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専門家の回答
「同じ施設」と「同じ部屋」を分けて考える

二人が同じ施設で暮らす方法にも、一つの部屋に入る方法と、それぞれの個室を使う方法があります。たとえばベネッセスタイルケアの公式FAQには、空室状況によって定員2名の居室や隣同士の居室を用意できる場合があると案内されています。すべての施設で同じ対応になるわけではありません。1)
「一緒にいたい」という希望も、同じ部屋で眠りたいのか、毎日会えればよいのかで探し方が変わります。父と母それぞれに聞き、慣れた生活や休み方も含めて相談してみてください。本人が考えやすいように写真を見せたり、選択肢を少しずつ伝えたりする方法もあります。3)
| 二人部屋 | 二人分の介護ベッドや移動の空間を確保できるか。夜間のケアや睡眠への影響をどう調整するか |
|---|---|
| 同じ施設の別室 | 同時に二室確保できるか。部屋の距離、食事や面会で一緒に過ごせる時間はどうか |
| 片方が先に入居 | もう一方の入居を待つ間の支援と費用はどうか。後から同じ施設へ入れる保証があるのか |
部屋の空きと、必要な介護を受けられることは別に確認します。「二人部屋がある」という情報だけで契約を急ぐ必要はありません。
夫婦で一緒の施設や部屋に入りたいと希望する方には、多く関わってきました。ただ、介護度や空き部屋の関係で、希望どおりにするのが難しいケースも多くありました。
希望に合う部屋が見つかるまで、今の生活をどのように支えるかも並行して相談しましょう。同じ施設の別室も候補にするか、入居時期がずれるならその間の支援をどうするかなど、本人たちが受け入れられる範囲を確認します。
父と母の受入れ条件を、一人ずつ確認する
施設には種類があり、要介護度などの利用条件も異なります。夫婦の一方が条件を満たしていても、もう一方が同じ条件とは限りません。要介護認定の結果や現在利用しているサービスを、それぞれ分けて伝えます。5)
「二人とも認知症です」だけでなく、歩行、食事、排せつ、服薬、夜間の過ごし方など、どの場面でどんな支援が必要かを施設へ説明します。医療的な処置や継続中の通院がある場合も、受入れ担当者に具体的に確認してください。
夫婦同室であっても、片方がもう一方の介護を担うことを前提にしないでください。「夜に父が起きたら、母ではなく誰が対応するか」など、実際の場面を挙げて聞くと、入居後の生活を想像しやすくなります。
費用は「一室いくら」ではなく、二人分の総額で見る
有料老人ホームの標準指導指針では、費用とサービスの内容、契約解除の条件などを契約書で明示することが示されています。パンフレットの月額だけで決めず、重要事項説明書と契約書を受け取り、二人が利用する場合の見積もりを確認しましょう。2)
| 居室にかかる費用 | 二人部屋の家賃・管理費など。二人入居と一人入居で料金が変わるか |
|---|---|
| 一人ずつかかる費用 | 食費、介護サービスの自己負担、医療費、日用品など。何が月額に含まれるか |
| 必要時の追加費用 | 通院の付き添い、個別の対応など。条件と単価、家族が行う部分 |
| 入居時・契約終了時 | 前払金や敷金の有無、返還・精算の方法。片方だけ契約を終える場合の扱い |
二人部屋なら一人分の料金で暮らせる、とは限りません。一方の介護が増えた場合や別室へ移る場合の費用も聞いておくと、今の見積もりと将来の負担を区別できます。施設が費用を示す際の前提条件も、一緒に残しておきましょう。
片方の入院・退去で、もう一方はどう暮らすか
二人で入れた後も、病気や介護の状態によって、片方が長期入院したり部屋を移ったりする可能性があります。残る方が同じ部屋に住めるか、家賃や管理費は変わるか、別室へ移るなら誰とどう相談するかを契約前に確認します。2)
一人が亡くなった場合の契約や居室の扱いも、落ち着いて聞けるときに確かめて構いません。費用の説明と合わせて、残された方の生活を誰が支えるか、家族や医療機関とどう連絡するかまで聞いておくと具体的です。
別々の施設になった場合も、会う機会をどう保つか考えられます。距離だけでなく、移動への付き添い、体調、面会の条件を確認し、二人に負担の少ない方法を探します。「同じ部屋に入れないから、一緒に過ごせなくなる」とすぐに決める必要はありません。
見学は「二人の一日」を聞く機会にする
見学では部屋だけを見て終わらず、朝の起床、食事、日中の活動、夜間まで、父母それぞれがどう過ごすかを尋ねてください。片方は静かに休みたい、もう一方は活動に参加したいなど、過ごし方が違う場合の対応も確認できます。
本人が見学して何を安心と感じ、何を嫌がったかも残します。認知症があることだけを理由に本人の希望を聞く機会を省かず、家族と施設の職員で、伝わりやすい説明や確認の方法を工夫しましょう。3)
今の暮らしが難しく、施設探しの間も支援が必要なら、担当ケアマネジャーや地域包括支援センターへ同時に相談します。「夫婦で入れる空きが出るまで家族だけで頑張る」と抱え込まないでください。4)
まとめ:一緒に暮らせる条件を、二人分で確かめる
夫婦での入居を考えたら、同室か別室か、二人が希望する過ごし方、必要な介護、二人分の総額を整理します。片方の状態が変わったときの居室・契約・支援も先に確認し、二人が暮らしを続けやすい選択肢を探していきましょう。
参考
- ベネッセスタイルケア「夫婦で入居したいのですが可能ですか。また同室/別々は選択可能でしょうか」
- 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」
- 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム:地域包括支援センターについて」
- 厚生労働省「介護保険制度について・介護サービスの利用のしかた」
情報確認日:2026年9月22日
コメント・追加情報の確認日:2026年9月28日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
夫婦で同じ施設へ入居できる場合はありますが、二人とも受入れ条件に合うか、必要な部屋や介護体制を確保できるかの確認が必要です。「同じ施設」と「同じ部屋」を分け、父母それぞれの希望・介護内容・費用を確かめましょう。