介護保険制度

介護保険制度

2025.11.05 作成

2025.11.05 更新

介護保険でどこまでカバーできる?自己負担額の仕組みと上手な使い方

高齢の親の介護が必要になったのですが、介護保険でどこまで費用がカバーされるのか分からず不安です。介護保険を使うと、介護サービスはどこまでカバーされるのでしょうか?自己負担額の仕組みや、負担を抑えるための方法も知りたいです。あわせて、自己負担額の計算方法や、介護費用を減らす制度についても教えてください。

目次

  1. 1. 介護保険があっても「全額無料」ではないって本当?
  2. 1-1. よくある誤解:「保険だから全部カバーされると思ってた」
  3. 1-2. 実際には「自己負担」が発生する場面が多い
  4. 2. 介護保険の対象になるサービス一覧
  5. 2-1. 介護保険で利用できる主なサービス
  6. 2-2. 対象外となる支援・サービスとは?(家事代行、病院入院など)
  7. 3. 介護保険の自己負担額の仕組み
  8. 3-1. 原則1割~3割負担(所得に応じた負担割合)
  9. 3-2. 支給限度額(区分支給限度基準額)と超過分の全額自己負担
  10. 3-3. 要介護度によって異なる上限
  11. 3-4. 「ケアプランに沿って利用すること」が給付の条件
  12. 4. 自己負担を抑えるために知っておきたい制度や工夫
  13. 4-1. 高額介護サービス費制度とは?
  14. 4-2. 介護保険負担割合証・負担限度額認定証の取得方法
  15. 4-3. 利用しすぎないためのケアマネジャーとの相談術
  16. 4-4. 福祉用具・住宅改修・介護用品の賢い利用
  17. 5. 在宅介護と施設介護での負担の違い
  18. 5-1. 在宅介護の月額目安と実費負担の内訳
  19. 5-2. 施設入所時にかかる費用
  20. 6. 介護保険を「上手に使う」ための3つのポイント
  21. 6-1. 1. ケアマネジャーとの連携がカギ
  22. 6-2. 2. 本当に必要なサービスを選ぶ
  23. 6-3. 3. 制度の見直しがあった場合は定期的に確認を
  24. 7. まとめ:制度を正しく理解して、ムダなく安心な介護へ
  25. 7-1. 知らないと損する仕組みが多い介護保険
  26. 7-2. 自己負担の負担感を減らすには「知って使う」が一番の対策
  27. 7-3. 困ったときは地域包括支援センターに相談しよう

専門家の回答

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介護保険はどこまでカバーできるのか?自己負担額はいくらになるのか?——介護サービスを利用する際に多くの方が抱く疑問です。
介護保険を利用すれば費用の一部が軽減されますが、対象外のサービスや自己負担が発生するケースもあります。
本記事では、介護保険で利用できるサービスの範囲、自己負担額の仕組み、そして費用を抑えるための制度や活用法を詳しく解説します。

介護保険があっても「全額無料」ではないって本当?

親のために知っておきたい!老人ホームの選び方・チェックポイント

家族を介護する必要に迫られた時、最も頼りになるのは、介護保険制度です。
介護保険は40歳以上の人は第2号被保険者として加入し、保険者である市区町村に毎月保険料を支払っています。そして、65歳以上になると、第1号被保険者に移行し、要介護認定を受けた後は、介護サービスを1〜3割の自己負担で受けられる仕組みです(第1号被保険者でも、要介護認定を受ければ受給できます)。

また、介護保険の財源は保険料5割と公費(税金)5割で運用される、国民全員で介護を支え合う仕組みです。
介護保険サービスの利用者は、一部の例外を除き、1〜3割の利用料(自己負担)を請求されます。

よくある誤解:「保険だから全部カバーされると思ってた」

要介護認定を受けると、誰でも介護保険サービスを利用できますが、利用料の全額が給付されるのではなく、本人の所得に応じて、1〜3割の自己負担が求められます。これは利用者/非利用者の公平性の担保と、介護保険制度の財政を維持するためです。

実際には「自己負担」が発生する場面が多い

介護保険が適用される介護サービスは、個々の利用者ごとに策定されるケアプランに記載されています。なので、ケアプランに定められていないサービスを利用した場合、介護保険が適用されず、実費が請求されます。

介護保険の対象になるサービス一覧

介護保険の対象になるサービスを解説します。また、対象外のサービスも併せて解説します。

介護保険で利用できる主なサービス

  • 訪問介護
    訪問介護員(ホームヘルパー)が、入浴、排泄、食事などの介護や、調理、洗濯、掃除などの家事を行います。
  • 福祉用具
    車椅子、手すり、介護ベッドなどの福祉用具をレンタルまたは購入することができます。
  • デイサービス(通所介護)
    食事、入浴などの介護、心身の機能を維持・向上するための機能訓練(リハビリテーション)を日帰りで提供します。
  • ショートステイ(短期入所生活介護)
    老人ホームなどの施設に短期間宿泊して、食事、入浴、排泄などの介護や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練などを行います。
  • 施設入所など
    自宅では生活することが難しい人の食事、入浴、排泄などの介護を施設で24時間一体的に提供する、特別養護老人ホームや、日常生活の支援や介護を施設で提供する、有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)などがあります。

