-2. 歩行が不安定になってきた → 杖よりも歩行器が安心だった
- 5. まとめ:最初は“今必要なもの”から。迷ったら相談を
専門家の回答
はじめに:「何をそろえればいいの?」と悩む方へ

在宅介護を行う際に、環境を整えることは重要なことです。
ベッドから食器まで多くの介護用品があり、在宅介護をフォローしてくれます。
しかし介護用品は種類が多く、選ぶことが難しい側面もあります。
その為、お部屋毎、動作毎という形でカテゴリーを分け少しずつ環境を整えることがオススメです。
また、介護保険を利用して料金の1割〜3割で購入やレンタルすることが出来るので、介護保険の対象を含めて必要なものを紹介していきます。
どこで買える?介護用品の購入・レンタルガイド
介護保険を利用して介護用品のレンタル・購入ができる
介護用品は介護保険制度を利用してレンタル、購入できるものが多くあります。
介護保険制度とは、デイサービスやホームヘルパーなどの介護保険サービスを利用できる制度のことです。
介護保険を利用すれば、料金の1割〜3割の自己負担でレンタル、購入できます。
介護保険レンタル、購入は介護保険サービスのひとつなので、利用の際にはケアマネジャーとの連携が必要です。
利用の前には介護保険の申請を行います。
相談窓口として、中学校区ごとに地域包括支援センターという在宅介護についての相談を受け付けている機関が設置されています。
気軽に相談受付しているので、地域包括支援センターの相談員に相談しましょう。
介護保険が使える用品と対象条件
介護保険を利用できるレンタル・購入品を表にまとめました。
在宅で多く使われるものをまとめているので全てではありません。
介護保険を申請すると、介護認定を受けることになります。
身体状況や介護が必要な度合いで要支援1〜2、要介護1〜5の7段階で認定されます。
レンタルについては要介護2を境に介護保険の利用可否が変わるのでご確認ください。
レンタル
介護用品 | 用品概要 | 対象者 |
---|---|---|
手すり | ベッド横、トイレ、玄関、動線などネジ止めなく設置出来る手すり | 要支援1・5 要介護1〜5 |
歩行器 | 主にタイヤ付きの歩行器。 腕で支える馬蹄型、シルバーカーの様なウォーカー型がある。 |
要支援1・5 要介護1〜5 |
杖 | 主に4本足の杖 | 要支援1・5 要介護1〜5 |
スロープ | 玄関の段差、室内の敷居段差移動の為のスロープ。 屋外用は1mから3mまである。 |
要支援1・5 要介護1〜5 |
電動ベッド・付属品 | 背上げ、高さ調整が出来る2モーター。加えて足上調整ができる3モーターがある。 柵、マットレス、テーブルなどの付属品を選択出来る。 |
要介護2〜5 |
床ずれ防止用具 | 床ずれリスクが高い方のためのマットレス。 高性能ウレタンのマットレスとエアマットがある。 |
要介護2〜5 |
車いす・付属品 | 自分で操作できるタイヤの大きな自走型、軽量でタイヤが小さい介助型、リクライニング型がある。 | 要介護2〜5 |
体位変換器 | ベッド上での体の向きを変えるクッション。 | 要介護2〜5 |
徘徊感知センサー | 見守りのためのセンサー。 マットタイプや赤外線タイプ、カメラ付タイプもある。 |
要介護2〜5 |
リフト | ベッドから車いすへの乗り移りリフト。床からの立ち上がりの為の昇降座椅子。 玄関に置く段差昇降機がある。 |
要介護2〜5 |
*例外申請をすれば、対象者外でもレンタル利用できることがあります。
*杖、歩行器、スロープの一部の商品については、介護保険レンタル・購入を選択できます。
購入
介護用品 | 用品概要 |
---|---|
腰掛便座 | ポータブルトイレや、便座の高さを上げる補高便座がある。 |
入浴補助道具 | 洗い場で使用するシャワーチェア、浴槽内に設置する浴槽台、浴槽に設置する手すり、すのこなどがある。 |
*購入品は介護認定を持っていれば介護保険対象になります。
介護用品はどこで買えば良い?
