介護

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2026.07.08 作成

2026.07.08 更新

高齢者は“食べているつもり”でも低栄養に?家族が見直したい食事内容

親に「ちゃんと食べてる?」と聞いて「食べているよ」と返ってきたら、ひとまず安心してしまいがちです。見落とされがちな高齢者の低栄養について、教えてください。

専門家の回答

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「毎日3食食べているから大丈夫」
そう聞くと、つい安心してしまいますよね。しかし、実際に食事の回数が足りていても必要な栄養が十分に取れていない高齢者は少なくありません。厚生労働省が発表した令和5年(2023)の結果によると、65歳以上の高齢者の低栄養傾向の者(BMI≦20 kg/m2)の割合は男性12.2%、女性22.4%であり、さらに85歳以上では、男性22.8%、女性24.8%となっており、男女とも85歳以上が最も低栄養傾向者の割合が高いことが分かります。
こうした状態は「低栄養傾向」と呼ばれ、近年とくに注意が必要とされています。高齢の親をもつご家庭にとって、決して他人事ではありません。
特に気をつけたいのが、「食べている量」と「必要な栄養が取れているか」は別だということです。例えば、ご飯やパン、麺類などの炭水化物は比較的食べやすく、食欲が落ちていても口にしやすい傾向があります。一方で、肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質は、「準備が大変」「重たく感じる」といった理由から、少しずつ食卓から減ってしまうこともあります。
その結果、カロリーはある程度取れていても、筋肉や体を支えるために必要な栄養素が不足し、気づかないうちに低栄養が進んでしまうのです。

なぜ高齢者は低栄養になりやすいのか?

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高齢者が低栄養になりやすい背景には、年齢による体の変化だけでなく、生活環境やこれまでの習慣などさまざまな要因があります。
特に、次のような理由が重なりやすいといわれています。

  • 加齢によって食欲や消化機能が低下する
  • 買い物や料理が負担になってくる
  • 1人で食べる機会が増え、食事が簡単になりやすい
  • 「粗食で十分」「肉は控えた方がいい」という思い込みがある

1.加齢で食欲・消化機能が落ちる

年齢を重ねると、胃腸の働きや消化・吸収する力は少しずつ低下していきます。また、味覚や嗅覚も変化しやすく、「食事がおいしく感じにくい」「あまりお腹が空かない」と感じる方も増えてきます。
「以前より食べる量が減った」「最近はあっさりしたものばかり食べている」という変化も、加齢による自然なサインの1つです。

2.買い物・料理がしんどくなる

高齢になると、体力や気力の低下によって、買い物や料理そのものが負担になることがあります。スーパーまで行くのが大変だったり、重い荷物を持つのがつらかったりすると、つい簡単な食事で済ませる日が増えてしまいます。
「今日は面倒だからこれでいいかな」と思う日が積み重なることで、少しずつ栄養バランスが偏りやすくなるのです。

3.1人ご飯で食事が手抜きになりがち

独居の方や、日中ひとりで食事をすることが多い方は、食事への意欲が下がりやすい傾向があります。
「自分ひとりのために作るのは面倒」と感じると、お茶漬けだけ、パンだけ、といった簡単な食事で済ませてしまうことも少なくありません。食事は栄養を取るだけでなく楽しみの要素も大きいため、誰かと一緒に食べる機会が減ることも、低栄養につながる原因の1つとされています。

4.「粗食でいい」「肉は太る」という思い込み

高齢世代の中には、「年を取ったらあっさりした食事がいい」「肉や脂は控えた方が健康的」という考えを持っている方も多くいます。
もちろん食べ過ぎは注意が必要ですが、極端に肉や卵を避けてしまうと、筋肉や体を維持するために必要なたんぱく質が不足してしまいます。
特に高齢者は、若い頃よりも意識してたんぱく質を取ることが大切だといわれています。健康のための我慢が、結果として低栄養につながってしまうケースもあるのですね。

こんな食事はしていませんか?