対象外となる支援・サービスとは?(家事代行、病院入院など)

生活援助の範囲を超える家事代行サービス、配食・宅食サービス、安否確認・見守りサービス、病院への受診付き添い、入院手続きなどのサービスには、介護保険は適用されません。

介護保険の自己負担額の仕組み

介護保険の自己負担比率の仕組みを解説します。

原則1割~3割負担(所得に応じた負担割合)

自己負担比率は、利用者(被保険者)の所得と年金収入等を合わせた金額によって、以下のように定められています。

自己負担率の基準
自己負担率 本人所得 年金収入+その他合計所得
1割負担 160万円未満  
2割負担 160万円以上 280万円以上
3割負担 220万円以上 340万円以上

※ 生活保護を受けている場合、自己負担は発生しません。

支給限度額(区分支給限度基準額)と超過分の全額自己負担

介護保険は利用者(被保険者)の要介護度に応じて、毎月の支給限度額が定められています。支給限度額の範囲で介護サービスを利用した場合、自己負担は1〜3割に抑えることができますが、限度額を超えると、超過分の利用料は全額自己負担になります。

要介護度によって異なる上限

区分支給限度基準額(月額)
要介護度 支給限度額
要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

「ケアプランに沿って利用すること」が給付の条件

介護保険の利用者に必要なサービスは、ケアマネジャー(介護支援専門員)が作成したケアプランに定められています。
介護サービスの実施と給付は、ケアプランに基づいて行われます。ケアプランは月1回(施設では月3回)のモニタリングを通じて、作成・更新されるので、新たに必要なサービスが追加・削除される場合があります。

自己負担を抑えるために知っておきたい制度や工夫

介護サービスは支給限度額の範囲で、なるべく自己負担を抑えて利用したいですが、実際は本人の生活の状況に応じて、必要なサービスは異なるので、支給限度額を超えてしまう場合があります。それでも、介護費を補助する制度や、低減できる工夫があります。

高額介護サービス費制度とは?

高額介護サービス費制度は、介護サービスの自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。上限額は世帯に応じて異なります。

高額介護サービス費の月額上限
所得 年収 上限額
380万円未満 770万円未満 44,400円
690万円未満 1,160万円未満 93,000円
690万円以上 1,160万円以上 140,100円

※ 住民税非課税世帯の上限額は24,600円、生活保護受給世帯は15,000円。申請先は市区町村の介護保険窓口です。

介護保険負担割合証・負担限度額認定証の取得方法

介護保険負担割合証

介護保険負担割合証は、介護サービスの自己負担割合(1割〜3割)を示す証明書です。自動で交付され、毎年7月頃に、市区町村から郵送されます。

介護保険負担限度額認定証

介護保険負担限度額認定証は、特別養護老人ホームなどの介護施設の居住費・食費の負担軽減を受けるための証明書です。
住民税非課税世帯で、預貯金額が一定以下(単身者500万円以下、夫婦世帯1,500万円以下)の世帯が交付の対象です。申請先は市区町村の介護保険窓口です。必要な書類は次のとおりです。

  • 介護保険被保険者証
  • 申請書
  • 所得証明書(住民税非課税証明書等)
  • 預貯金額の確認書類(通帳のコピー等)

利用しすぎないためのケアマネジャーとの相談術

介護保険が適用されるサービスは、1〜3割の自己負担で比較的低廉に利用できますが、それでも実費は発生するので、無駄使いには注意が必要です。
本来、ケアマネジャーは利用者にとって最適なサービスの組み合わせを提案するのが仕事ですが、実際には各介護事業者が営業をしていて、必ずしも「公正中立」とは言いがたいのが現状です。
ケアマネジャーが勧める事業者のサービスを鵜呑みにせずに、自分の目と耳で確かめて、事業者とサービスを選択しましょう。サービス選択の自由は、介護保険の理念に適っています。

福祉用具・住宅改修・介護用品の賢い利用

福祉用具

車椅子、介護ベッド、エアマット、手すり、歩行器などの福祉用具を1〜3割の自己負担でレンタルすることができます。
また、腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽などは、1〜3割の自己負担で購入することができます。購入の場合、年間最大10万円補助されます。

住宅改修

手すりの設置、段差の解消、床材の変更など、住宅のバリアフリー化を、1〜3割の自己負担で行うことができます。支給限度額は20万円です。

介護用品

紙おむつ、介護食、口腔ケアセットなどの介護用品は、介護保険の給付の対象ではありませんが、市区町村などが購入補助をしている場合がありますので、各自治体に問い合わせてみてください。

