介護保険制度
目次
- 1. 床ずれ予防に使う「エアマット」とは?
- 2. エアマットを検討したいのはどんな人?
- 3. エアマットにはいろいろな種類があります
- 4. エアマットは本人の身体や寝姿勢を見て選びましょう
- 5. エアマットは介護保険でレンタルできる?
- 5-1. 要支援1・2、要介護1は原則として対象外
- 6. エアマットをレンタルするまでの流れ
- 6-1. 必要になっても、すぐ使えるとは限りません
- 7. 意外と大変なのが「マットレスの交換」です
- 8. ケアマネジャーだけでなく、訪問看護師や医師へ相談した方がよいこともあります
- 9. 導入した後も「エアマットに任せきり」にしない
- 10. よくあるQ&A
- 10-1. 床ずれができていなくてもエアマットを使えますか?
- 10-2. 要介護1だと絶対にレンタルできませんか?
- 10-3. エアマットなら体位変換しなくていいですか?
- 10-4. 自分でエアマットを選んでもいいですか?
- 10-5. 誰に最初に相談すればいいですか?
- 11. まとめ
専門家の回答
床ずれ予防に使う「エアマット」とは?

エアマットは、内部の空気圧を調整することで身体にかかる圧を分散するマットレスです。床ずれ予防では、身体の一部に圧が集中し続けないようにすることが重要で、エアマットはそのための「体圧分散寝具」の一つとして使われます。
介護保険の「床ずれ防止用具」には、空気圧を調整するエアマットだけでなく、水・エア・ゲル・シリコン・ウレタンなどで作られた全身用マットも含まれます。
そのため、「床ずれ予防=必ずエアマット」と考えるのではなく、本人の身体状態や寝返りの状況に合わせて、適した体圧分散寝具を選ぶことが大切です。
エアマットを検討したいのはどんな人?
日本褥瘡学会では、体圧分散寝具を選ぶ際に、床ずれのリスク、本人の好み、介護環境などを考慮するとしています。特に、自力で体位変換ができない方では、圧切替型エアマットレスの使用が勧められています。
- 自分で寝返りをすることが難しい
- 同じ姿勢で過ごす時間が長い
- すでに皮膚に赤みがある、床ずれがある
- 痩せて骨が突出している
- 浮腫が強く、皮膚状態が不安定
- 家族だけで夜間も頻繁に体位変換することが難しい
訪問看護では、浮腫がかなり強く、皮膚トラブルや床ずれのリスクが高い方にエアマットの導入を検討したこともありました。
「寝たきりだから」という理由だけではなく、本人がどの程度動けるか、皮膚の状態、痩せや浮腫なども含めて必要性を考えていました。
エアマットにはいろいろな種類があります
エアマットには、身体を支える空気の層を一定に保つものや、複数のエアセルの空気圧を順番に変化させて接触する場所を変える「圧切替型」などがあります。
また、エアマット以外にも、ウレタンなどを使って身体を広い面で支える体圧分散マットレスがあります。本人が自分で寝返りできるか、ベッド上でどのように過ごしているか、床ずれのリスクがどの程度あるかによって選び方は変わります。
エアマットは本人の身体や寝姿勢を見て選びましょう
エアマットは、商品名や価格だけで選ぶものではありません。柔らかさや沈み込み方によっては、本人が動きにくくなったり、ベッドから立ち上がりにくくなったりすることもあります。
- 自分で寝返りできるか
- どの部分に圧が集中しているか
- 拘縮や痛みがないか
- 痩せや浮腫がないか
- ベッドから起き上がる・移乗することがあるか
- 本人が寝心地を不快に感じていないか
- 家族が体位変換やおむつ交換をしやすいか
福祉用具の担当者が実際に本人の寝姿勢や身体状態を見て、合うマットを提案してくれたケースもありました。一方で、事業所や担当者によって確認方法や提案の仕方には差がありました。
「エアマットを借りたい」とだけ伝えるよりも、「自分で寝返りできない」「浮腫が強い」「仙骨に赤みがある」など、困っている状態を具体的に伝えると相談しやすくなります。
エアマットは介護保険でレンタルできる?
