病院・施設
目次
- 1. 急に退院を告げられたら、まず病院の相談窓口へ
- 1-1. 「退院できない」と病院に伝えても大丈夫
- 2. 退院を急に告げられるケースとは?
- 2-1. 病院ごとに役割が異なる
- 2-2. 回復期リハビリテーション病棟へ転院するケースもある
- 2-3. リハビリ病院に入院すれば「元通り」になるとは限らない
- 3. 相談すべきはメディカルソーシャルワーカー(MSW)
- 3-1. MSWの役割とできること
- 4. 退院に向けて介護保険などの手続きを確認する
- 4-1. 介護保険
- 4-2. 障害者手帳などの制度
- 5. 地域包括支援センターにも相談できる
- 5-1. ケアマネジャーによる退院後の生活支援
- 5-2. 在宅介護サービスやショートステイの検討
- 5-3. 訪問看護は重症の人だけが利用するものではない
- 6. 退院後に困らないための準備ポイント
- 6-1. 「自立」と聞いていても、自宅では介助が必要なこともある
- 6-2. 介護サービスの利用開始までの流れ
- 6-3. 家庭環境の調整(手すり、ベッドなど)
- 6-4. 家族が知っておきたい自治体独自の支援制度
- 7. よくあるQ&A
- 7-1. 家では介護できないと病院に伝えてもいい?
- 7-2. 介護保険は退院してから申請すればいい?
- 7-3. ケアマネジャーは自分で探さないといけない?
- 7-4. 訪問看護は重症の人しか利用できない?
- 7-5. まだ自宅で介護できない場合はどうすればいい?
- 7-6. 相談先は病院と地域包括支援センター、どちらが先?
- 7-7. 退院後の費用はどれくらいかかる?
- 8. まとめ
- 8-1. 急な退院を告げられたら、まず相談先を確認しましょう
- 8-2. 「元気だった頃」ではなく、今できることを確認する
- 8-3. MSW・地域包括支援センターを活用して退院後の生活を整える
専門家の回答
急に退院を告げられたら、まず病院の相談窓口へ

基本的には、退院後の生活を見据えた準備を進めた上で退院します。
そのため病院には、地域医療連携室や患者相談窓口など、退院後の生活を支援する部署が設けられている場合があります。
また、メディカルソーシャルワーカー(MSW)が、退院後の生活や介護サービス、転院先、費用面などについて相談を受けています。
「自宅では介護できない」「家族が日中不在になる」など、退院後の生活に不安がある場合は、そのまま相談して構いません。
退院が決まってから慌てるよりも、入院中の早い段階から相談を始めておくと準備を進めやすくなります。
- 日中は家族が仕事で不在になる
- 一人でトイレや入浴ができない
- 食事や服薬の管理が難しい
- 認知症があり、一人にしておくことが難しい
- 自宅に段差が多く、今の身体状況では生活が難しい
- 介護保険をまだ申請していない
- 施設への入所や転院も検討したい
- 家族だけでは介護を続けることが難しい
「退院できない」と病院に伝えても大丈夫
病棟でご家族とお話ししていると、「病院から退院と言われたら断れない」「家で介護できないなんて言ってはいけない」と思っている方もいました。
特に急性期では、入院してから比較的早い時期に退院や転院の話が始まることもあり、ご家族の気持ちや準備が追いついていないことがあります。
ただ、「家族が仕事で不在になる」「入浴の介助ができない」「認知症があり一人にすることが難しい」などは、退院後の生活を考える上で重要な情報です。
無理に「できます」と答えるのではなく、難しいことは具体的に伝えてください。
退院を急に告げられるケースとは?