福祉用具貸与業者
介護保険対象になっている介護用品は、福祉用具貸与業者からレンタル・購入がオススメです。
レンタルはケアマネジャーとの連携が必要であり、購入品については市役所に申請書類を提出する必要があります。
ドラッグストア
ドラッグストアには介護用品コーナーが出来ているので、すぐ必要な時に便利です。
口腔ブラシやとろみ剤など少量を早く欲しいという場合はドラッグストアが良いでしょう。
通販
通販サイトはポータブルトイレの処理袋など、大きな消耗品の注文に便利です。
ドラッグストアより安く販売されている可能性もあるので店頭価格と比べてみてください。
在宅介護に必要な介護用品|カテゴリ別まとめ
この章では、介護用品をカテゴリ別にまとめます。
チェックリストを記載するので当てはまる介護用品を少しずつ揃えていきましょう。
移動・姿勢保持サポート用品
介護ベッド(電動)・ベッド用手すり
- 立ち上がりが難しくなっている
- 掴まるところがないと起き上がれない
- ベッド上で過ごす時間が多い
足腰の筋力が弱まっており、立ち上がりや起き上がりが難しい場合には電動ベッドがオススメです。
電動ベッドには、起き上がりの補助となる背上げ機能、立ち上がり補助となる高さ調整機能、膝裏を上げ身体のズレを抑える足上げ機能があります。
お持ちのベッドを使用している場合には、設置型の手すりを使用することが出来ます。
鉄のベース板に手すりが設置されており、ベッドサイドに置くだけで使用することが出来ます。
床ずれ防止マット・クッション
- 体に赤みが出ていることが多い
- 寝返りの回数が極端に減っている
- 食事量が減っており栄養状態が悪い
寝返りをあまりうたない、肌が赤くなりやすいなど床ずれリスクが高い場合には、床ずれ予防マットレスが有効です。
体圧分散(体重を広く分散する性能)機能の高い高品質ウレタンのマットレスと電源を使用して専用ポンプで空気を循環させることで床ずれを防止するエアマットがあります。
参考:エアマット
杖・歩行器・車いす
- 若干ふらつきが出ている→杖
- 今にも転倒しそうである→歩行器
- 転倒を繰り返している→車いす
歩行力に応じて、杖、歩行器、車いすを使い分けます。
若干のふらつきが見られたり、台所などスペースが限られた場所を移動する時に杖は有効です。
ふらつきが頻繁に見られ転倒リスクが高い場合は歩行器を利用しましょう。
室内でも使用が可能なコンパクトな歩行器があります。
さらに頻繁に転倒を繰り返したり、本人・介護者の移動負担が大きい婆には車いすを使用しましょう。
室内でも使用できるコンパクトな車いすも増えています。
排泄ケア用品
ポータブルトイレ/尿器
- 便意があるがトイレに行くまで間に合わない
- 夜間のトイレ回数が2回以上
- 歩行時の転倒リスクが高い
トイレへの移動が困難な場合にはポータブルトイレが有効です。
ベッドサイドに設置することが出来ます。
便座の下に取り外し出来るバケツが設置されており、排泄後にはバケツ毎トイレに運び排泄物を処理します。
参考:ポータブルトイレ
消臭スプレー・使い捨て手袋
ポータブルトイレの使用に合わせて消臭剤も使用しましょう。
液体タイプや水に溶けるシートタイプなど種類が様々ですが、泡のフォームタイプが一番臭いを防げます。
排泄物の処理には感染症を防ぐためにも使い捨て手袋が必須です。
参考:消臭スプレー
紙おむつ・パッド類
- トイレへの移動が難しい
- 便意が感じられない
- トイレ移動の介護が常にできない
ポータブルトイレへの乗り移りが困難であったり、尿意や便意がない場合には紙おむつの対応になります。
赤ちゃんオムツの様なテープタイプと、脱ぎはぎ出来るパンツタイプがあります。
中のパッドを交換するものもあります。
オムツ漏れや交換時の汚れ対策として防水シーツを活用しましょう。
入浴・清拭用品
シャワーチェア・滑り止めマット
- 本人が浴室を怖がっている
- 立ち上がりが困難である
- 浴室で足を滑らせている
滑りやすい浴室で使用出来る介護用品としてシャワーチェアがあります。
脚部は滑りにくい素材になっており、身体に触れる部分は柔らかいスポンジ素材になっています。
また、滑りやすい床に敷いて使用出来るゴム製の滑り止めマットもあります。
入浴手すり/バスボード
- 浴槽への跨ぎ動作が困難である
- 跨ぎ動作時に繋がる所がない
- 立ちながらの跨ぎ動作が困難である→バスボード
湯船につかる際の補助となる道具があります。
立って跨ぎ動作が出来る場合は、浴槽に挟み込んで設置出来る入浴手すりが有効です。
立ちながらの跨ぎ動作が難しい場合にはバスボードの使用が有効的です。
浴槽に橋渡しの様に設置して、座りながら動作を行うことが出来ます。
体拭き用ウェットタオル・ドライシャンプー
入浴自体が困難な場合や、毎日の入浴が難しい場合には無理に浴室で入浴する必要はありません。お部屋でできる清拭を検討しましょう。清拭用のウェットタオルや、水がなくても使用出来るドライシャンプーがオススメです。
食事・栄養サポート用品
滑り止め食器・持ちやすいスプーン、フォーク
- 料理を口に運ぶのが難しい
- スプーンなどが細すぎて掴み辛い
- 自分で食べたいのでうまく出来ずにもどかしい
高齢になると、握力の低下や手指の変形によって食器を扱い辛くなります。
そのような方の為に滑り止めがついたお皿や持ち手がスポンジで作られているスプーンやフォークがあります。