食事が次のような内容に偏っている場合は、低栄養のサインかもしれません。

ご飯・漬物・みそ汁だけの食事が多い

一見すると「和食で健康的」に見えますが、実際には炭水化物と塩分が中心になりやすく、たんぱく質が不足しがちです

朝はパンとコーヒーだけで済ませている

特に菓子パン中心の食事は、手軽な反面、必要な栄養が十分に取れないことがあります。食事量そのものも少なくなりやすく、エネルギー不足につながる場合もあります。

麺類やお茶漬けで簡単に済ませることが多い

うどんやそうめん、お茶漬けは食べやすく便利ですが、それだけではたんぱく質やビタミン、ミネラルが不足しやすくなります

野菜中心で、肉・魚・卵をほとんど食べない

「野菜をたくさん食べているから健康」と思われがちですが、筋肉や体を支えるためには、たんぱく質もしっかり必要です。

これらの食事に共通しているのは、炭水化物に偏りやすく、たんぱく質が不足しやすいという点です。たんぱく質は、筋肉だけでなく体力や免疫力を維持するためにも欠かせない栄養素です。不足した状態が続くと、気づかないうちに体の機能が少しずつ低下してしまうこともあります。
だからこそ大切なのは、「ちゃんと食べているか」だけではなく、「何を食べているか」に目を向けることです。毎日の食事内容を少し意識するだけでも、低栄養の早期発見につながります。

見逃さないで!低栄養の5つのサイン

「年齢のせいかな」と見過ごされやすい変化の中には、実は低栄養が隠れていることがあります。特に、次のようなサインが見られる場合は注意が必要です。
「年のせいだから」と片付けてしまわず、毎日の食事内容を見直すきっかけにしてみてください。

1.体重が減ってきた

半年ほどの間に2〜3kg以上体重が減っている場合は、低栄養のサインかもしれません。「最近、食が細くなったから仕方ない」と見過ごされやすい変化ですが、体重の減少は栄養状態を知るうえでとても大切な目安になります。
特に、意識してダイエットをしていないのに体重が減っている場合は、一度食事内容や体調を振り返ってみることが大切です。

2.疲れやすい・元気が出ない

栄養が不足すると、体のエネルギーを作る力も低下してしまいます。例えば、「最近すぐ疲れるようになった」、「以前より横になっている時間が増えた」という変化が見られる場合は、年齢だけでなく低栄養が関係しているかもしれません。
食事量が減っていないように見えても、必要な栄養が不足していることで、体が十分にエネルギーを作れなくなっている恐れがあります。

3.筋力が落ちた

たんぱく質が不足すると、筋肉は少しずつ減っていきます。そのため、「以前より歩く距離が短くなった」、「瓶のフタが開けにくくなった」、「ちょっとした段差でつまずきやすくなった」という変化は、単なる老化ではなく筋力低下のサインかもしれません。
特に高齢者は、筋肉量が一度落ちると回復に時間がかかるため、早めに気づくことが大切です。

4.風邪を引きやすくなった・長引くようになった

免疫を支える細胞や体の機能は、たんぱく質などの栄養素から作られています。そのため、栄養不足の状態が続くと免疫力が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなることがあります。
また、一度体調を崩すと回復に時間がかかったり、なかなか元の体力に戻りにくくなったりすることもあります。
したがって、「最近よく風邪をひくようになった」、「体調を崩したあと、回復まで時間がかかる」という変化も低栄養のサインの1つかもしれません。

5.傷や口内炎が治りにくくなった

皮膚や粘膜を健康に保つためには、たんぱく質やビタミンなどの栄養素が欠かせません。
栄養が不足すると、「小さな傷がなかなか治らない」、「口内炎を繰り返す」、「肌の乾燥や荒れが気になる」といった変化が現れることもあります。