病院では、治療が終了したり病状が安定したりすると、退院や転院についての話が進みます。
特に急性期病院は、病気やけがの治療を行うことが主な役割です。状態が安定した後は、自宅への退院や、リハビリを行う病院・施設などへの移行を検討します。
病院ごとに役割が異なる
一口に病院といっても、急性期の治療を行う病院、リハビリを中心に行う病院、長期療養を支える病院など役割は異なります。
そのため、病状が安定すると「治療は終わったので退院を考えましょう」「リハビリを続けるため転院を考えましょう」と説明されることがあります。
「まだ家では介護できない」と感じた場合でも、まずは退院後にどのような支援が必要なのかを整理することが重要です。
病院の退院支援担当者やMSWに相談し、在宅生活、転院、施設入所などの選択肢を一緒に検討しましょう。
回復期リハビリテーション病棟へ転院するケースもある
急性期の治療を終えても、すぐに自宅へ戻ることが難しい場合には、回復期リハビリテーション病棟などへ転院するケースがあります。
回復期リハビリテーション病棟では、対象となる病気やけがの種類によって入院できる期間の上限が設定されています。
実際に対象となるか、どのくらいの期間入院できるかは病気や状態によって異なるため、主治医やMSWへ確認しましょう。
リハビリ病院に入院すれば「元通り」になるとは限らない
私がリハビリテーション病院で勤務していたとき、ご家族から「リハビリ病院に入院したから、元気になって帰ってこられると思っていた」と言われることがありました。
ご家族はどうしても、病気やけがをする前の元気だった状態を基準に考えてしまいがちです。
しかし、リハビリは病気やけがによって身体機能が低下した状態から、どこまで回復できるかを考えながら進めていきます。
そのため、ご家族が「ここまで元気になって帰ってくるだろう」と考えていた状態と、実際の退院時の状態に差が出ることがあります。
退院が近づいたら、「入院前と比べてどうか」だけでなく、「今、一人でできることは何か」「どこに介助が必要なのか」を具体的に確認しておきましょう。
相談すべきはメディカルソーシャルワーカー(MSW)
入院中の退院支援や生活面の相談役となるのが、メディカルソーシャルワーカー(MSW)です。
病院によっては「医療相談室」「患者サポートセンター」「地域医療連携室」などの名称の部署に在籍しています。
MSWの役割とできること
メディカルソーシャルワーカーは、入院中の生活だけでなく、退院後の療養生活や介護サービス、転院先、施設、医療費や福祉制度などについて相談を受けています。
不安なことがあれば、退院が決まる前から相談しておきましょう。
病院の体制によって相談窓口や支援内容は異なります。
MSWがいない場合や、地域の介護サービスについて詳しく知りたい場合には、地域包括支援センターへ相談する方法もあります。
メディカルソーシャルワーカーへの相談内容
- 入院費や退院後の費用について知りたい
- 他の病院や施設について知りたい
- 退院後、自宅で生活できるか不安がある
- 家族だけでは介護することが難しい
- 介護保険制度や介護サービスについて知りたい
- 利用できる医療・福祉制度について相談したい
- 障害者手帳や障害年金など、対象となる制度があるか知りたい
退院に向けて介護保険などの手続きを確認する
退院後に介護が必要になる場合には、入院中から介護保険の申請やサービス利用の準備を進めることがあります。
必要な制度はご本人の年齢や病気、身体状況によって異なるため、MSWや地域包括支援センターへ相談しながら確認していきましょう。
介護保険
退院後の在宅生活では、訪問介護、通所介護(デイサービス)、ショートステイ、福祉用具のレンタルなどの介護保険サービスを利用できる場合があります。
介護保険サービスを利用するためには、原則として要介護・要支援認定の申請が必要です。
申請から認定結果の通知までは原則30日以内とされています。
退院してから介護保険の申請をすればいいと思っているご家族も少なくありませんでした。
しかし、申請後には認定やサービスの調整なども必要になるため、退院後に介護が必要になりそうな場合は入院中から相談しておくと安心です。
障害者手帳などの制度
病気や障害の状態によっては、身体障害者手帳などの制度を利用できる場合があります。
障害者手帳は退院する方全員が申請するものではなく、障害の種類や程度など一定の基準を満たした場合に対象となります。
利用できる制度があるか分からない場合は、MSWや自治体の障害福祉担当窓口へ相談しましょう。
地域包括支援センターにも相談できる
ケアマネジャーによる退院後の生活支援
病院ではMSWなどが退院支援を行いますが、退院後の在宅生活ではケアマネジャーが中心となって介護サービスの調整を行います。
「ケアマネジャーは自分で一から探さなければならないの?」と聞かれることもよくありました。
