病気・症状
専門家の回答
重曹・クエン酸水を飲めばがんが治る、とは確認されていない

「重曹でがん細胞が死ぬ」「身体をアルカリ性にすればがんが治る」という説明を見ても、それだけで飲み始める根拠にはなりません。Cancer Research UKは、重曹について細胞やマウスでの研究と、人のがん治療に使う根拠を区別しています。自宅で飲む方法を治療として勧められる根拠はありません。1)
クエン酸を混ぜた飲み物についても、重曹だけを用いた実験を、そのまま効果の証明に使うことはできません。成分や混合物、量、使い方が違うためです。「食品として使える」ことは、「がんの治療になる」ことを意味しません。
「アルカリ性になった」という測定結果だけで治療効果は判断できない
血液の酸性・アルカリ性の程度は、身体の働きによって一定の範囲に調節されています。食事で尿のpHが変わる場合があっても、身体全体が同じように変わった証拠にはなりません。尿の試験紙の数字を、がんが治っている指標として使わないでください。2)
「人の身体に必要な成分だから」「医療でも使うから」という説明にも、使う目的と方法の確認が必要です。炭酸水素ナトリウムは医療で用いられることがありますが、医師が状態に合わせて使うことと、自己判断でがんを治そうと飲むことは別です。処方薬に含まれている場合は、この記事を理由に勝手に中止しないでください。3)
親が飲み始めたら、量だけでなく「何の代わりにしているか」を聞く
家に粉や飲み物が増えていても、まず使用目的を確かめます。掃除に使う、調理に使う、病気を治そうと毎日飲む、では話が違います。「何に使っているの?」から入り、飲んでいるなら商品と作り方、頻度を、分かる範囲で医療職へ伝えられるようにします。
| 確認する内容 | 相談につなげたい点 |
|---|---|
| 何を期待しているか | がんの治療、症状の軽減など。見た情報のURLも残す |
| 何を・どの程度飲んだか | 商品表示、混ぜた物、開始日、1回量と回数 |
| 生活や治療の変化 | 食事を減らした、薬を休んだ、予約を取り消したことがないか |
| 体調の変化 | 吐き気、だるさ、むくみなど、いつから何が変わったか |
量がはっきり分からなくても、相談を待つ必要はありません。空き袋や容器、普段使うスプーンなどを示せると、状況を伝える助けになります。この表は家庭で安全な量を決めるためのものではありません。
重曹にはナトリウムが含まれる。持病や薬との関係も確認する
重曹の成分は炭酸水素ナトリウムで、摂取するとナトリウムの摂取量も増えます。高血圧、心不全、腎臓の病気がある方や、塩分を控えるよう指示されている方は、自己判断で飲み続けず医師・薬剤師へ確認してください。食品用の表示があっても、量や身体の状態を問わず安全とはいえません。3)
飲み始めて吐き気や強いだるさ、むくみなどが出たら、「よくなる途中の反応」と決めて飲み続けず、医療機関へ連絡します。反応が悪い、呼吸が苦しい、けいれんしている場合は119番です。症状の原因が重曹かどうかを確かめ終えるまで待たないでください。3)5)
治療がつらい気持ちと、その方法の効果を分けて話す
がんの治療がつらい、検査結果が心配、ほかにもできることがほしい。そうした気持ちから探しているなら、「何かできることを探したくなるよね」と気持ちを受け止める言い方はできます。一方で、確かめていない効果まで肯定する必要はありません。
会話の例としては、「今の治療の何が一番つらい?」「それをやめる前に、つらさを減らす方法があるか相談したい」と、本人の困りごとへ戻します。うまい言い方を探せば必ず納得してもらえるわけではなく、話すほど対立する日は、議論を区切っても構いません。
健康食品や食事療法への期待から、受けている治療を中断すると、治療の機会を逃すおそれがあります。すでに中断を考えている、食事が極端に減ったなどの場合は、情報の真偽の議論だけで終わらせず、治療先へ具体的な状況を伝えてください。4)
本人が話すことを嫌がるなら、家族だけでがん相談支援センターなどに困りごとを相談する方法もあります。「何を飲んでいるか聞くと怒る」「病院へ行かないと言う」と、そのまま伝えて大丈夫です。家族が代わりに治療方針を決めるためではなく、関わり方や相談の段取りを考えるために使います。
勧められる家族も、飲む・買うことを引き受けなくてよい
親が家族の健康を願って勧める場合もあります。その気持ちを受け止めつつ、「私は飲まない」「購入は手伝わない」と伝えて構いません。断るたびに根拠を一から説明する必要はなく、自分の判断として伝える方法があります。
飲むかどうかで食卓が毎回もめるなら、話し合いの時間を区切る、一緒に飲むことと普段の食事を別にするなど、家族自身の生活も守ります。できる範囲で商品や体調の情報を共有し、治療や食事への影響が出ていれば医療職と相談してください。
よくある質問
食品用なら、少量を毎日飲むのは大丈夫ですか?
一律に安全な量は示せません。持病、薬、食事全体、使う目的によって確認が必要です。がんを治す目的の飲用は勧められません。
クエン酸を混ぜれば、がんへの効果が高まりますか?
そう判断できる根拠は確認できません。混ぜたときの化学反応や、別の条件で行った研究は、その飲み物が人のがんを治す証明ではありません。
出典・参考資料
- Cancer Research UK「7 common cancer myths, unpicked」重曹とがんの項
- Cancer Research UK「Alternative cancer diets」アルカリ性食事の項
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus「Sodium Bicarbonate」
- 国立がん研究センター「がんと民間療法(健康食品・サプリメント・食事療法を中心に)」
- 政府広報オンライン「もしものときの救急車の利用法」
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
重曹・クエン酸水を飲むことで、がんが治るとは確認されていません。食品用でも、持病や摂取量を問わず安全という意味ではありません。商品と飲んだ量、治療や食事を変えていないかを確認し、治療先へ相談してください。本人の期待を聞きながらも、効果まで同意する必要はありません。