介護
目次
- 1. 高齢者が急に歩けなくなったら、まず様子を確認しましょう
- 2. 突然歩けなくなった場合は、脳卒中など緊急性のある病気に注意
- 3. 「歩けない」の原因は足や筋力だけとは限りません
- 3-1. 足の痛みや爪、関節のトラブル
- 3-2. 転倒や骨折
- 3-3. 発熱や感染症などによる体調不良
- 3-4. 脱水や食事量の低下
- 3-5. 便秘や腹痛など、足以外の不調
- 3-6. 立ち上がったときの血圧低下や意識の変化
- 3-7. 薬の影響
- 3-8. パーキンソン病などによる歩行障害
- 3-9. 活動量の低下や筋力低下
- 4. 「歩けない」と「歩かない」は同じではありません
- 5. 急に歩けなくなったときは無理に歩かせない
- 6. 救急車を呼んだ方がよい症状
- 7. 徐々に歩けなくなってきた場合に確認したいこと
- 8. 歩けなくなった後の介護も早めに相談する
- 9. よくあるQ&A
- 9-1. 高齢者は1日寝ているだけでも歩けなくなりますか?
- 9-2. 急に立てなくなったけれど、痛みがなければ様子を見てもいい?
- 9-3. 歩けなくなったら何科を受診すればいい?
- 9-4. 一度歩けるようになったら受診しなくてもいい?
- 9-5. 筋力低下なら家で歩く練習をした方がいい?
- 10. まとめ
専門家の回答
高齢者が急に歩けなくなったら、まず様子を確認しましょう

高齢者が急に歩けなくなった場合、まず「いつから」「どのように歩けなくなったのか」を確認します。
数日前から徐々に歩く量が減っていたのか、数時間前まで普通に歩いていたのに突然歩けなくなったのかでは、考えられる原因も異なります。
また、「歩けない」という言葉だけでは、実際にどのような状態なのか分かりません。
ご本人の様子を見ながら、次のような点を確認してみましょう。
- 自分で立ち上がることができるか
- 立てるけれど最初の一歩が出ないのか
- 歩き始めるとふらつくのか
- 片方の足だけ動かしにくそうではないか
- 痛くて足を床につけられないのか
- 立ち上がったときにめまいやふらつきがないか
- 歩くと息切れや苦しさが出ないか
- 身体は動かせるものの、本人が歩こうとしないのか
突然歩けなくなった場合は、脳卒中など緊急性のある病気に注意
数分から数時間の間に突然立てなくなった、歩けなくなった場合は、脳卒中など早急な対応が必要な病気が隠れている可能性があります。
歩けないことだけを見るのではなく、顔や手足の動き、会話、意識などにも変化がないか確認してください。
- 顔の左右どちらかが動かしにくい、ゆがんでいる
- 片方の腕や足に力が入らない
- ろれつが回らない
- 言葉が出にくい、会話がかみ合わない
- 突然ふらついて立っていられない
- 見え方がおかしい
- 突然の激しい頭痛がある
- 意識がおかしい、呼びかけへの反応が悪い
このような症状が突然みられた場合は、様子を見ながら何度も歩かせるのではなく、救急要請を検討してください。
また、一度症状が出た後に元へ戻った場合でも、「歩けるようになったから大丈夫」とは限りません。突然の麻痺や言葉の出にくさなどがみられた場合は、速やかに医療機関へ相談しましょう。
「歩けない」の原因は足や筋力だけとは限りません
「高齢だから足腰が弱ったのかな」と思うかもしれませんが、歩けなくなる原因はさまざまです。
特に急な変化の場合には、筋力低下だけと決めつけず、身体全体の状態を確認することが大切です。
訪問看護の現場でも、「急に歩けなくなった」と相談を受けて確認すると、思っていたものとは違う原因だったことがありました。
足の爪が伸びていて歩くと痛かった方、痛風が悪化して足をつけなかった方、便秘による腹痛で動くこと自体を嫌がっていた方など、「歩けない=足の筋力が落ちた」ではないケースもあります。
足の痛みや爪、関節のトラブル
足そのものに痛みがあり、歩けなくなっている場合があります。
「足が痛い」と本人がはっきり伝えられるとは限らないため、靴下を脱いで足の状態まで確認してみましょう。
- 足や関節に腫れ・赤みがないか
- 足を触ったときに痛がらないか
- 爪が伸びすぎていないか
- 爪が皮膚に食い込んでいないか
- 足に傷や水ぶくれなどがないか
- 靴が合っているか
痛風などによる強い関節痛が原因で、急に足をつけなくなることもあります。痛みや腫れ、赤みなどがある場合は医療機関へ相談しましょう。
転倒や骨折
高齢者が急に歩けなくなった場合は、転倒や骨折についても確認します。
転倒したことをご本人が覚えていなかったり、ご家族が見ていないところで転んでいたりすることもあります。
足や股関節などに痛みがある、立ち上がれない、片方の足に体重をかけられないなどの変化がある場合は、無理に歩かせず医療機関へ相談してください。
