介護
目次
- 1. 健康情報は、まず「何を確かめたいのか」を一つにする
- 2. 調べる順番は、元の情報・公的な解説・親への当てはまり
- 2-1. 探す場所を変えるときの検索例
- 3. 「研究あり」「医師が紹介」を、結論にしない
- 3-1. 細胞・動物・人では、分かることが違う
- 3-2. 数字には、何人中何人か・何が変わったかが必要
- 3-3. 同じ話がたくさん出ても、別々の確認とは限らない
- 4. 「病院に騙されるな」「マスクは意味がない」と言われたら
- 4-1. 治療への不信は、具体的な疑問に戻して確かめる
- 4-2. マスクは「どの場面で、何を防ぐ話か」をそろえる
- 5. 「分からない」で止めて、相談へ回してよい
- 6. 親を論破する道具にせず、次の行動を決めるために使う
- 7. 出典・参考資料
専門家の回答
健康情報は、まず「何を確かめたいのか」を一つにする

検索すると、専門用語の多い論文、医師の動画、体験談、商品の広告が同じ画面に並びます。最初から全部を読み比べるより、親が見た主張を一文にしてみてください。「その成分が何となくよい」ではなく、「この病気の人がこの方法を使うと、何がよくなると言っているか」を確かめます。
例えば「ミネラル入りの塩は健康によい」なら、確認したいのは「だから量を増やしてよいのか」かもしれません。「この薬が効く」なら、何の病気に対する話かが必要です。問いを絞ると、関係のない研究や体験談を集め続けることを避けやすくなります。
調べる順番は、元の情報・公的な解説・親への当てはまり
| 順番 | 見るもの・すること |
|---|---|
| 1.主張を残す | 投稿のURL、商品名、公開日。「何に効く」と言うのかを一文にする |
| 2.出典を開く | 記事や動画が紹介する資料へ進む。元の研究・解説が見つかるか確認 |
| 3.別の解説と照合する | 病名や成分名で、公的機関・専門学会の説明を探す |
| 4.条件を比べる | 対象者、量、期間、比較相手、効果と不利益を見る |
| 5.分からない点を相談する | 親の病気・薬・実際に使う物を添えて医療職へ聞く |
これはケアポケが家族向けに整理した確認手順です。出どころ、比較、因果関係などを確かめる視点は、厚生労働省eJIMでも紹介されています。すべての項目に自分で答えを出せなくても、どこが分からないかを残せれば相談に使えます。1)
探す場所を変えるときの検索例
薬は「薬の名前 PMDA」、がんは「病名 がん情報サービス」、健康食品は「成分名 消費者庁」など、確かめたい物と情報源を組み合わせて検索する方法があります。検索結果の広告や似た名前のサイトではなく、実際の機関のページを開いたかも確認します。
薬の承認された用途や注意点はPMDAのおくすりサーチから調べられます。がんの情報は、国立がん研究センターのがん情報サービスが入口になります。公的なページでも、更新日や対象となる病気・状況は見てください。2)3)
「研究あり」「医師が紹介」を、結論にしない
細胞・動物・人では、分かることが違う
実験室で細胞に変化があったことは、人が飲んで病気が治る証明ではありません。人を調べた研究でも、同じ病気・年齢・重症度か、使った成分と量は同じかを確認します。サプリメントの一成分の研究が、販売されている商品の効果を直接示すとは限りません。4)5)
「よくなった人がいた」という話では、同時に受けた治療や自然な経過が分からない場合があります。何と比べた結果なのか、たまたま一緒に起きたことを原因と決めていないかを見る必要があります。1)
数字には、何人中何人か・何が変わったかが必要
仮に100人中2人だった出来事が100人中1人になれば、割合としては半分です。一方、100人当たりの差は1人です。これは数字の読み方を示す架空の例で、実際の薬の効果ではありません。「50%減」という見出しだけでなく、元の人数、対象、期間を読むと意味をつかみやすくなります。1)
検査の数値が少し変わることと、症状が軽くなる、入院が減る、長く生きられることも同じではありません。何を「効いた」と数えた研究かを確認し、本文で分からなければ疑問として残します。
同じ話がたくさん出ても、別々の確認とは限らない
動画、まとめ記事、SNSの投稿がすべて同じ発表を紹介しているなら、独立した研究が何本もあることにはなりません。医師の肩書きや大学の名前は情報源を確認する手がかりですが、個々の主張の根拠まで保証するものではありません。
一つの新しい研究だけで結論を決めず、ほかの研究を含めた解説や診療ガイドラインと照らし合わせます。古い情報が必ず誤り、新しい情報が必ず正しいというわけでもありません。研究計画の登録と結果の発表は区別してください。
