リハビリ・介護予防
目次
- 1. 転倒予防は、親が毎日通る場所から見直す
- 2. 寝室・トイレ・玄関など、場所別に確認したいこと
- 2-1. 寝室とトイレ:夜の移動を一続きで考える
- 2-2. 居間と玄関:つかまる物と立ち座りを確認する
- 2-3. 浴室と階段:用具を買う前に、使う場面を相談する
- 3. 急なふらつきや転倒の繰り返しは、環境だけの問題にしない
- 4. 手すり・福祉用具・住宅改修は、工事や購入の前に相談する
- 5. よくある質問
- 5-1. 工事をしなくても、できることはありますか?
- 5-2. 転倒を防ぐには、できるだけ歩かせない方がよいですか?
- 5-3. 自宅で転倒を繰り返したら、施設入所を考えるべきですか?
- 6. まとめ:まずは、親が毎日使う経路を一緒に確認する
- 7. 出典・参考資料
専門家の回答
転倒予防は、親が毎日通る場所から見直す

自宅の転倒予防では、「段差があるか」だけでなく、どこで立ち上がり、何につかまり、どちらへ向きを変えるかも見てみてください。消費者庁は、床の物やコード、浴室での滑り、夜間のトイレ移動、玄関や階段の手すりなどへの注意を呼びかけています。1)
家中を一度に変えようとせず、まず寝床からトイレまでなど、親が毎日使う経路を確認します。「前にヒヤッとした場所はある?」「夜はどこが見えにくい?」と本人に聞くことも手がかりになります。危ない場所を確かめるために、無理に歩いて再現してもらう必要はありません。
昼間は歩けても、暗い時間や起きた直後には条件が変わります。訪問スタッフに見てもらうときは、日中の歩く様子に加えて「夜は照明をつけずにトイレへ行く」「夕方は足が出にくそう」など、家族が気づいた場面を伝えましょう。
寝室・トイレ・玄関など、場所別に確認したいこと
| 場所 | 見ておくこと | 見直しの方向 |
|---|---|---|
| 寝室からトイレ | 床の荷物やコード、照明のスイッチ、途中につかまる物 | 通り道を空け、歩き始める前に明るさを確保できるか確認 |
| 居間 | めくれた敷物、家具の間の狭さ、不安定な椅子 | 足元と通り道を整理し、立ち座りする場所を相談 |
| 玄関 | 靴の出しっぱなし、上がり框、靴を履く姿勢 | 足を置く場所を確保し、安定して履ける方法を検討 |
| 浴室・脱衣所 | 濡れた床、出入口の段差、立ち座りの支え | 水気や滑りを確認し、手すり・用具が合うか専門職へ相談 |
| 階段 | 暗い足元、段に置いた物、手すりの位置 | 段を空け、照明と身体を支える場所を確認 |
寝室とトイレ:夜の移動を一続きで考える
寝床の横に物がなくても、トイレまでの途中にコードや荷物があれば足を引っかけることがあります。本人が使う杖や歩行器を含めて通れるか、ドアの開閉で通路が狭くならないかも確認します。床へ物を置きがちな場所には、通行を妨げない置き場を家族で決める方法があります。
照明は明るさだけでなく、「立つ前に点けられるか」も大切です。足元灯などを検討するときも、光がまぶしすぎないか、影で段差が見えにくくならないかを確認してください。夜の移動が難しい場合は、トイレの位置や排泄の方法を含め、ケアマネジャーや訪問看護師へ相談できます。
同居している方が何気なく床に置いた物で、本人が転んでしまったこともありました。その際は、物の置き方に気をつけてもらうようお伝えしました。本人だけに「気をつけて」と言うのではなく、一緒に暮らす人も通り道へ物を置かないようにすることが大切です。
居間と玄関:つかまる物と立ち座りを確認する
テーブルや椅子を支えにしている場合は、手をついたときに動いたり倒れたりしないかが気になる点です。家族が「ここにつかまればよい」と決める前に、本人が普段どこを使っているかを確認します。家具の位置を変えるときは、慣れた支えを急になくさないよう、代わりの方法も一緒に相談してください。
玄関では、脱いだ靴が足を置く場所をふさいでいないかを見てみましょう。立ったまま靴を履くのが不安定なら、安定して座れる方法がないか相談します。椅子や台を置く場合も、通り道を狭めないこと、立ち座りでぐらつかないことを確認します。
浴室と階段:用具を買う前に、使う場面を相談する
浴室では床の水気や滑りやすさ、出入りや立ち座りの支えを確認します。滑り止めを使う場合も、ずれたり端がめくれたりしないか、清掃後に正しく戻せているかが確認点です。階段では段に荷物を置かず、足元の照明や手すりを見直します。1)
手すりや入浴用具は、設置すれば誰でも同じように使えるわけではありません。本人の動きに合う位置や高さ、取付場所の強度などを、専門職や施工業者に確認します。家族が一人で抱えて移動させる方法でしのいでいる場合も、その状況を相談してください。