発熱や感染症などによる体調不良
高齢者では、感染症などによって全身状態が悪くなり、「歩けない」「立てない」という変化がみられることがあります。
発熱だけでなく、食欲がない、水分がとれない、咳が増えた、尿の様子がいつもと違う、ぼんやりしているなど、ほかの変化がないか確認しましょう。
脱水や食事量の低下
食事や水分が十分にとれていないことで体力が低下し、立ち上がったり歩いたりすることが難しくなる場合もあります。
特に暑い時期や発熱・下痢・嘔吐があるときなどは、水分が不足しやすくなります。
食事や水分摂取量、尿量、口の渇きなど、普段との違いも確認しましょう。
便秘や腹痛など、足以外の不調
歩こうとしないからといって、必ずしも足に原因があるとは限りません。
実際に訪問看護で関わった方の中には、便秘による腹痛やお腹の張りが強く、動くこと自体を嫌がっていた方もいました。
ご家族から見ると「歩けなくなった」ように見えても、足が動かないのではなく、別の不調があって「動きたくない」という場合もあります。
お腹の痛みや張り、便が出ているか、食欲が落ちていないかなど、足以外の体調についても確認してみましょう。
立ち上がったときの血圧低下や意識の変化
横になっているときは問題がなくても、起き上がったり立ち上がったりした際に、めまいやふらつきが出ることがあります。
心臓に持病のある方で、立ち上がった際に血圧が下がり、一瞬意識を失ってしまう方に関わったこともあります。
ご家族からすると「立てない」「歩けない」と見える状態でも、足の筋力だけが原因とは限りません。
立ち上がったときにふらつく、目の前が暗くなる、反応がなくなるなどの変化がある場合は、何度も立たせて確認しないようにしましょう。
転倒しないよう安全を確保し、意識を失うなどの症状がある場合は医療機関へ相談してください。
薬の影響
薬の種類や体調によっては、眠気やふらつき、血圧低下などがみられることがあります。
最近薬が追加された、薬の量が変わったなどのタイミングで歩行状態にも変化がみられた場合は、服用している薬についても医師や薬剤師へ伝えましょう。
自己判断で薬を中止したり、量を変更したりすることは避けてください。
パーキンソン病などによる歩行障害
パーキンソン病などの神経の病気では、筋力だけでは説明できない特徴的な歩きにくさがみられることがあります。
- 立ち上がっても最初の一歩がなかなか出ない
- 歩幅が小さく、小刻みに歩く
- 方向転換がしにくい
- 歩いている途中で足が止まる
- 狭い場所やドアの前などで足が前に出なくなる
- 歩いているうちに前のめりになり、止まりにくくなる
「歩けない」と聞いたときは、まったく立てないのか、それとも立てるけれど一歩目が出ないのかなど、どの部分で困っているのかを見ることも大切です。
活動量の低下や筋力低下
病気や入院、外出する機会の減少などによって活動量が落ちると、筋力も低下していきます。
特に高齢者では、以前より横になっている時間が増えたり、車いすで移動することが増えたりすると、立ったり歩いたりする機会そのものが減ることがあります。
「歩けない」と「歩かない」は同じではありません
訪問看護では「最近歩けなくなった」と相談を受けても、実際に確認すると身体的にまったく歩けないわけではなく、車いすでの移動が続いたことで、歩くこと自体を億劫に感じているケースもありました。
ただし、ご本人が歩きたがらないからといって「面倒なだけ」「歩けるのに歩かない」と決めつけるのは避けましょう。
痛みや息苦しさ、めまい、疲れ、便秘などの体調不良、筋力低下など、本人がうまく説明できていない理由が隠れていることがあります。
「歩いてみて」と何度も促す前に、なぜ歩こうとしないのかを確認することが大切です。
急に歩けなくなったときは無理に歩かせない
「歩けるかどうか確認したい」「歩かないともっと筋力が落ちる」と思い、何度も立たせたり歩かせたりしたくなるかもしれません。
しかし、突然歩けなくなった原因が分からない状態で無理に歩かせると、転倒したり、痛みや体調不良を悪化させたりする可能性があります。
まずは安全な場所で休んでもらい、意識や呼吸、手足の動き、痛み、発熱などを確認しましょう。
明らかに普段と様子が違う場合や、急激な変化がある場合は医療機関への相談を検討します。
救急車を呼んだ方がよい症状
急に歩けなくなった場合でも、すべてのケースで救急車が必要になるわけではありません。
ただし、次のような症状が突然みられた場合は、緊急性が高い可能性があります。
- 片側の手足に急に力が入らなくなった
- 顔の片側がゆがんでいる
- ろれつが回らない、言葉が出ない
- 意識がおかしい、呼びかけへの反応が悪い
- 突然の激しい頭痛がある
- 急に息苦しくなった
- 立ち上がった際に意識を失った