在宅介護と施設介護での負担の違い

自宅の生活を継続して介護を受ける在宅介護と、老人ホームなどの施設に入居して介護を受ける施設介護では、身体的・精神的負担はもとより、経済的負担も大きく違います。両者の違いを費用の面から説明していきます。

在宅介護の月額目安と実費負担の内訳

在宅介護の月額費用は要介護度にも異なりますが、約4.8万円〜8.3万円程度と見られています。費用の内訳は次のとおりです。

  • 介護サービス費(訪問介護、デイサービス等)
  • 介護用品費(紙おむつ、介護ベッド等)
  • 医療費(通院費、薬代)
  • 食費・生活費(介護食等)

ただし、施設介護と違って、実際には同居家族の介護がある程度伴いますので、金銭的な支出以上に、実際の負担が大きくなる傾向があります。

施設入所時にかかる費用

施設介護にかかる費用は、入居する施設と要介護度に応じて異なります。入居一時金のほか、食費、家賃、介護サービス費などを含めた費用の概算は次のとおりです。

施設別の費用目安
施設 入居一時金 月額費用
特別養護老人ホーム 0円 5〜15万円
介護付有料老人ホーム 0〜数千万円 15〜35万円
住宅型有料老人ホーム 0〜数千万円 12〜30万円
グループホーム 0〜100万円 15〜30万円
サービス付き高齢者向け住宅 0〜100万円 10〜30万円

※ 社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームは入居一時金は不要で、費用も比較的低廉ですが、入居者は要介護3以上と介護保険で定められています。

介護保険を「上手に使う」ための3つのポイント

自分も含めた介護の負担を減らすと同時に、質の高い介護サービスを得る——介護の成功の鍵は、介護保険制度を最大限に活用しながら、各種のサービスとその費用を上手にマネジメントすることです。そのためにはケアマネジャーとの連携と、介護保険の知識がぜひとも必要になってきます。

1. ケアマネジャーとの連携がカギ

信頼できるケアマネジャーを探し、選びましょう。ケアマネジャーは、都道府県が所管する資格制度に基づいて認定されており、定期的に研修も行っていますが、その実力は千差万別です。
介護サービスの利用者や事業者に対して、機械的にケアプランを発行するケアマネジャーも多いのが現状です。
利用者の生活を丁寧にモニタリングして、その人に最適なケアプランを作成するケアマネジャーを自ら進んで選びましょう。

2. 本当に必要なサービスを選ぶ

ケアマネジャーとの定期的なモニタリングの中で、自分と家族が本当に必要としていること(ニーズ)をきちんと伝えましょう。
介護にかけられる予算と時間ももれなく伝えることも必要です。利用者とその家族の要求と条件を考慮して、ケアマネジャーが最適なサービスの組み合わせを提案してくれるはずです。

3. 制度の見直しがあった場合は定期的に確認を

介護保険制度は3年ごとに見直しがされます。
厚生労働省のホームページを通じて、確認することができますが、個人で調べるには限界があります。サービスを利用していて分からないことがあれば、ケアマネジャー、市区町村の介護保険担当の職員、地域包括センターの職員に積極的に聞きましょう。

まとめ:制度を正しく理解して、ムダなく安心な介護へ

日本を福祉先進国たらしめているのが介護保険です。
四半世紀以上、運用されてきたその制度は優れていますが、実際に利用する段になると、少しコツがいります。介護が必要になる前から、制度について少しずつ学んでいきましょう。

知らないと損する仕組みが多い介護保険

賛否両論ありますが、日本の医療・福祉制度は申請主義が基本です。介護保険もこの例にもれません。
サービスを利用するためには、私たちが主体的に情報を集めて、選択し、事業者/行政に申請しなければなりません。制度の学習をおろそかにすると、制度を利用する機会を失います。

自己負担の負担感を減らすには「知って使う」が一番の対策

介護保険のおかげで、介護サービスの利用者負担は1〜3割で済みますが、それでも生計における介護費用は相当のボリュームを占めます。
介護保険の制度を知り、サービスを適切に利用すれば、介護の負担感は少なくなります。

困ったときは地域包括支援センターに相談しよう

介護をマネジメントするのに欠かせないケアマネジャーは、街の居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)に常駐していますが、市区町村の地域包括支援センターにも常駐しています。
おそらく、さまざまな介護サービスに対して、もっとも公平中立なのは、地域包括支援センターのスタッフです。在宅介護の相談だけでなく、施設介護に移行する見極めの相談にも応じてくれます。介護保険制度に依拠する公的機関を積極的に使いましょう。

この記事を監修した人

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野崎理香 / 正看護師

正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。

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