介護
専門家の回答
介護が必要になったときの子供がいない場合の影響とは?
老後の不安は、子供がいることで解消されるものではありません。現代では、どの世代もそれぞれの生活に精一杯なことが多く、老後は子供に頼るものではないという意識が大切です。
自分自身で準備することが、安心した未来につながります。介護が必要になったときの子供がいない場合の影響をみてみましょう。
緊急時の対応が遅くなる可能性がある
子供や同居人がいない場合、体調不良や事故などの緊急時に対応が遅くなる可能性があります。具体例をみてみましょう。
- 家で倒れていても発見に時間がかかる
- ひとり暮らしで体調に異変があっても助けを求められない
- 事故で救急搬送されたときの家族連絡に時間がかかり、治療が決められない
緊急事態のときに、一般的には治療や今後についてなどの意思決定を家族がおこないます。子供がいない場合は、地域の見守りサービスの利用や、緊急時にどう対応してほしいかを明確に記載しておくことがおすすめです。
身元保証人がいない可能性がある
子供や親族がいない高齢者の場合、病院や施設入所のときに身元保証人がいないという問題が発生する可能性があります。
病院で緊急を要する治療の決定や介護施設の入居のときに、身元保証人が求められることが一般的です。
身元保証人がいないと手続きが進まないケースがあるため、成年後見人制度を利用して法的に決定権を委任する方法や、身元保証会社を利用して保証人の役割を担ってもらう方法など対策が必要です。
経済的負担が増加するリスクがある
子供や親族をはじめとする頼れる人が近所にいない場合、経済的負担が増加するリスクがあります。周囲に介護を頼めず、すべてのサービスを外部に依頼しなくてはいけないからです。
在宅介護や施設介護の費用がかさみ、年金や貯蓄だけでは対応できなくなる可能性があります。
余裕をもって資金を準備したり、介護保険の制度で使えるものを調べたりしてみてくださいね。
早期に介護施設に入居する必要がある
子供や親族などがいない高齢者の場合、自宅でひとり暮らしが困難になる段階で、早期に介護施設への入居が必要になる可能性があります。
施設に入居することで安心して介護を受けられますが、その一方で費用がかかるため早期の入居準備や資金計画が必要です。
介護が必要になる前に準備できること
老後できる限り長く自立した老後を送るために、自分で計画的に準備することが大切です。
- 住まいの選択:バリアフリーの住宅や介護付き高齢者住宅など
- 老後の資金:介護が必要になったときに備え、貯蓄や年金の確認など
この視点をもとに、介護が必要になる前に準備できることを解説します。詳しくみてみましょう。
住環境を整備する
介護が必要になる前に、自宅の住環境を整備することは大切です。具体例をみてみましょう。
- 手すりの設置
- スロープや段差の解消などバリアフリー化
- 平家やエレベーターのあるマンションへ引っ越し
老後に生活しやすい住環境を整備することで、実際に誰かの手助けが必要なときの負担を軽減できます。
要支援や要介護などの認定がおりると住宅改修に補助金が出るため、あらかじめ介護保険の制度を調べておきましょう。
介護サービスを調査する
介護が必要になったときに備えて、近所の介護サービスや施設の情報を調査することが大切です。老人ホームや特別養護老人ホームは希望しても、実際に利用できるまでに時間がかかることが多い地域もあるからです。
余裕をもって準備することで、いざ介護が必要になったときにスムーズにサービスを利用できます。
ご自身が希望する介護の形態や利用できる施設などを中心に調べることをおすすめします。多くの施設は、利用前の段階で見学が可能なため、気軽に気になる施設に問い合わせてみてくださいね。
成年後見人制度の利用準備する
子供がいない場合は、成年後見人制度の利用を考えましょう。成年後見人制度とは、判断力が十分にできなくなった高齢者の「財産管理」「医療や介護などの決定」を適切におこなえるよう支援するための制度です。
この制度を利用すると、成年後見人が「財産」「医療」「介護」などの判断を代行できます。
