介護
目次
- 1. 高齢の親が眠ってばかり…「傾眠」とは?
- 2. 「高齢だから」と決めつけず、急な変化かどうかを確認しましょう
- 3. 高齢者が眠ってばかりいるときに考えられる原因
- 3-1. 感染症などで全身状態が悪くなっている
- 3-2. 血圧が低くなっている
- 3-3. 薬の影響
- 3-4. 昼夜逆転・夜に十分眠れていない
- 3-5. 気分の落ち込み・うつ状態
- 3-6. 夜の睡眠の質が低下している
- 4. 眠ってばかりいるとき、家族が確認したいこと
- 5. 「声をかければ起きるから大丈夫」とは限りません
- 6. こんなときは早めに医療機関へ相談しましょう
- 6-1. 緊急性が高い可能性がある変化
- 6-2. 緊急ではなくても相談したい変化
- 7. 昼夜逆転の場合は24時間の生活を見直しましょう
- 8. 寝ている時間が増えることで起こる生活上の変化にも注意
- 9. 家族だけで判断が難しいときの相談先
- 10. よくあるQ&A
- 10-1. 高齢になると寝る時間が増えるのは普通ですか?
- 10-2. 声をかけると起きるなら大丈夫ですか?
- 10-3. 薬のせいで眠そうな場合はどうすればいいですか?
- 10-4. 認知症になると昼間に寝ることが増えますか?
- 10-5. 何科を受診すればいいですか?
- 11. まとめ
専門家の回答
高齢の親が眠ってばかり…「傾眠」とは?

「最近、親が寝てばかりいる」「昼間もウトウトしている」と心配になることがあります。医療や介護の現場では、眠気が強く、刺激がないと眠ってしまうような状態を「傾眠」と表現することがあります。
ただし、昼寝が増えたからといって、すべてが病気による傾眠というわけではありません。夜に十分眠れていない、生活リズムがずれている、活動量が減っているなど、生活上の理由で日中眠くなることもあります。
家族がまず見てほしいのは、睡眠時間そのものよりも「いつもの本人と比べてどう変わったか」です。
「高齢だから」と決めつけず、急な変化かどうかを確認しましょう
半年ほどかけて少しずつ昼寝が増えた場合と、昨日まで普通に起きていた方が今日になってほとんど寝ている場合では、考え方が異なります。
- いつから寝ている時間が増えたか
- 急に変わったのか、徐々に変わったのか
- 呼びかけると目を開け、普段どおり会話できるか
- 食事や水分をとれているか
- 発熱、咳、痰などがないか
- 尿や便の回数・量に変化がないか
- いつものように立ったり歩いたりできるか
- 最近、薬が追加・変更されていないか
訪問看護などで「最近寝ている時間が増えた」という方をみても、その背景はさまざまでした。感染症で全身状態が落ちていた方、血圧が低くなっていた方、昼夜逆転によって日中眠っていた方、気分の落ち込みが強く活動する時間そのものが減っていた方もいます。
同じ「寝てばかり」に見えても原因は一つではないため、眠気以外に何が変わっているかを見ることが大切です。
高齢者が眠ってばかりいるときに考えられる原因
感染症などで全身状態が悪くなっている
高齢者では、感染症があっても分かりやすい症状だけが出るとは限りません。発熱や咳、排尿時の痛みなどに加えて、「元気がない」「食べない」「いつもより寝ている」といった変化がみられることもあります。
家族からは「今日はずっと寝ている」「いつもより元気がない」という話だったものの、状態を確認して受診につながり、感染症が分かったケースもありました。
高熱がないから大丈夫と考えず、普段と比べた活動量や食事量、反応なども一緒に確認します。
尿路感染症や肺炎などでも全身状態が変化することがあります。ただし、眠気だけで感染症と判断することはできません。
血圧が低くなっている
血圧の低下によって、だるさ、ふらつき、めまいなどがみられることがあります。高齢者では体位や食事などによって血圧が変化する場合もあります。
「今日はよく寝ている」「いつもよりぼんやりしている」というときに血圧を測ると、普段より低くなっていたケースもありました。
起きたとき、食後、立ち上がったとき、入浴後、薬を飲んだあとなど、血圧が下がるタイミングもさまざまでした。普段の血圧を把握しておくと変化に気づきやすくなります。
立ち上がったときに血圧が低下する起立性低血圧や、食後に血圧が低下する食後低血圧がみられることもあります。眠気だけでなく、めまい、ふらつき、立っていられない、失神などがないかも確認しましょう。
薬の影響
高齢になると薬の影響が生活上の変化として現れることがあります。最近薬が追加・変更された、飲む時間が変わった、飲み間違いや重複服用があったなど、体調変化との時間的な関係を確認しておきましょう。
薬が原因かもしれないと思っても、家族の判断で中止・減量せず、医師や薬剤師へ相談してください。
昼夜逆転・夜に十分眠れていない
日中ずっと眠っているように見えても、夜間の睡眠状況を確認すると、実は夜に十分眠れていないことがあります。
日中ほとんど寝ているため体調不良を疑ったものの、生活状況を確認すると昼夜逆転していたケースもありました。
日中の様子だけではなく、夜は何時に寝ているのか、夜中に何度起きているのか、トイレへ何度も行っていないかなど、24時間の生活を見ることが大切です。
気分の落ち込み・うつ状態
身体的な原因だけでなく、精神面の変化によって横になっている時間や睡眠時間が増えることもあります。
関わった方の中には、気分の落ち込みが強くなり、以前より横になっている時間が増えていた方もいました。
眠っている時間だけでなく、「以前好きだったことをしなくなった」「人と話さなくなった」「食欲が落ちた」など、生活全体の変化を見ることも大切です。