ケアマネジャーがまだ決まっていない場合には、病院のMSWや、お住まいの地域の地域包括支援センターへ相談できます。
地域包括支援センターでは、高齢者の介護や生活に関する相談を受け付けています。
介護保険の申請方法や利用できるサービス、今後どこへ相談すればよいかなども確認できます。
在宅介護サービスやショートステイの検討
介護保険には、在宅生活を支えるさまざまなサービスがあります。
入浴や食事、レクリエーションなどを提供する通所介護(デイサービス)、自宅を訪問して介護を行う訪問介護(ホームヘルプ)、一時的に施設へ宿泊するショートステイなどがあります。
病棟や訪問看護でご家族とお話ししていると、「家族なんだから自分たちで介護しないといけない」と考えている方も少なくありませんでした。
しかし、退院後の介護をすべて家族だけで行う必要はありません。
実際に生活が始まると、食事、排泄、入浴、服薬、通院など、想像していた以上に介助が必要になることもあります。
家族が健康で長く介護を続けることも、在宅生活では重要です。
「家族ができること」「難しいこと」を整理し、ケアマネジャーと相談しながら必要なサービスを利用しましょう。
訪問看護は重症の人だけが利用するものではない
「訪問看護は寝たきりの方や、重い病気の方が使うものですよね?」と聞かれることもありました。
訪問看護では、病状の観察や医療処置だけでなく、服薬の確認、療養生活についての相談、リハビリ、介護するご家族への支援なども行います。
退院したばかりで自宅での生活に不安がある場合にも、状態や必要性に応じて利用を検討することがあります。
利用できるかどうかや、医療保険・介護保険のどちらを使用するかは、ご本人の状態などによって異なります。
必要と思われる場合は、主治医やケアマネジャー、MSWへ相談してみましょう。
退院後に困らないための準備ポイント
「自立」と聞いていても、自宅では介助が必要なこともある
私が訪問看護で関わった方の中には、退院前のカンファレンスでは「自立している」と聞いていたものの、自宅に戻ってみると入浴などに軽い介助が必要だったケースがありました。
また、看護サマリーなどから想定していたよりも、実際に訪問してみると介護量が多かったということもあります。
病院ではスタッフが近くにいて、必要なときに手助けを受けられます。
一方、自宅では家の広さや段差、浴室の構造など環境も大きく変わります。病院内でできていることが、そのまま自宅でもできるとは限りません。
退院前には「歩ける」「食事ができる」だけでなく、次のような生活動作について、どの程度一人でできるのか確認しておくとよいでしょう。
- ベッドや布団から一人で起きられるか
- トイレまで移動し、排泄できるか
- 入浴時にどの程度の介助が必要か
- 一人で着替えられるか
- 食事や水分を自分でとれるか
- 薬を自分で管理できるか
- 自宅内の段差や階段を安全に移動できるか
介護サービスの利用開始までの流れ
介護保険サービスの利用を検討する場合は、まず要介護認定の申請を行います。
申請後、認定調査や主治医意見書などをもとに要介護認定が行われ、要支援1・2、要介護1〜5などの結果が通知されます。
認定後は、ご本人の状態や認定区分に応じてケアプランを作成し、利用するサービスや事業所を決めていきます。
退院日との兼ね合いもあるため、入院中から病院の相談員や地域包括支援センターへ相談しておきましょう。
家庭環境の調整(手すり、ベッドなど)
在宅生活を始める前には、自宅の環境も確認しておきましょう。
入院前には問題なく生活できていた家でも、歩行や立ち上がりが難しくなると、段差や浴室、トイレなどが危険になることがあります。
介護保険では、状態などに応じて福祉用具貸与や住宅改修を利用できる場合があります。
車いすや介護ベッド、手すりなどが必要かどうかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などと相談しながら決めましょう。
家族が知っておきたい自治体独自の支援制度
介護保険以外にも、自治体独自の高齢者向け支援制度が用意されていることがあります。
例えば、緊急通報サービス、配食サービス、紙おむつ費用の助成、移送支援などです。
対象となる条件や内容は自治体によって異なるため、地域包括支援センターや自治体の高齢者福祉担当窓口へ確認しましょう。
自治体で行われている支援の例
| 支援制度の例 | 内容 |
|---|---|
| 配食サービス | 食事の提供や安否確認など |
| 緊急通報サービス | 緊急時に通報できる機器などを設置 |
| 紙おむつ等の助成 | 紙おむつ購入費などを助成 |
| 移送サービス | 通院などの移動を支援 |
※制度の名称、対象者、支援内容は自治体によって異なります。
よくあるQ&A
家では介護できないと病院に伝えてもいい?