使用感が本人に合うかが重要なので実物を見て選んだ方が良いかもしれません。
誤嚥予防用コップ・吸い飲み・とろみ調整食品
- 咽せやすく咳き込むことが多い
- 水分を一気にとってしまい、咳き込むことが多い
- 誤嚥性肺炎を起こしたことがある
誤嚥性肺炎は、食事の際の大きなリスクです。
ムセが多く、誤嚥の危険がある場合は、誤嚥予防の介護用品を使用しましょう。
誤嚥予防コップはコップに角度がついて顔を上に向けなくても飲み物を飲める構造のコップです。
吸飲みは、起き上がりが難しく横になったままでも水分を取れる道具です。
医師の診断で水分自体の摂取が危険な場合はトロミ剤を利用してとろみをつけましょう。
適正なとろみ濃度があるので医師の診断をうけてください。
口腔ケア用品
口腔ケアは健康状態を保つ為にも非常に重要です。
口の中の衛生状態を保つとともに、口の中に刺激を与えることで嚥下能力が向上します。
口腔ケアには、スポンジつきの使い捨て商品があります。
衛生状態を保つ為にも使い捨てのものをおすすめします。
参考:口腔ケア用品
衣類・更衣・日常ケア用品
介護用肌着・介護用パジャマ
- 衣服の着脱が困難である
- 腕や足の可動域制限がある
- 衣服の着脱の負担を
衣服の着脱も介護に含まれます。
高齢者の着替えの際は手足がうまく動かない方もいます。
その際に衣服の前方がホックやファスナーになっており着脱がしやすい物が多いです。
パジャマについては、ファスナーで一枚布になるものがあります。
ファスナーの形状は数種類あるので、使いやすい物を選びましょう。
参考:介護用パジャマ
爪切り・耳かき
- 通常の爪切りが使えない
- 巻き爪が強い
爪切りや耳かきについても日々の手入れが必要です。
高齢者は巻き爪になりやすく、特殊な爪切りが便利です。
ニッパーのような切れ味の鋭い爪切りをおすすめします。
耳かきは使い切りの綿棒や、最近ではスマホと接続し先端についたカメラで耳穴を確認できる商品があります。
参考:爪切り
見守り・安全管理用品
ベッドセンサー
- 家族を呼ばずに動いて転倒する
- 本人の動きをすぐに察知したい
- 部屋で何をしているか早めに知りたい
見守りが必要な方の中には自分で動作を行い転倒される方が多くいます。
そんな方についてはセンサーを使用するケースもあります。
ベッドサイドにセンサーマットを置いて本人が踏んだ際に作動するセンサーがあります。
マットが気になる場合は赤外線で動作するセンサーが良いでしょう。
参考:ベッドセンサー
室内移動用の手すり
- 動線が短い
- 杖や歩行器を使用する習慣がつかない
- 伝い歩きが安心できる
室内を移動する方であれば、移動用の手すりを設置することが出来ます。
介護保険を使用したレンタルと住宅改修という工事で取り付ける方法があります。
住宅改修は取り外しが出来ないので、使用頻度によってレンタルか住宅改修かを検討します。
参考:室内移動用手すり
室温・湿度管理グッズ
高齢者は、室温の変化に気づくことが難しいです。
その為、温度と湿度を数字ではっきりわかる温度計を用意しましょう。
また、就寝時には水分が多く失われるので、近くに水分を置くこと、マットレスを通気性の高いものに交換することも有効です。
家族介護のリアルな声「これがあってよかった!」
トイレのたびに悩んでいた → ポータブルトイレで負担軽減
在宅介護でトイレの問題は最も重要です。
オムツでの排泄は本人や介護者の負担が大きく、できるだけトイレでの排泄がベストです。
しかし、トイレ移動の際には転倒リスクが伴うケースも多くあります。
ポータブルトイレに抵抗がある方も多くいらっしゃいますが、夜間使用からの導入がおすすめです。
夜間の移動、転倒不安が少なくなったことで安心される方も多くいらっしゃいます。
臭いの面は、脱臭機能付きの機種や消臭剤で工夫することが出来ます。
歩行が不安定になってきた → 杖よりも歩行器が安心だった
歩行が難しくなってきた時に、杖を使用される方が多いです。
しかし、杖では歩行補助として不安なケースが多くあります。
自宅内での歩行器使用に際して、大きすぎるのではないかと不安に思う方が多くいますが、コンパクトな機種が増えています。
段差についても敷居スロープで対応出来るケースも増えているので自宅内での使用も安心です。
まとめ:最初は“今必要なもの”から。迷ったら相談を
介護用品が必要になった際は、まず介護保険申請を行いましょう。
冒頭で説明したように地域包括支援センターへの相談がおすすめです。
介護保険対象の物の見分けが難しいので、担当のケアマネジャーに相談しながら介護用品を揃えていきましょう。
介護用品を揃えることは在宅介護において重要なことですが、焦らず揃えていくことが大事です。
商品の使い方を覚えることも大変ですし、大きな環境変化はご本人や介護者の混乱に繋がります。
当記事のチェックリストを活用しながら少しずつ介護用品を揃えていきましょう。
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
この記事は在宅介護を始めた介護初心者の方に向けて書いた記事です。
介護用品は介護に必要なものであり、在宅介護の負担を減らす便利なものです。
介護に慣れないうちは、大変なことが多くあります。この記事は介護用品を分かりやすく解説し、介護初心者の方の負担を減らすことができる内容になっています。