このようなサインがいくつか重なっている場合は、低栄養が背景にある可能性も考えられます。
以上5つのサインで気になるものがある場合は、かかりつけ医や地域の管理栄養士に相談してみるのがおすすめです。

今日からできる!食事に「あと1品」足す方法

「バランスのよい食事」と聞くと、毎日きちんと作らなければいけないように感じるかもしれません。ですが、最初から完璧を目指す必要はありません。大切なのは、今の食事にたんぱく質を少し足す意識を持つことです。
ただし腎臓病や心臓病などの持病をお持ちの方は、食事や栄養管理について、主治医または管理栄養士にご相談ください。

1.たまご

たまごは、手軽に取り入れやすいたんぱく質食品の1つです。目玉焼きやゆで卵はもちろん、みそ汁に溶き入れるだけでも美味しくいただけますね。調理の負担が少なく、毎日の食事にも取り入れやすい食材です。
卵1個には、およそ6gのたんぱく質が含まれているといわれています。「あと1品どうしよう」というときにも便利な、ちょい足しにぴったりの食材です。

2.魚(缶詰でも可)

魚を毎回調理するのは大変ですが、缶詰を活用すれば無理なく取り入れられます。特にサバ缶やツナ缶は、開けるだけですぐ使えるので便利です。

  • みそ汁に入れる
  • サラダにのせる
  • 冷ややっこに添える

など、火を使わずにたんぱく質を補えるのも嬉しいポイントです。「魚を焼くのが面倒」という方でも続けやすく、常備しておくと安心な食材です。

3.肉

鶏むね肉や豚こま肉は、比較的取り入れやすくたんぱく質をしっかり補える食材です。少量でも栄養を取りやすいため、毎日の食事にもおすすめです。
「お肉は硬くて食べにくい」という場合は、片栗粉をまぶしてから炒めるとやわらかく仕上がりやすくなります。無理なく食べやすい工夫をすることで、たんぱく質も続けて取り入れやすくなります。

4.大豆製品

豆腐や納豆、豆乳などの大豆製品は、消化がよく比較的胃腸に負担をかけにくい食材ですね。食欲が落ちているときでも取り入れやすく、たんぱく質補給にも役立ちます。
特に納豆は、調理をしなくてもそのまま食べられるためとても手軽です。「あと1品足したい」というときにも取り入れやすく、毎日の食事に続けやすい食材の1つです。

5.乳製品

ヨーグルトやチーズ、牛乳を1日1回習慣にするのがおすすめです。間食(おやつ)にヨーグルトを食べるだけでも、タンパク質とカルシウムが同時に補えます。
毎食完璧にする必要はありません。「今日はゆで卵を1個足した」、「サラダにツナ缶を入れてみた」という小さな変化の積み重ねが、低栄養の予防に繋がります。

まとめ

親から「ちゃんと食べてるよ」と聞くと、つい安心してしまいますよね。ですが、本当に大切なのは「食べているか」だけではなく「何を食べているか」です。
高齢になると、体力や気力の変化から、食事はどうしても簡単で手軽なものに偏りやすくなります。それ自体は決して悪いことではありません。だからこそ、家族が少しだけでも食事内容に目を向けてあげることが、低栄養の予防につながります。
今度親御さんに会ったときは、「最近どんなもの食べてる?」と、気軽に聞いてみてください。
もし一緒に食事をする機会があれば、魚や肉、卵、豆腐などを1品添えるだけでも、栄養バランスは大きく変わります。大切なのは、無理をすることではなく小さな工夫を続けていくことです。
また、食事量が極端に減っている場合や、体重減少、疲れやすさなどの変化が気になる場合は、地域包括支援センターや管理栄養士など、専門家に相談するのも1つの方法です。
無理なく続けられる方法を取り入れながら、できることから少しずつ始めていきましょう。

この記事を監修した人

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野崎理香 / 正看護師

正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。

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