制度を利用するためには、家庭裁判所での手続きが必要です。認知症や病気で判断力が低下する前に、成年後見人制度の利用の準備をすることで、介護が必要になったときに安心して備えられます。
リビングウィルを考える
リビングウィルとは、終末期における医療や介護に関して、自分の意思を文書で明確することです。
これにより、自分の希望に沿った治療や介護を受けられます。具体例をみてみましょう。
- 延命治療は希望しない
- 苦痛を取り除く治療は希望する
- 心臓マッサージは希望しない など
家族や子供がいる場合は、これらの希望を最終的に家族に聞くこともあります。しかし、身寄りがない場合、治療を勝手に止めることはできません。そのため、本来は希望してなくても延命治療をしたり、できる限りの医療がおこなわれます。
人生の最終ステージをどのように過ごしたいかを具体的にイメージし、希望に沿った介護や医療を受けられるよう文書に残しておきましょう。
緊急連絡網を作成する
子供がいない場合や親族が遠くに住んでいる場合などは、緊急連絡網を作成することがおすすめです。緊急時に、救急隊や医療スタッフなどがすぐに連絡を取れないと対応に遅れが生じる可能性があるからです。
連絡先をリストアップして、緊急時にどのように対応するかを文書化しておきましょう。
さらに地域の見守りサービスや、緊急通報システムの利用を活用することも検討してみてくださいね。
法的書類の準備をする
自分で判断できなくなったときや、万が一のことに備えて法的書類の準備をしましょう。具体例はつぎのとおりです。
- 遺言書
- リビングウィル
- 医療委任状
- 財産管理委任契約書 など
あらかじめ準備をすることで、トラブルを避け、ご自身の希望の老後を過ごせるようになります。
老後に必要な資金を確保する
老後に必要な資金を確保しましょう。介護サービスや施設への入居には高額な費用がかかる場合があるからです。
子供がいない場合、必要な介護をすべて外部のサービスに頼らなくてはいけなくなり、さらに費用がかかる場合もあります。 生活費や医療費など具体的に見積もったり、社会福祉サービスで利用できるものを調べたりなどできるだけ早い段階から準備をすると安心です。
信頼できる人との「関係構築」を大切にする
信頼できる友人や親族との関係構築を大切にすることが大切です。子供がいなくても、介護が必要なときに友人や親族がこころの支えとなるからです。
定期的に連絡をとったり、近況を報告したりしましょう。連絡先や関係性などをどこかに記載しておくと、なにかあったときにすみやかに連絡が取れる可能性があります。
よくある質問Q&A
Q1 子供のいない夫婦の最後はどうなるの?
一般的に、介護が必要になった段階で、施設に入居します。入居には身元引受人や保証人などが必要な場合があるため、親族に依頼したり、身元保証の会社を利用したりしましょう。
介護や医療に関する希望を、判断力があるうちに作成しておくと安心です。
Q2 身寄りがない老人の老後はどうしたらいいですか?
成年後見人制度の利用を検討しましょう。いざ何かあったときに誰も決断できないと、緊急時の対応が遅れる可能性があります。
健康なうちから、身動きが取れなくなったときや認知症になったときのことを考え、早い段階から対策をとることがおすすめです。
まとめ
老後の準備は、子供がいる・いないに関係なく、自分自身で進めることが大切です。将来に向けたライフプランをしっかりと立て、サポート体制を整えることで、介護が必要になった際も安心して過ごすことができます。
受けられるサービスや介護にかかる費用など、調べてみてくださいね。
「介護は何から進めればいいか分からない」「自分一人での介護は難しそうだ」と不安に感じていませんか?
介護がいざスタートすると家族間・親族間でトラブルに発展するケースは少なくありません。
なるべくトラブルを避けスムーズに介護をスタートさせるには、介護に関する知識を学んでおくのが大切です。
この記事では、親の介護義務の範囲やトラブルを避けるためのポイントをご紹介します。親の介護で悩まれている方のお役に立てれば幸いです。