「病院に騙されるな」「マスクは意味がない」と言われたら
治療への不信は、具体的な疑問に戻して確かめる
「病院は信用できない」という言葉だけでは、どの治療の何を問題にしているかが分かりません。「効果の説明が納得できないのか」「副作用や費用が心配なのか」「代わりに何を勧めているのか」と、確かめられる内容へ分けます。病院側の説明を理解できなかった経験まで否定する必要はありません。
例えば、治療の副作用があるという事実だけで、その治療を受けない方がよいとは判断できません。どの病気の、どの状態の人が、治療を受けた場合と受けなかった場合にどうなるか、ほかの選択肢は何かを聞きます。がんの治療方針に納得できない場合は、セカンドオピニオンで別の医師の意見を聞く方法もあります。6)
「病院を疑うべきだ」という説明の後に、特定商品の購入や治療中止を勧めていないかも確認します。販売目的があるだけで誤りと決めるのではなく、勧める側の方法にも同じように根拠・不利益・費用の説明を求めます。誰の説明にも疑問を持てることと、根拠の強さをすべて同じに扱うことは違います。
マスクは「どの場面で、何を防ぐ話か」をそろえる
「マスクは意味がない」という主張なら、着用者自身への感染を減らす話か、周囲へ広げるのを抑える話か、病院内か屋外かを確認します。研究の対象や着用条件が違えば、数字だけを並べても比較できません。「完全には防げない」ことだけから、効果がまったくないとは結論づけられません。
厚生労働省は、医療機関を受診するときや、高齢者など重症化リスクが高い方が多く入院・生活する医療機関・高齢者施設への訪問時に、マスクの着用を推奨しています。情報を見るときは、このように対象と場面が書かれているかを確認してください。7)
着用が難しい事情がある場合は、ネット上の賛否を決着させるより、受診・訪問先へ事情を伝えて対応を相談します。研究で考える効果、現在の公的な推奨、その場所の利用ルールを分けると、次に確かめることが整理できます。
「分からない」で止めて、相談へ回してよい
専門用語や英語が難しくても、家族が論文を読み切って正誤を証明する必要はありません。「元の資料が見つからない」「対象が親と違う」「効果と副作用が分からない」といった状態を、そのまま相談できます。見つからないことだけで効果がないと証明できたことにもなりません。
| 書くこと | 記入例 |
|---|---|
| 確かめたいこと | この薬を今の治療に足してよいと言える根拠はありますか |
| 情報そのもの | 投稿URL、記事の印刷、商品表示の写真 |
| 本人の状況 | 病名、今の薬、すでに使っている量と期間 |
| 変えようとしていること | 薬を休む、食事を減らす、検査を受けないなど |
国立がん研究センターも、気になるネット情報を印刷して医療スタッフへ相談する方法を案内しています。「先生と違うことが書いてあった」と対立の形にせず、「この条件は自分にも当てはまりますか」と、確かめたい内容を示すことができます。2)
親を論破する道具にせず、次の行動を決めるために使う
家族が調べた情報を並べても、本人の考えがすぐ変わるとは限りません。受診で嫌な思いをした、今の治療がつらいなど、根拠の説明とは別の困りごとがある場合もあります。「何をよくしたくて探しているか」を聞きながら、自分が同意していない部分は曖昧にしなくて構いません。
「今日は結論を出さず、薬を変える前に確認したい」「私は購入は手伝わない」と伝えることも選択肢です。家族だけで説得を担い続けず、現在の医療職へ困りごとを共有してください。体調が悪い、治療をやめようとしている場合は、調査が終わるのを待たず相談します。
情報を集める目的は、信じる人と信じない人を分けることではなく、本人に合う選択を考えることです。分かったこと、まだ分からないこと、すでに行っていることを分けて伝えれば、相談の出発点を作れます。
出典・参考資料
- 厚生労働省eJIM「情報の見極め方」
- 国立がん研究センター「情報を集めるときに大切にしたいこと」
- PMDA「おくすりサーチ」
- 消費者庁「健康食品(一般の方向け)」
- 国立がん研究センター「がんと民間療法」
- 国立がん研究センター「セカンドオピニオン」
- 厚生労働省「マスクの着用について」
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
まず「何に、どんな効果があると言っているか」を一文にし、元の資料と公的な解説を確認します。研究の対象や使い方が親に当てはまるかも大切です。家族が専門家になる必要はありません。分からない点と実際に使っている物を整理して、医師・薬剤師などへ相談できます。