リハビリ・介護予防
専門家の回答
高齢者は「のどが渇かない」って本当?

高齢者は加齢により、のどの渇きを感じにくいです。そのため、水分を積極的にとらなくなる傾向があります。
1日に必要な飲み物からの水分摂取量は、約1.2リットルが目安です。
水分を十分に摂取できないと、排尿や発汗などで体から出ていく水分量のほうが多くなります。
結果的に、脱水や熱中症になるリスクが高まります。
脱水や熱中症は、命に関わる危険な状態です。
症状が出てから対処するのではなく、こまめに水分補給を促して予防するのが大切です。
高齢者が水を飲みたがらない主な理由
高齢者が水を飲みたがらない主な理由は、前述した加齢によるのどの渇きの感じにくさだけではありません。
他に、以下の3つが考えられます。
- トイレが近くなるため控えている
- 誤嚥やむせの不安がある
- 「水はおいしくない・必要ない」と思い込んでいる
なお、認知症の影響で水を飲みたがらない場合もあります。
認知症の症状が進むと判断力が低下し、自分が水分を必要としているのか認識しづらくなります。
さらに、何を飲めばよいのか、どのように飲めばよいのかがわからなくなっていることもあるでしょう。
脱水と熱中症のリスクとは?見逃しやすい初期症状
高齢者の水分摂取量が不足すると、脱水や熱中症になる可能性が高まります。
脱水と熱中症は夏に起こるイメージがありますが、以下の理由から冬にも起こりえます。
- 冬は夏に比べて水分摂取量が減少する
- エアコンで空気が乾燥し、体の水分が失われやすい
そのため、季節に関わらず、脱水や熱中症の初期症状が出ていないか注意して観察する必要があります。
異常をすぐに発見できるよう、それぞれの初期症状を見ていきましょう。
脱水の初期症状
脱水の主な初期症状は、以下の5つです。
- 口内や舌、皮膚などが乾いている
- 脈が通常よりも速くなっている
- 食欲が低下している
- 尿の量が減ったり色が濃かったりする
- ぼんやりしている
初期症状が出ており脱水が疑わしい場合は、以下の方法を試してみましょう。
- 手の甲の皮膚をつまんでみて、もとに戻るまでに2秒以上かかるか確認する
- 手の親指の爪をつまんでみて、赤みがもとに戻るまでに3秒以上かかるか確認する
本来なら汗で湿っているはずの脇の下が乾燥している場合も、脱水の可能性があります。
熱中症の初期症状
熱中症の主な初期症状は、以下のとおりです。
- 体がだるい
- 立ちくらみやめまいがする
- 手足がつる
- 吐き気がする
- 汗が止まらない、あるいは汗が出ない
熱中症が疑われる場合は、エアコンが効いている涼しい室内や風通しのよい日陰などに移動させます。
衣服を緩めて、首の周りや脇の下、太ももの付け根を保冷剤や氷枕などで冷やしましょう。
さらに、水分や塩分の摂取を促します。
もし自力で水が飲めなかったり、意識がもうろうとしたりしているときは、迷わず救急車を呼びましょう。
水を飲んでもらうための工夫・アイデア集
ここからは、高齢者に水を飲んでもらうための工夫やアイデアを4つご紹介します。
声かけ・タイミングを変える
声かけを変えると、高齢者が水を飲むことを受け入れやすくなる可能性があります。
例えば「今飲まなきゃダメ」と伝えるより「お茶の時間にしようか」と誘うほうが、印象がよくなります。
また、起床時や間食時、入浴前後など習慣化しやすい時間に水分補給を促すのも効果的です。
水を飲むタイミングを細かく分けることで、高齢者も無理なく必要な水分量を摂取しやすくなります。
飲みやすさを工夫する
高齢者が安心して水を飲めるよう、温度や形状を工夫してみましょう。
人によって好みの温度が違うため、常温やぬるま湯など、希望に合った水を出すと飲んでもらえる可能性が高まります。
