介護
目次
- 1. 「最近ちょっとしんどい…」と思ったあなたへ
- 1-1. 介護はがんばりすぎてしまう人ほど危ない
- 1-2. 「介護うつ」は誰にでも起こりうるもの
- 1-3. まずは“気づくこと”が予防の第一歩
- 2. 介護うつとは? 家族介護者に多く見られる心のSOS
- 2-1. 正式な病名ではないが、うつ症状を伴う
- 2-2. 放っておくと本格的なうつ病に移行するリスクも
- 3. こんな症状が出たら要注意|介護疲れ・介護うつのサイン
- 4. 介護うつを防ぐために今日からできること
- 4-1. 「ひとりで頑張らない」を意識する
- 4-2. デイサービスやショートステイを活用して“休む日”を作る
- 4-3. 気持ちを吐き出せる相手・場所を持つ(友人・カウンセラー・家族会など)
- 4-4. 週に1回“自分の楽しみ”を予定に入れる
- 4-5. 睡眠・栄養・運動のリズムを意識する
- 5. 本当に限界を感じたら?使える制度と相談先
- 5-1. 地域包括支援センター(最寄りの公的窓口)
- 5-2. 介護者向け相談ダイヤル/LINE相談窓口
- 5-3. 心療内科・カウンセリングの活用
- 5-4. 介護休業制度や職場の両立支援制度も確認を
- 6. まとめ:あなたの心が元気であることが、介護の土台になる
- 6-1. 介護される側も、あなたが元気でいることを望んでいる
- 6-2. “責任感”ではなく“続けられる形”を見つけよう
- 6-3. 今の小さな不調に、いま気づけたことが何より大切
専門家の回答
「最近ちょっとしんどい…」と思ったあなたへ

介護をしていると、肉体的、精神的に疲弊してしまう時があります。
介護そのものが精神労働で、介護福祉の専門職は仕事のストレスなどによって、「燃え尽き症候群」など精神的不調に罹りやすいと指摘されています。
また、家庭で家族の介護をしている人にも、また別の辛さがあります。
家族の介護は「仕事」として割り切るのが難しく、精神的負担が掛かりやすい傾向にあります。
介護はがんばりすぎてしまう人ほど危ない
家族の介護は、専門職のそれに比べて、がんばりすぎる傾向にあります。
家族が介護の対象になると、どうしても感情が入りやすく、徹底的にケアしてしまうのです。
真面目な人、凝り性な人は要注意です。
「介護うつ」は誰にでも起こりうるもの
「介護うつ」は精神科の正式な病名ではありませんが、介護が原因の精神的・肉体的疲労を伴う、抑うつ状態と定義することができます。
個人差はありますが、介護、特に家族の介護をしていれば、誰にでも起こりうる症状です。
まずは“気づくこと”が予防の第一歩
介護をしていると、肉体的・精神的疲労が少しずつ蓄積されます。
それに伴い、介護うつも発症するリスクが高まります。
自身の健康状態に気づくことが、介護うつの予防の第一歩です。
介護うつとは? 家族介護者に多く見られる心のSOS
正式な病名ではないが、うつ症状を伴う
繰り返しますが、「介護うつ」は抑うつを主な症状としていますが、精神科の正式な病名ではありません。
しかし、その原因に「介護疲れ」が推定されるので、見逃すことはできません。
放っておくと本格的なうつ病に移行するリスクも
介護うつは軽症のうつ病として捉えることができます。
放置すると、本格的なうつ病に悪化する可能性があるので、早期発見、早めの対策が必要です。
こんな症状が出たら要注意|介護疲れ・介護うつのサイン
介護うつなど軽症うつ病の症状には、生活上のさまざまな兆候があります。
精神科医の笠原嘉が策定した18項目のチェックリストで、自身の精神的健康を測定してみましょう。※1
10項目以上当てはまったら要注意です。
- 朝いつもより早く目が覚める
- 朝起きたとき陰気な気分がする
- 朝いつものように新聞やテレビをみる気になれない
- 服装や身だしなみにいつものように関心がない
- 仕事にとりかかる気になかなかなれない
- 仕事にとりかかっても根気がない
- 決断がなかなかつかない
- いつものように気軽に人に会う気にならない
- なんとなく不安でイライラする
- これから先やっていく自信がない
- 「いっそのこと、この世から消えてしまいたい」と思うことがよくある
- テレビがいつものように面白くない
- 寂しいので誰かにそばにいてほしい、と思うことがよくある
- 涙ぐむことがよくある
- 夕方になると気分がらくになる
- 頭が重かったり痛んだりする
- 性欲が最近は落ちた
- 食欲も最近おちている
介護うつを防ぐために今日からできること
介護うつを予防、少なくとも悪化するのを防ぐために、今からできることがあります。
「ひとりで頑張らない」を意識する
介護は多職種によるチームプレイです。それは家族に対する介護でも変わりません。一人で抱え込まずに専門家、あるいは共に介護に励む仲間を頼りましょう。
デイサービスやショートステイを活用して“休む日”を作る