介護保険の福祉用具貸与には「床ずれ防止用具」が含まれており、対象となるエアマットや体圧分散マットレスをレンタルできる場合があります。
福祉用具貸与を利用した場合、利用者は原則として貸与費用の1割を負担します。一定以上の所得がある方は2割または3割負担です。
要支援1・2、要介護1は原則として対象外
床ずれ防止用具は、要支援1・2、要介護1の方については、介護保険での貸与が原則として対象外となっています。
ただし、身体状態などによっては例外的に給付対象となる場合があります。要介護認定の基本調査結果による判断のほか、市町村が医師の所見やケアマネジメントの判断などを確認したうえで、必要性を認めるケースもあります。
実際に、要介護度だけを見るとそのままでは貸与対象になりにくい方でも、身体状態からエアマットが必要と考えられ、例外的な貸与の手続きを進めたケースがありました。
「要介護1だから借りられない」と家族だけで判断せず、必要性がある場合はケアマネジャーや医師、訪問看護師などへ相談してみましょう。
エアマットをレンタルするまでの流れ
介護保険を使ってエアマットを利用する場合は、一般的にケアマネジャーや福祉用具専門相談員などと相談しながら進めます。
- 本人の皮膚や身体状態を確認する
- ケアマネジャー、訪問看護師、医師などへ相談する
- 福祉用具事業所へ必要な状態を伝える
- 本人に合う床ずれ防止用具を選定する
- 在庫と搬入できる日を確認する
- 現在使用しているマットレスと交換する
- 使用開始後も寝姿勢や皮膚状態を確認する
必要になっても、すぐ使えるとは限りません
エアマットが必要になったとき、福祉用具事業所へ確認すると希望するマットの在庫確認が必要だったこともありました。必要になったその日に必ず用意できるとは限りません。
床ずれリスクが高くなっている場合は、悪化してから慌てて探すのではなく、早めに相談しておくと安心です。
意外と大変なのが「マットレスの交換」です
エアマットを導入するときは、現在ベッドに載っているマットレスを外し、新しいマットへ交換する必要があります。
在宅では、マットレスを交換する作業自体が思った以上に大変なこともありました。寝たきりの方であれば、交換している間に本人が安全に過ごせる場所や、ベッド周辺のスペースも必要になります。
家族だけで無理に交換しようとせず、搬入時にどこまで対応してもらえるのか福祉用具事業所へ確認しておくとよいでしょう。
ケアマネジャーだけでなく、訪問看護師や医師へ相談した方がよいこともあります
介護保険の福祉用具については、ケアマネジャーが大切な相談窓口です。しかし、床ずれのリスクには皮膚状態、浮腫、栄養状態、病気など医療的な要素も関係します。
ケアマネジャーへ相談しても、こちらが感じているエアマットの必要性がうまく伝わらないと感じたこともありました。そのようなときは、訪問看護師や主治医にも皮膚や身体状態を見てもらい、医学的な視点から必要性を共有してもらうことで話が進みやすくなることがあります。
特に、床ずれがすでにできている、浮腫が強い、皮膚状態が急に悪化しているなどの場合は、福祉用具の選定だけでなく、医療的な評価も必要になることがあります。
導入した後も「エアマットに任せきり」にしない
エアマットを使えば、床ずれ対策がすべて終わるわけではありません。使用開始後も、本人の姿勢や皮膚状態、寝心地などを確認します。
- 赤みや傷が新しくできていないか
- 本人が痛みや違和感を訴えていないか
- 身体が沈み込みすぎて動きづらくなっていないか
- 起き上がりやベッドからの移乗が難しくなっていないか
- マットの空気圧や動作に問題がないか
- 停電時や故障時の対応を確認しているか
エアマットを使っていても、必要に応じた体位変換、皮膚の観察、栄養や排泄ケアなどを合わせて行うことが大切です。
よくあるQ&A
床ずれができていなくてもエアマットを使えますか?
床ずれ防止用具は、床ずれができた後だけでなく、床ずれリスクが高い方の予防目的で検討されることがあります。ただし、必要性や介護保険の給付対象となるかは本人の状態によって異なります。
要介護1だと絶対にレンタルできませんか?
要支援1・2、要介護1は原則として給付対象外ですが、身体状態などによっては例外的に介護保険で貸与できる場合があります。必要性がある場合は、ケアマネジャーや医師などへ相談してください。
エアマットなら体位変換しなくていいですか?
エアマットを使っていても、本人の状態によっては体位変換が必要です。体位変換の間隔はマットレスの種類や床ずれリスクなどでも異なるため、訪問看護師などへ相談しましょう。
自分でエアマットを選んでもいいですか?
購入すること自体はできますが、床ずれ予防では「柔らかいものを選べばよい」というわけではありません。本人の寝返り能力や皮膚状態、移乗のしやすさなども関係するため、福祉用具専門相談員や医療・介護職へ相談して選ぶことをおすすめします。
誰に最初に相談すればいいですか?
介護保険を利用している場合はケアマネジャーが相談先の一つです。すでに赤みや床ずれがある、浮腫が強いなど医療的な状態も気になる場合は、訪問看護師や主治医へも相談するとよいでしょう。
まとめ
エアマットは、床ずれ予防のために身体へかかる圧を分散する福祉用具の一つです。ただし、寝たきりの方なら全員に同じエアマットが適しているわけではありません。
本人が自分で寝返りできるか、皮膚の状態、痩せや浮腫、床ずれの有無、介護環境などを見ながら選ぶことが大切です。
また、介護保険では「床ずれ防止用具」としてレンタルできる場合があります。要支援1・2、要介護1では原則として給付対象外ですが、身体状態によっては例外的に対象となる場合があります。
「エアマットが必要かも」と感じたら、商品を先に選ぶのではなく、まず本人の皮膚や寝姿勢を専門職に見てもらいましょう。ケアマネジャーだけでなく、必要に応じて訪問看護師や医師、福祉用具専門相談員とも相談し、本人と家族が続けやすい環境を整えることが大切です。
参考
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
エアマットは、床ずれ予防のために体圧を分散する福祉用具の一つです。ただし、寝たきりだから全員に同じエアマットが必要というわけではありません。
自分で寝返りできるか、皮膚の状態、痩せや浮腫、床ずれの有無、介護する家族の状況などを確認しながら選びます。介護保険でレンタルできる場合もあるため、まずはケアマネジャーや訪問看護師などへ相談してみましょう。