また、水分が飲み込みにくい方やむせるのが不安な方は、とろみがついた水なら飲みやすいでしょう。
なお、水の飲みやすさはコップやストローなど使う道具によっても変わります。
腕や手の力が弱くコップを傾けて飲むのが難しい方は、ストローを使うと飲みやすくなります。
寝たきりの方を介助する場合は、吸い飲みの活用も検討しましょう。
水以外でもOK!水分がとれる飲食物を取り入れる
水分補給は水だけでなく、お茶や牛乳、味噌汁、スープなどからもできます。
ジュレ状のドリンクを飲むのも選択肢の一つです。
さらに、飲み物だけでなく、以下の食べ物からも水分補給は可能です。
- ゼリー
- ヨーグルト
- 水ようかん
- すいかやいちごなどの果物
- きゅうりやトマトなどの野菜
なお、脱水症状を引き起こすと、水分だけでなく塩分も失われます。
医師や管理栄養士の指示に従いながら、水分と塩分を補給できる経口補水液も取り入れてみましょう。
楽しみながら水分をとれるよう工夫する
楽しみながら水分をとれるよう工夫すると、高齢者にとって水分補給が苦痛にならなくなります。
以下は、工夫の具体例です。
- 一緒にお茶を飲むリラックスタイムを設ける
- 好きなカップや器を使って気分を変える
- レクリエーションの一環としておやつと水分補給の時間を取り入れる
高齢者が水分を飲みたくなるような、楽しい雰囲気作りを心がけましょう。
無理やり飲ませないための注意点
高齢者が水を飲みたがらないからといって、無理やり飲ませてはいけません。
水分を飲んでもらうためには、飲みたがらない理由を探るのが大切です。
例えば、むせや誤嚥が心配な場合は、医師や言語聴覚士に相談してみましょう。
水分補給しやすい姿勢やとろみの付け方などを助言してもらえるため、高齢者の不安を取り除けます。
高齢者のペースや気持ち、尊厳を大切にしながら、水分補給のアプローチを進めていきましょう。
介護現場・家族の体験談:こうしたら飲んでくれた!
介護現場の職員や家族が、高齢者が水を飲んでくれるよう試してみた体験談を以下にご紹介します。
- お気に入りの湯のみを使ったら飲んでくれるようになった
- 甘酒を薄めたら喜んでくれた
- 一緒にテレビを見ながら麦茶タイムを楽しんだ
- 好きな飲み物を何本か用意し、毎回選んでもらった
- 施設内のカフェで仲のよい利用者とティータイムを楽しむようになった
また、尿漏れパッドやリハビリパンツの使用を検討したり、トイレの介助は任せてほしいと声をかけたりするのもおすすめです。
トイレの失敗に対する不安が軽減され、水を飲んでくれるようになる可能性があります。
水分補給は“習慣化”と“気配り”がカギ
水を飲みたがらない高齢者には、無理やり飲ませるよりも、理由に寄り添って工夫することが大切です。
習慣化しやすいタイミングでの声かけや、トイレやむせなどの不安への気配りが、脱水や熱中症の予防につながります。
高齢者が水を飲みたがらない理由は、一人ひとり異なります。
「飲まないこと」を責めるのではなく、高齢者が安心して水を飲めるようになる方法を一緒に探していきましょう。
出典
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
「高齢者がなかなか水を飲んでくれない」
「どうやったら飲んでくれるようになるの?」
高齢者へ水を飲むよう勧めてもうまくいかず、悩んでいませんか。
水を飲む量が少ない日が続くと、脱水や熱中症のリスクが高まります。
高齢者の水分不足を防ぐためには、水分補給を拒否する理由を理解し、飲んでもらえるよう工夫することが大切です。
本記事では、高齢者が水を飲みたがらない理由や脱水と熱中症のサイン、水を飲んでもらうための工夫などを解説していきます。
高齢者の水分補給や脱水予防に関してお悩みの方のお役に立てれば幸いです。