リハビリ・介護予防

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2026.10.06 作成

2026.10.06 更新

EMSは高齢者の筋力低下に役立つ?効果と使う前の注意点

高齢の親があまり歩かなくなり、座ったまま足を鍛えるEMSが気になっています。運動の代わりになるのでしょうか。持病があっても使えるか心配です

専門家の回答

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筋力などの改善を報告する研究はありますが、機器や対象者の条件が異なり、EMSだけで歩行やリハビリを置き換えられるとはいえません。購入前に製品の使用禁止事項を確認し、持病や医療機器がある場合は、型番と説明書を持って医療者へ相談してください。

EMSは筋肉を電気で刺激する機器。製品によって目的が違う

 

EMSは電気刺激で筋肉の収縮を起こす仕組みです。医療やリハビリで使う電気刺激と、家庭用のトレーニング機器では、目的、出力、使い方、対象者が異なります。「EMS」と書かれているだけで、同じ効果を期待できるわけではありません。1)3)

足を乗せるタイプやパッドを貼るタイプなどもあります。例えばFoot Fit 3の取扱説明書では、足裏・前すね・ふくらはぎの筋肉を鍛える目的の製品で、医療機器ではないと説明されています。ここでは製品の区別の例として挙げており、購入を勧めるものではありません。3)

高齢者の筋力に効果はある?研究条件を一緒に見る

高齢者への電気刺激について、筋力や筋肉量の改善を報告した研究はあります。2022年の全身型EMSのシステマティックレビューでは、60歳を超える人を対象とした無作為化比較試験を集め、筋肉量や筋力などへの効果を検討しています。ただし、全身型の研究結果を、足だけに使う家庭用製品へそのまま当てはめることはできません。1)

日本でも、高齢者に電気刺激と筋収縮を組み合わせる方法を検討した研究があります。こうした研究で重要なのは、機器だけでなく、対象者の状態、刺激する場所、運動の併用、実施期間まで含めた条件です。「高齢者に効果があった」という一文だけでは、親に合うかは判断できません。2)

広告や研究で確認したいこと
確認点 家族が見るポイント
誰が対象か 健康な高齢者か、入院中の人か、特定の病気の患者か
何を使ったか 家庭用の同じ製品か、専門家が管理する別の機器か
何と組み合わせたか 運動や栄養支援を一緒に行っていないか
何が改善したか 筋力の測定値か、歩行や日常生活まで評価したか

筋力の測定値がよくなっても、それだけで転倒が減る、外出できる、介護が不要になるとはいえません。本人が望むことが「トイレまで安全に歩く」なら、その動作にどのような支援が必要かも評価してもらう必要があります。

歩く練習やリハビリの代わりになる?

EMSだけで、歩行、バランス、立ち上がりなどの練習をすべて置き換えられるとはいえません。筋肉を収縮させることと、生活の中で安全に体を使うことは、確認する内容が異なります。

運動が難しい人に補助的な方法として検討されることはありますが、まず「なぜ動けないのか」を確認したいところです。痛み、息切れ、ふらつき、転倒への不安などがある場合は、機器の購入より先に、かかりつけ医や担当のリハビリ職へ相談してください。

例えば「散歩が減ったのでEMSを買う」前に、「膝の痛みで歩くのを避けている」「家の階段が怖くて外に出られない」などの理由が分かれば、痛みの相談や環境の調整も選択肢になります。これは一般的な確認例であり、特定の患者の体験談ではありません。

持病や医療機器がある場合は、使う前の確認が必要

ペースメーカーなどを使用している方は、家庭用EMSを自己判断で使わないでください。医療機器への干渉が問題になることがあり、製品によって併用禁止とされています。禁止事項を「弱い刺激ならよい」「家族が見ていればよい」と読み替えないことが大切です。3)4)

例えばFoot Fit 3では、心臓疾患、静脈血栓症、脚部の金属、使用部位の傷、説明書を自分で理解できない場合などが使用禁止の対象に含まれます。これは同製品の規定であり、すべてのEMSに共通する一覧ではありません。使う機種の最新の説明書を確認してください。3)

認知機能の低下がある方や、刺激・痛みを感じにくい方では、操作や異常の伝え方も確認が必要です。「家族が代わりに操作するから使える」と決めず、製品の条件と本人の状態を医療者・メーカーへ確認します。製品名が分からないまま「EMSを使ってよいですか」と尋ねるより、型番と説明書を見せる方が具体的に相談できます。

購入前と使い始めに、家族が確認したいこと

  • 目的:何を楽にしたいのか。本人も使いたいと思っているか
  • 適応:持病、治療中の病気、医療機器、皮膚の状態が説明書の条件に合うか
  • 操作:姿勢を保ち、強さや停止を適切に操作できるか
  • 継続:設置・片付け・手入れや消耗品の負担を含めて続けられるか

使用できると確認できた場合も、強さや時間は機種の説明書に従います。刺激が弱く感じるからといって、上限を超えたり使用時間を延ばしたりしないでください。痛み、皮膚の赤み、やけどのような変化、体調不良があれば中止し、症状に応じて医療機関へ相談します。EMSでは皮膚刺激ややけどなどの報告もあります。3)4)

続けるかを考えるときも、「強い刺激に耐えられた」ことを成果にしないようにします。本人の負担と、目的にしていた動作の変化を担当者と確認し、効果が分からないまま強度だけを上げないことが大切です。

よくある疑問

80代でも使える?

年齢だけで一律には判断できません。製品の対象条件、持病、皮膚や感覚の状態、操作の理解などを確認します。高齢者が参加した研究があることは、すべての高齢者が安全に使えることを意味しません。

低周波治療器と同じ?

電気を使う点は似ていても、痛みの緩和を目的とする機器と筋肉のトレーニングを目的とする機器では使い方が異なります。外見や名称ではなく、製品の使用目的を確認してください。4)

何日で効果が出る?

製品や本人の状態、評価する項目で異なるため、一律の日数は示せません。研究と異なる使い方をして、同じ期間で同じ結果が得られるとは限りません。購入前に、期待する効果の根拠がその製品についてのものか確認します。

購入前に、製品名と「できるようになりたいこと」を伝える

EMSは筋肉への刺激を補う選択肢になり得ますが、運動やリハビリを丸ごと代替するものではありません。親のために選ぶなら、まず製品名・説明書と、立ち上がりや歩行などの具体的な目標を持って相談してみてください。使用条件に合うかと、本人の暮らしに役立つかを分けて確認できます。

出典・参考資料

  1. 高齢者への全身型EMS:無作為化比較試験のシステマティックレビュー(2022年、抄録)
  2. 理学療法科学:高齢者に実施するEEMT法の筋力・筋持久力・持続歩行距離改善効果(2011年)
  3. MTG:Foot Fit 3取扱説明書(対象機種の例)
  4. FDA:Electronic Muscle Stimulators(安全性情報。米国制度を日本へ当てはめない)

情報確認日:2026年9月14日

この記事を監修した人

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野崎理香 / 正看護師

正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。

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