高齢者のうつでは、睡眠や食欲の変化、疲れやすさ、気力の低下などがみられることがあります。家族だけで「うつ」と判断せず、変化が続く場合は医療機関へ相談しましょう。
夜の睡眠の質が低下している
大きないびき、睡眠中に呼吸が止まる、何度も目が覚めるなどがあり、日中の強い眠気が続く場合は、睡眠時無呼吸症候群など睡眠の病気が関係していることもあります。
眠ってばかりいるとき、家族が確認したいこと
- 名前を呼ぶと目を開け、普段どおり受け答えできるか
- すぐにまた眠ってしまわないか、普段より反応が鈍くないか
- 発熱、息苦しさ、呼吸の速さ、咳・痰などの変化がないか
- 食事量や水分量が急に減っていないか
- 尿量、トイレ回数、便通に変化がないか
- いつも立てる人が立てない、急に歩けないなどの変化がないか
- ふらつきやめまい、片側の手足の動かしにくさがないか
- 普段と比べて血圧が大きく変化していないか
- 最近薬が追加・変更されていないか、飲み間違いがないか
「声をかければ起きるから大丈夫」とは限りません
呼びかけると目を開け、「大丈夫」と答えられる場合でも、それだけで体調に問題がないとは判断できません。
起きたあとすぐ眠ってしまう、食事や水分がほとんど取れていない、いつものように歩けないなど、ほかの変化も合わせて確認しましょう。普段の状態を知っている家族だからこそ、「いつもの眠そうな感じとは違う」という変化が大切な情報になります。
こんなときは早めに医療機関へ相談しましょう
緊急性が高い可能性がある変化
- 強く呼びかけても反応しにくい、意識が明らかにおかしい
- 息苦しい、呼吸の様子が明らかに普段と違う
- 突然ろれつが回らなくなった、顔の左右差や片側の手足の麻痺がある
- けいれんがある
- 突然立てない、歩けないなど急激な状態変化がある
急な意識変化や呼吸異常、脳卒中を疑う症状などがある場合は、様子を見続けず緊急の対応を検討してください。
緊急ではなくても相談したい変化
- 寝ている時間が以前より明らかに増え、その状態が続いている
- 食事や水分をとる量が減っている
- 発熱、咳、痰、尿の変化などがある
- 薬を変更してから眠気が強くなった
- ふらつきや血圧低下を繰り返す
- 気分の落ち込みや意欲低下が続いている
昼夜逆転の場合は24時間の生活を見直しましょう
昼間に寝ているからといって、無理に起こし続ければよいわけではありません。まずは夜に眠れているか、夜間頻尿や痛みがないか、昼間の活動量が極端に少なくなっていないかなどを確認します。
認知症がある方では生活リズムが乱れやすいこともあります。家族だけで調整することが難しい場合は、ケアマネジャーや主治医などへ相談してみましょう。
寝ている時間が増えることで起こる生活上の変化にも注意
寝ている時間が長くなると、食事や水分をとる機会が減ったり、活動量が低下したりすることがあります。その状態が続けば、さらに体力や筋力が落ちて動かなくなるという悪循環につながる場合もあります。
- 食事量・水分摂取量が減る
- 活動量が減る
- 筋力や体力が落ちる
- 日中さらに眠くなり、昼夜逆転が進む
- 家族との会話や外出の機会が減る
家族だけで判断が難しいときの相談先
眠気の原因は一つとは限りません。かかりつけ医、訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど、普段の状態を知っている専門職へ「いつから」「何が変わったか」を伝えて相談しましょう。
よくあるQ&A
高齢になると寝る時間が増えるのは普通ですか?
睡眠のリズムは年齢とともに変化しますが、「急に寝ている時間が増えた」「食事や会話まで減った」など普段と明らかに違う場合は、年齢だけのせいにせず体調や生活状況を確認しましょう。
声をかけると起きるなら大丈夫ですか?
起きるかどうかだけでは判断できません。起きた後の会話、食事、水分、歩行、呼吸、発熱なども普段と比べて確認してください。
薬のせいで眠そうな場合はどうすればいいですか?
薬の追加・変更時期と眠気の変化を記録し、医師や薬剤師へ伝えましょう。自己判断で薬を中止したり量を減らしたりしないでください。
認知症になると昼間に寝ることが増えますか?
認知症のある方では睡眠と覚醒のリズムが乱れることがあります。ただし、急な眠気や反応の変化がある場合は、感染症や薬の影響など別の原因も考えて確認することが大切です。
何科を受診すればいいですか?
まずは普段の状態や持病を把握しているかかりつけ医へ相談する方法があります。急な意識変化、呼吸異常、麻痺などがある場合は、診療科を選んで待つのではなく緊急性を優先してください。
まとめ
高齢の親が寝ている時間が増えたとき、「年齢のせい」と考えてしまうことがあります。しかし、同じ「寝てばかり」という変化でも、感染症、血圧低下、薬の影響、昼夜逆転、気分の落ち込みなど背景はさまざまです。
大切なのは、何時間寝たかだけではなく、「いつもの本人と何が違うか」を見ることです。呼びかけへの反応、食事・水分、呼吸、体温、排泄、歩行、血圧、薬の変更などを確認し、普段と明らかに違う状態が続く場合は医療・介護の専門職へ相談しましょう。
参考
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
高齢になると睡眠のリズムが変化することはありますが、「急に寝ている時間が増えた」「起こしても反応が鈍い」といった変化を年齢だけのせいにしないことも大切です。
感染症や血圧の低下、薬の影響、昼夜逆転、気分の落ち込みなど、さまざまな背景が考えられます。眠っている時間だけで判断せず、いつから変わったのか、食事・水分・会話・歩行・排泄などにも変化がないか確認してみましょう。