私が訪問看護で関わった方では、靴下が滑りやすく、滑り止め付きのものに変えたり、絨毯を敷いて素足で過ごす形にしたりしたケースがありました。また、古い家の階段が急で、足腰が弱くなったことに合わせて手すりを追加したこともあります。手すりについては福祉用具の担当者と相談しながら進めていました。
これらは、その方の住まいと状態に合わせた経験です。滑り止め付きの靴下や、絨毯・素足の組み合わせが、どなたにも合うとは限りません。絨毯の端のめくれやずれもつまずきの原因になるため、敷いた後の歩きやすさまで確認してください。5)
急なふらつきや転倒の繰り返しは、環境だけの問題にしない
床を片付けても転ぶ、急にふらつくようになったなどの場合は、主治医や訪問看護師へ状態を伝えます。高齢者では薬がふらつきや転倒に関わることもあります。最近の薬の変更、飲む時間とふらついた場面の関係が分かれば、お薬手帳と一緒に伝えてください。自己判断で薬を中止・減量することは避けます。3)
すでに転んだ場合は、家の片付けより本人の状態確認を優先します。呼びかけへの反応がない、呼吸がおかしいなど重い症状があれば119番へ。強い痛みや動けない状態では無理に立たせず、医療機関へ連絡して対応を確認してください。4)
相談するときは「何回転んだか」に加え、場所、時間、何をしようとしていたか、転ぶ前の様子をメモします。「居間で転んだ」より「椅子から立ち上がり、向きを変えたところでふらついた」と伝えられると、確認する動作を具体的にできます。分からない場面は、推測で埋めずに不明と伝えて構いません。
手すり・福祉用具・住宅改修は、工事や購入の前に相談する
手すりの取付けや段差の解消などは、条件に合えば介護保険の住宅改修の対象となります。住宅改修費は工事前・工事後に市区町村への申請が必要です。先に工事を進めず、担当ケアマネジャーや自治体の窓口へ相談してください。2)
福祉用具にも貸与や購入の制度があり、対象種目や利用条件が異なります。工事を伴わない手すりなども選択肢に入るため、「工事をしなければ改善できない」と決める前に確認できます。福祉用具専門相談員、必要に応じて理学療法士・作業療法士などに、実際の家と動作を見てもらうと相談を具体化できます。2)
相談には、転びそうになった場所の写真や簡単な間取りも役立ちます。本人がどちらの手を使うか、杖や歩行器をどこへ置いているかなども添えてください。写真だけで安全性を判断しきれないため、設置後も本人の使い方や通り道に新たな不便がないか確かめます。
よくある質問
工事をしなくても、できることはありますか?
床の物やコードの整理、めくれた敷物の確認、照明の使い方の見直しなどから始められます。ただし、片付けだけで本人の移動が安全になるとは限りません。工事を伴わない用具も含めて、どの支えが必要か専門職へ相談してください。
転倒を防ぐには、できるだけ歩かせない方がよいですか?
転倒予防だけを理由に、日常の動きを一律にやめる方法は勧められません。身体の状態に合った活動を考えることも大切です。痛みや急な体調変化があるときは先に医療職へ相談し、安全に続けられる動きや介助の方法を確認してください。1)
自宅で転倒を繰り返したら、施設入所を考えるべきですか?
転倒の回数だけで一律に決めるものではありません。原因の確認と環境・支援の見直しをしたうえで、本人の希望、必要な介助、家族が対応できる時間をケアマネジャーと整理します。自宅で支えきれない場面が続くなら、泊まりの支援や住まいの変更も含めて相談して構いません。
まとめ:まずは、親が毎日使う経路を一緒に確認する
自宅の転倒予防は、本人が実際に通る場所や動作を起点に考えます。まず寝床からトイレまでなど一つの経路を選び、床の物、明るさ、つかまる場所を確かめてみてください。急なふらつきや繰り返す転倒は医療職へ相談し、手すりや用具は本人に合う方法を確認してから取り入れます。家族だけで安全を支えることが難しい場面も、具体的に伝えていきましょう。
出典・参考資料
- 消費者庁「高齢者の転倒事故に注意しましょう」(2020年10月8日)
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
- 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」
- 政府広報オンライン「救急車の適正利用」
- 政府広報オンライン「たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?」
情報確認日:2026年9月9日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
まず、寝床からトイレまでなど、親が毎日通る場所の床・照明・つかまる物を確認します。急なふらつきや繰り返す転倒は医療職へ相談し、環境だけが原因と決めつけないことも大切です。手すりや福祉用具は、本人の動きに合うものを専門職と検討します。