- 転倒後に強い痛みがあり、まったく立てない
判断に迷う場合は、地域の救急相談窓口などを利用する方法もあります。
ただし、意識や呼吸に明らかな異常がある場合などは、相談を待たず救急要請を検討してください。
徐々に歩けなくなってきた場合に確認したいこと
「急に歩けなくなった」と感じても、振り返ると数日から数週間かけて少しずつ活動量が減っていたケースもあります。
次のような変化がなかったか確認してみましょう。
- 以前より横になっている時間が増えた
- 外出する回数が減った
- 食事量が減っている
- 体重が減っている
- 転倒することが増えた
- 足腰の痛みが続いている
- 薬が追加・変更された
- 息切れや疲れやすさが増えた
- 認知機能や意欲に変化がある
徐々に歩行状態が悪くなっている場合も、「年齢のせい」と決めつけず、かかりつけ医へ相談しましょう。
介護保険を利用している場合は、ケアマネジャーや訪問看護師などに変化を共有することも大切です。
歩けなくなった後の介護も早めに相談する
歩けなくなると、移動だけでなくトイレ、入浴、着替えなど日常生活のさまざまな場面で介助が必要になることがあります。
家族だけで支えようとすると負担が大きくなるため、必要に応じて介護サービスや福祉用具の利用も検討しましょう。
- 手すりや歩行器などの福祉用具
- 車いす
- 介護ベッド
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護(デイサービス)
- ショートステイ
急に介助量が増えた場合は、今までのケアプランでは対応が難しくなることもあります。
ケアマネジャーがいる場合は、歩けなくなったことや介助量が変わったことを早めに伝えましょう。
よくあるQ&A
高齢者は1日寝ているだけでも歩けなくなりますか?
1日寝ていたことだけで必ず歩けなくなるわけではありません。
ただし、高齢者では病気や入院などをきっかけに活動量が大きく減ると、筋力や体力が落ちやすくなります。数日以上ほとんど動いていない、食事量も減っているなどの場合は注意が必要です。
急に立てなくなったけれど、痛みがなければ様子を見てもいい?
痛みがないからといって、問題がないとは限りません。
脳卒中などでは強い痛みがなくても歩けなくなることがあります。突然の変化であれば、片側の手足の動き、会話、意識なども確認し、普段と明らかに違う場合は医療機関へ相談しましょう。
歩けなくなったら何科を受診すればいい?
原因によって受診する診療科は異なります。
急な麻痺や言葉の出にくさなどがあれば救急対応が必要になることがあります。足や関節の痛みが中心であれば整形外科、持病や全身状態の変化がある場合はまずかかりつけ医へ相談する方法もあります。
一度歩けるようになったら受診しなくてもいい?
一時的に症状が改善しても、突然の麻痺や言葉の出にくさ、意識の変化などがあった場合は放置しないようにしましょう。
いつ、どのような症状が出て、どのくらいで戻ったのかを記録して医療機関へ相談してください。
筋力低下なら家で歩く練習をした方がいい?
急に歩けなくなった原因が分からない段階では、無理に歩く練習をするのは避けましょう。
筋力低下が原因と考えられる場合でも、転倒リスクや身体状態によって適切な運動内容は異なります。医師やリハビリ専門職などに相談してから行うと安心です。
まとめ
高齢者が急に歩けなくなったとき、「年齢のせい」「筋力が落ちたから」と考えてしまいがちですが、原因はそれだけではありません。
脳卒中など緊急性のある病気のほか、転倒や骨折、足の痛み、爪のトラブル、感染症、脱水、便秘、血圧の変化、薬の影響など、さまざまな原因があります。
まずは「立てないのか」「一歩目が出ないのか」「痛くて歩けないのか」「ふらつくのか」「本人が動きたがらないのか」など、どのように歩けないのかを確認してみましょう。
また、突然の麻痺や意識の変化、言葉の出にくさなどがある場合は無理に歩かせず、早めの医療対応が必要です。
歩けなくなったことで介助量が増えた場合も、家族だけで抱え込む必要はありません。かかりつけ医やケアマネジャー、訪問看護師などに相談しながら、ご本人が安全に生活できる方法を考えていきましょう。
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
「昨日まで歩いていたのに、急に立てなくなった」「トイレまで一人で歩けていたのに、今日は歩こうとしない」など、高齢者が急に歩けなくなると心配になりますよね。
高齢になると筋力は低下しますが、急に歩けなくなった場合は年齢や筋力低下だけが原因とは限りません。
今回は、高齢者が急に歩けなくなったときに家族が確認したいポイントや、考えられる原因、受診の目安についてご紹介します。