日本ではまだレスパイトケアの概念が浸透しているとはいいがたいですが、介護する人の心身のケア、休息は必要です。
家庭で、一人で介護を完結するのではなく、時にはデイサービス、ショートステイなどのサービスを活用して、介護から離れる時間を作りましょう。
気持ちを吐き出せる相手・場所を持つ(友人・カウンセラー・家族会など)
家族の介護をしているのは、世界で一人ではありません。
折りに触れて、友人に相談するのもいいですし、地域の家族介護者の会に顔を出すのもいいでしょう。
また、それでも話しにくいことがあれば、料金はかかりますが、専門のカウンセラーに相談してみるのも手です。
週に1回“自分の楽しみ”を予定に入れる
介護をしていると、時に自分の感情を押し殺す場面があります。
しかし、我慢のしすぎはよくありません。
少なくとも週に1回程度、自分を甘やかす時間を持ちましょう。
睡眠・栄養・運動のリズムを意識する
介護は早朝・深夜問わず、24時間見守ることを求められることがあります。
しかし、これを一人で引き受けると身体が壊れてしまいます。
デイサービス、ショートステイなどのさまざまなサービスを利用しながら、睡眠・栄養・運動のリズムを整えることを意識しましょう。
本当に限界を感じたら?使える制度と相談先
介護うつを予防するためには、日頃、家族の介護について相談できる機会が必要です。
介護について相談できる公共・民間のサービスがありますので、積極的に活用しましょう。
地域包括支援センター(最寄りの公的窓口)
市区町村が運営する地域包括支援センターは、介護について、最も頼りになる相談・支援機関です。
家族の介護について相談に応じてくれるだけでなく、問題の解決に繋がるさまざまなサービスを提案してくれます。
介護者向け相談ダイヤル/LINE相談窓口
民間の企業が運営する介護者向け相談ダイヤルやLINE相談窓口も、費用はかかりますが、家族の介護をする人にとって有用なサービスです。
最近は居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)がサービスを提供している場合がありますので、問い合わせてみてください。
心療内科・カウンセリングの活用
実際に介護うつになりかけた、あるいはなってしまった場合は、心療内科を受診するのも手です。
医師が必要に応じて薬を処方してくれます。
ただ、心療内科は相談ではなく、治療のための機関なので、自身の置かれている状況についてもっと話したい場合は、カウンセリングを活用しましょう。
介護休業制度や職場の両立支援制度も確認を
職場の介護休業・休暇制度を確認しましょう。
企業によっては、仕事と介護を両立するために、テレワーク、フレックス勤務を導入していることもあります。
また、ケアマネジャーなどの専門職と提携して、相談窓口を設置している場合があります。
まとめ:あなたの心が元気であることが、介護の土台になる
「介護」と言うと、少し特別なことに聞こえますが、英語では”Care”と言います。
要するに人のお世話をすることです。
人が人のお世話をするのは、やはり、大変なことです。
介護する人の心と体が健やかでないとできないことです。
介護される側も、あなたが元気でいることを望んでいる
介護は一人でする仕事ではありません。
人はケアすることを通じて、ケアされる人との関係を結んでいきます。
また、周囲の人々の協力を巻き込んでいきます。
ケアを通じて出会った人々はあなたの健康、幸せを望んでいるはずです。
“責任感”ではなく“続けられる形”を見つけよう
介護うつは責任感が強い人が罹りがちです。
しかし、介護という仕事は一人で完結することはありません。
介護は家族と専門職のチームプレーなのです。
チームプレーでは一人に責任が押し付けられることはありません。
介護する人/介護される人が幸せになる。
この目的のためにチームは組織・存続されるべきなのです。
今の小さな不調に、いま気づけたことが何より大切
体や心の小さな不調に気づくことは、今の介護の仕方に問題があることに気づくチャンスです。
誤解を恐れずに言えば、介護は頑張るべきものではなく、むしろ楽しむべきものです。
心身に不調が出るほど頑張ってはいけないのです。
介護を通じた新しい出会いに感謝しつつ、ケアする人/ケアされる人が幸せになる関係を目指していきましょう。
出典
- 笠原嘉『軽症うつ病:「ゆううつ」の精神病理』(講談社現代新書、1996年)78頁。
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
介護は肉体的・精神的な負担が大きく、誰にでも「介護うつ」のリスクがあります。
この記事では、介護疲れや介護うつのサイン、今日からできる予防策、そして限界を感じたときに頼れる相談先や制度についてまとめました。
一人で抱え込まず、無理なく続けられる介護の形を一緒に考えていきましょう。