お金のこと
専門家の回答
まず、請求のうち「保険診療」を分ける

対象は、健康保険が適用される診察、検査、治療などの自己負担です。差額ベッド代や入院中の食事の標準負担額、日用品などは分けて考えます。「請求書が10万円だから、全額を計算に入れる」とはできません。1)3)
また、医療費控除は所得税等の計算に関わる別の制度です。高額療養費の申請先は税務署ではなく、協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険・後期高齢者医療制度など、親が加入する医療保険の窓口です。4)
上限を見る前に、診療月・年齢・所得区分をそろえる
原則として暦月ごとに計算します。9月下旬から10月上旬まで入院すると、同じ入院でも9月と10月に分かれます。請求書を受け取った日だけでなく、いつの診療分かを見てください。3)
上限は年齢や所得で異なり、70歳以上では外来の個人単位の計算と、世帯での計算もあります。同じ家に住む家族の支払いを何でも合算できるわけではなく、加入する医療保険などの条件を確認します。年金の振込額だけから、家族が所得区分を決めないようにしましょう。3)
2026年8月以降の制度で確認する
2026年8月診療分から月額上限の見直しと年間上限の新設が行われています。2026年7月までの金額や、2027年8月以降の表を、そのまま現在の支払いに当てはめないでください。1)
例えば、2026年8月〜2027年7月の70歳以上の一般区分では、外来の個人上限は月22,000円、外来・入院を合わせた世帯の月額上限は61,500円です。現役並み所得者や住民税非課税世帯は別の区分になり、多数回該当などによっても扱いが変わります。これはすべての高齢者に共通する金額ではありません。2)
長期の療養では、直近12か月に一定回数該当した場合の「多数回該当」と、8月から翌年7月までを単位とする年間上限も確認します。年間上限は月々の病院の請求が自動で止まると決めつけず、還付の手続きや保険変更時の扱いを保険者へ聞いてください。1)
これから払う場合と、すでに払った場合で進め方が違う
| 状況 | 最初に聞くこと |
|---|---|
| これから入院・支払いをする | 限度額情報を使って、窓口での支払いを上限までに抑えられるか |
| すでに支払いが済んだ | 高額療養費の対象月・申請方法・必要書類・振込までの見通し |
| 複数の病院や薬局へ支払った | 合算して申請が必要か、対象となる支払いはどれか |
対応する医療機関では、マイナ保険証による限度額情報の確認などで、事前に認定証を用意せず窓口負担を抑えられる場合があります。使えるかどうかは入院前に病院へ確認し、利用できない場合は加入保険へ必要な手続きを聞きます。1)
窓口負担を抑えられても、複数の医療機関分を合算するなど、後から申請する部分が残る場合があります。「マイナ保険証を使ったから手続きはすべて完了」とは考えず確認しましょう。
申請しないと使えない?初回・窓口・払い戻しを分けて確認する
「毎回申請が必要」「何もしなくても必ず戻る」のどちらとも一律にはいえません。窓口で限度額までに抑える手続きと、支払い後に払い戻しを受ける手続きは分けて確認します。
例えば協会けんぽでは、対応する医療機関でマイナ保険証を利用する場合、限度額適用認定証の事前申請が不要な場合があります。ただし、低所得者に該当する場合は、マイナ保険証を使っていても減額認定の申請が必要と案内されています。親の所得区分と加入保険の案内を確かめてください。5)
払い戻しについても、初回の申請後は次回以降の申請が不要になる保険者があります。東京都の後期高齢者医療制度では、初めて対象になる方へ申請書を送り、初回の申請後は原則として登録口座へ振り込む運用です。これは東京都の例であり、すべての保険に共通する扱いではありません。6)
保険者には「初めて使うのか」「すでに口座登録や申請をしたことがあるのか」「今回、窓口の支払い以外に合算や払い戻しの申請が必要か」を聞きましょう。案内が届いたら、通知だけなのか、返送や申請が必要なのかも確認してください。
家族が相談するときに手元へ置くもの
- 親の加入する医療保険が分かるもの
- 診療月が分かる領収書・明細書、病院・薬局の一覧
- 入院予定期間と、病院から受け取った概算
- すでに申請や支給を受けた月、途中で保険が変わったか
- 家族が手続きを代わる場合に必要な委任・本人確認の書類
申請書類や代理手続きは保険者によって違います。書類を集め終えるまで相談を待つ必要はありません。「親の○月の医療費について、限度額の区分と申請が必要かを確認したい」と伝えると、最初の相談を始めやすくなります。
支払日に間に合わない不安は、先に病院へ伝える
支給までには時間がかかることがあります。還付予定額を当てにして家族が無理に立て替える前に、病院の会計や医療相談室へ支払期限と支払い方法を相談してください。制度の対象となるかを調べることと、直近の支払いを調整することは並行して進められます。
大切なのは、ネット上の上限額だけで安心せず、親の条件で対象になる部分と別に必要な費用を分けることです。制度の見直しが続くため、実際に診療を受ける時点の案内を確認しましょう。
支払いだけでなく退院後の暮らしも不安な場合は、病院の相談窓口の使い方を確認できます。
病院から“退院してください”と告げられたときの対応|地域包括支援センター・MSWに相談する方法
出典・参考資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」令和8年8月〜令和9年7月の表
- 厚生労働省「高額療養費制度に関する参考資料」
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
- 協会けんぽ「限度額適用認定証」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「高額療養費」
情報確認日:2026年9月30日。
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
高額療養費は、保険診療の自己負担が定められた上限を超えた場合に、その超えた分が支給される制度です。入院の請求すべてを一定額にする制度ではありません。親が加入する医療保険、年齢・所得区分、診療を受けた月を確認し、保険者と病院の窓口へ相談しましょう。