介護
専門家の回答
ミネラルを含む塩でも、量を気にせず使ってよいわけではない

塩に含まれるナトリウムは、身体に必要なミネラルの一つです。しかし、必要な成分であることと、多くとるほどよいことは違います。食塩のとりすぎは血圧の上昇などに関わります。1)
ほかのミネラルを含む商品でも、ナトリウムの摂取量を無視できる理由にはなりません。「天然」「海由来」「ミネラル入り」という言葉だけで選ばず、成分表示と実際に使う量を確認します。商品に含まれる成分の違いと、無制限にとってよいという主張は分けて考えましょう。
見るのは「食塩相当量」と、その表示が何グラム当たりか
栄養成分表示では、ナトリウムの量を食塩相当量として示します。商品ごとに100g当たり、1食当たりなど表示の単位が異なるため、数字だけを比べず、実際に使う量に合わせて考えてください。2)
| 確認するところ | 考え方 |
|---|---|
| 表示の単位 | 100g当たりか、1回分当たりかを見る |
| 食塩相当量 | 使う量に換算して比べる |
| 使い方 | 少ない表示でも多く使えば摂取量は増える |
| 食事全体 | 塩だけでなく、しょうゆ・汁物・加工食品等も含める |
例えば「100g当たり食塩相当量90g」の商品を2g使うなら、食塩相当量は1.8gという計算です。これは表示の読み方を示す仮の例で、実在商品の値や1回の推奨量ではありません。少量を量れる器具で、普段どれくらい使っているか一度確かめる方法もあります。
「ミネラルを足せば帳消し」とは考えない
カリウムをとることと、食塩を減らすことは別々に考える必要があります。カリウムを含む食品や調味料だからと、塩分を気にせず増やすわけにはいきません。腎臓の働きが低下している方などは、カリウムの摂取について個別の確認も必要です。3)
塩の種類を替える前に、主治医から受けている食事の指示を確認します。「健康によいと聞いたので塩を替えた」と、商品や写真を見せて相談してください。一般的な健康情報を、持病がある親にそのまま当てはめないことが大切です。
正しい説明をすれば、すぐ納得するとは限らない
親が「健康のためによいことをしている」と信じていると、家族の訂正を、自分の考えやこれまでの努力を否定されたように受け取る場合もあります。丁寧に言い直せば必ず伝わる、という話ではありません。話すたびにもめてしまい、どう切り出せばよいか悩む家族もいるでしょう。
「何をよくしたくて使い始めたの?」と、期待や心配を聞く方法はあります。ただし、気持ちを聞くことと「その塩なら多くとって大丈夫」と同意することは別です。例えば「血圧をよくしたい気持ちは分かる。でも量を増やしてよいかは確認したい」と、目的と方法を分けて伝えられます。ここでの会話は一般的な例です。
論文や説明動画を次々と送り合って対立が強くなるなら、その場で結論を出そうとせず区切って構いません。考えを変えさせられないことを家族の責任にせず、今の摂取や治療に何が起きているかへ話を戻します。
まず共有したいのは、使う量・体調・薬の変更
| 話したいこと | 聞き方・伝え方の例 |
|---|---|
| 量を増やしたか | 前よりどれくらい使っている?食事全体で確認したい |
| 持病の指示との関係 | この商品の表示を見せて、今の指示と合うか聞いてみたい |
| 薬をやめようとしていないか | 薬で心配なことがある?やめる前にその心配を相談したい |
| 体調が変わっていないか | 最近いつもと違うことはある?あるなら先に相談しよう |
一度に全部を聞いて取り調べのようにする必要はありません。分かる範囲で商品表示や実際の使い方を共有し、受診時に持っていけるようにします。親の情報を本人に無断でSNSへ載せて、第三者に説得を求めることは避けましょう。
「今はやめたくない」と言われても、量を増やすことや治療を変えることへの懸念は具体的に伝えられます。反対の意見があること自体を隠すより、「この点が心配で、ここを確認したい」と範囲を絞ります。
医師への不信があるときは、肩書きだけで説得しようとしない
「医師に聞けばよい」と言うだけでは、話が進まないこともあります。副作用が怖い、過去の説明に納得できない、医療そのものへの不信があるなど、どこが引っかかっているかを聞ける範囲で確かめます。話したくないことを無理に聞き出す必要はありません。
薬剤師や別の医療職へ相談する方法もありますが、相手を替えれば必ず受け入れられるわけではありません。家族だけで「何を使っているかを聞くと怒る」「薬をやめると言っている」と相談し、次の関わり方を考えることもできます。本人が信頼する人を使って圧力をかけるのではなく、疑問を話せる場を探します。
家族も同じ塩を使うことや、購入を引き受けなくてよい
「あなたの健康にもよい」と勧められた場合も、家族が同じ量を食べたり、購入費を出したりする必要はありません。「私は量を増やさない」「その購入は手伝えない。でも体調の相談は手伝える」と、自分ができることを区切って構いません。
共通の料理で使う量が増えて困っているなら、家族の食事まで同じ方針にしないことを話し合います。相手の健康法について毎食議論し続ける必要はなく、必要に応じて食事の準備を分けるなど、自分の生活を守る方法も考えます。
関係を保つために我慢を続けなければならない、ということではありません。話し合いが負担なら距離や時間を置き、ほかの家族や支援者へ相談してください。できる範囲で連絡を保つことと、すべてを引き受けることは別です。
体調や治療への影響があるときは、議論が終わるのを待たない
薬を自己判断でやめようとしている、食べ方を極端に変えている、体調が悪くなっている場合は、情報の真偽を家族内で決着させるより先に医療機関へ相談します。商品名、使う量、いつから変えたか、処方薬の状況を伝えてください。健康食品などを処方された治療の代わりにする判断は避けます。4)
家族が勝手に薬の量を変えたり、塩を一切とらせない食事へ変えたりすることもしません。本人の現在の指示と体調に沿って相談します。塩をめぐる考え方が違っていても、「今、身体や治療に何が起きているか」を確認するところから始められます。
出典・参考資料
情報確認日:2026年9月10日
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
ミネラルを含む塩でも、どれだけとっても安全とはいえません。商品名より食塩相当量と使う量を確認し、持病があれば主治医の指示に沿って相談しましょう。考えを変えさせることだけを目標にせず、使う量や体調、薬の変更を話せる関係を、家族が無理のない範囲で保つことを考えます。