伝えて問題ありません。
家族が仕事で不在になる、入浴や排泄の介助が難しい、認知症があり一人にできないなど、退院後に困ることは具体的に伝えましょう。
「家族だから何とかします」と無理をしてしまうと、退院後にご本人もご家族も困ってしまうことがあります。
できることと難しいことを伝えた上で、必要な支援を相談してください。
介護保険は退院してから申請すればいい?
退院後に介護サービスが必要になりそうであれば、入院中から相談しておくことをおすすめします。
申請してすぐにすべてのサービス利用準備が完了するわけではないため、退院時期が分かったらMSWや地域包括支援センターへ相談してみましょう。
ケアマネジャーは自分で探さないといけない?
すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、入院や退院予定について連絡しましょう。
初めて介護保険を利用する場合など、誰に相談すればよいか分からないときは、病院のMSWや地域包括支援センターへ相談できます。
訪問看護は重症の人しか利用できない?
訪問看護は重症の方だけを対象としたサービスではありません。
病状の観察、服薬の確認、医療処置、リハビリ、療養生活についての相談、ご家族への支援など、必要に応じてさまざまな目的で利用されます。
退院直後の生活に不安がある場合なども、まず主治医やケアマネジャー、MSWへ相談してみましょう。
まだ自宅で介護できない場合はどうすればいい?
「家族だけでは介護できない」「自宅の準備ができていない」などの事情がある場合は、まず病院のMSWや退院支援担当者へ具体的に伝えましょう。
ご本人の状態によっては、回復期リハビリテーション病棟などへの転院、施設への入所、在宅サービスの導入などを検討できる場合があります。
相談先は病院と地域包括支援センター、どちらが先?
入院中であれば、まず病院の相談窓口やMSWへ相談するとよいでしょう。
ご本人の病状や退院予定を把握しているため、その後の支援につなげてもらいやすくなります。
一方、病院に相談窓口がない場合や、介護について直接相談したい場合には、ご家族から地域包括支援センターへ相談しても問題ありません。
退院後の費用はどれくらいかかる?
入院費や退院後の介護費用は、ご本人の所得、医療費の自己負担割合、要介護度、利用する介護サービスなどによって大きく異なります。
医療費については高額療養費制度、介護サービスについては介護保険制度などを利用できる場合があります。
費用に不安がある場合も、MSWや自治体の窓口へ相談してみましょう。
まとめ
急な退院を告げられたら、まず相談先を確認しましょう
病院から退院の話が出ると、「まだ家では介護できない」「何から準備すればいいか分からない」と不安になることもあるでしょう。
そんなときは家族だけで考えず、まず病院のメディカルソーシャルワーカーや退院支援担当者へ相談しましょう。
退院時期が分かった段階から準備を始めることで、必要な介護サービスや住環境の調整を進めやすくなります。
「元気だった頃」ではなく、今できることを確認する
特にリハビリ後の退院では、ご家族が想像していた状態と実際の状態に差が出ることがあります。
「入院前はできていたから」ではなく、退院時点で何ができて、どこに介助が必要なのかを具体的に確認しておくことが重要です。
また、病院から聞いていた情報と、自宅で実際に生活してみたときの状態が異なることもあります。
退院後に困ったときも、家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや訪問看護師などに相談してください。
MSW・地域包括支援センターを活用して退院後の生活を整える
退院後の生活については、MSWだけでなく地域包括支援センターやケアマネジャーなど、相談できる専門職がいます。
自宅で介護するのか、介護サービスを利用するのか、施設や転院を検討するのかは、ご本人の状態やご家族の状況によって異なります。
「家族だから自分たちで何とかしなければ」と考えすぎず、利用できる支援を確認しながら退院後の生活を整えていきましょう。
参考
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
この記事は、高齢のご家族が退院する準備をお手伝いするものです。
入院準備に苦労され、落ち着いた頃には今度は退院の準備を進めなければなりません。
病院から思っていたより早く退院の話が出て、「このまま自宅に帰って大丈夫なの?」と不安になることもあると思います。
そんなときは家族だけで抱え込まず、まず病院の相談窓口へ相談しましょう。