介護

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2026.10.16 作成

2026.10.16 更新

親が車をぶつけた…認知症が心配なとき、家族は何を確認する?

親が車をぶつけました。認知症のサインではないかと心配です。本人は「たまたま」と言いますが、家族は何を確認し、どこへ相談すればよいのでしょうか。

専門家の回答

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事故を起こしたことだけでは、認知症とは判断できません。事故の状況に加えて、運転や普段の生活で以前と違うこと、体調や薬の変化を整理して、かかりつけ医や安全運転相談窓口へ相談します。安全に不安がある間は、本人が運転せずに移動できる方法も考えましょう。

車をぶつけたことだけで、認知症とは判断できない

 

親が車をぶつけたと聞くと、「認知症が始まったのでは」と心配になるかもしれません。しかし、事故歴だけで認知症の有無を決めることはできません。事故に至る事情はさまざまで、視力や体調、薬の影響なども含めて考える必要があります。2)

まずはけがや事故への対応を優先します。事故直後でけが人がいる場合は救急要請、事故の通報など必要な対応を行ってください。その後、運転を再開してよいか不安があるときは、本人に運転して確かめてもらうのではなく、医師や安全運転相談窓口へ相談します。

新しい研究で分かったこと:診断前の事故は少し多いが、早期発見の目印には不十分

米国ブラウン大学のNina R. Joyce氏らは、69歳以上で2010〜2017年にアルツハイマー病および関連する認知症(ADRD)と診断された43,115人について、診断前の警察記録に残る自動車事故を調べました。認知症の診断がない群や、別の病気と診断された群と比較した研究です。2026年8月6日に公表されました。1)

各期間に事故を経験した人の割合
診断前の期間 ADRD群 比較群の範囲
6か月間 2.99% 2.31〜2.53%
1年間 5.26% 4.18〜4.65%
3年間 13.64% 11.29〜12.37%

差は統計的に有意でしたが、絶対的な差は小さく、診断に近づくにつれて事故が一貫して急増する傾向もありませんでした。著者らは、事故歴だけを早期発見のための集団のスクリーニングに使うには不十分としています。事故をきっかけに個別の認知機能評価を行うことの有用性も、この研究で確立されたわけではありません。1)

また、運転距離や頻度を測っていないため、同じ距離を走った場合の事故リスクの比較ではありません。対象は米国の高齢者で、日本の親世代へ数字をそのまま当てはめることもできません。「事故を起こすと認知症になる」「事故がなければ認知症ではない」という結論ではありません。1)

家族は、事故の状況と普段との違いを分けてメモする

監修者の家族としての経験:夫の親が慣れない道を運転するとき、周囲を十分に確認せず右折するなど、事故になりそうで不安を感じたことがありました。

この経験を認知症によるものと判断したわけではありません。相談するときも、「事故を起こした」と「事故になりそうで不安だった」を区別し、実際に見た場面を伝えます。

相談するときは、「危ない運転だった」「年のせいだと思う」という評価だけでなく、いつ・どこで・何が起きたかを伝えます。本人の説明と、家族が実際に見たことも分けておくと、相談先が状況を把握しやすくなります。

相談のために整理したいこと
場面 記録する例
今回の事故 日時、場所、駐車中か走行中か、本人が覚えている状況
運転の変化 慣れた道で迷う、標識の見落とし、車庫入れの失敗など、以前と違う具体的な場面
体調・薬 見えづらさ、眠気、体調の変化、新しく使い始めた薬の有無
普段の生活 約束や支払い、服薬などで、以前にはなかった困りごとがないか

この表は、何項目当てはまれば認知症かを判定するものではありません。運転の変化については国立長寿医療研究センターの家族向け資料も参考になりますが、家族だけで診断や運転の可否を決めるための点数表としては使わないでください。記録がそろうまで相談を待つ必要もありません。2)

かかりつけ医と、安全運転相談窓口へつなぐ

認知機能や体調が気になる場合は、かかりつけ医へ事故と生活の変化を伝えます。お薬手帳も持参し、必要に応じて専門の診療につなげてもらいましょう。薬の影響が心配でも、家族の判断で処方薬を中止せず相談してください。2)

運転については、各都道府県警察の安全運転相談ダイヤル「#8080」でも相談できます。本人だけでなく家族からの相談も対象です。つながらない場合は、都道府県警察の安全運転相談窓口へ直接連絡してください。受付時間などは地域の案内を確認します。緊急時の事故通報用の番号ではありません。3)

受診や相談には、家族の送迎やタクシーなど、本人が運転せずに行ける方法を考えます。「近所なら大丈夫」「家族が横に座れば安心」と自己判断で条件を付けて運転を続けるより、心配な点を具体的に伝えて確認しましょう。2)

「認知症でしょ」と問い詰めず、心配な出来事を伝える

「ぶつけたのは認知症だから」と決めつけられると、本人が話しにくくなるかもしれません。「この前ぶつけたことが心配。見え方や体調も含めて、一緒に相談したい」など、実際の出来事と家族の心配を分けて伝える方法があります。ここで示す会話は一般的な例で、監修者の実体験ではありません。

本人が車を使う理由も確認します。買い物や通院、家族の送迎があるなら、相談までの移動を誰がどう支えるかを具体的に考えます。話し合いの工夫や返納後の生活については、親への免許返納の切り出し方の記事で詳しく扱っています。本稿では、事故をきっかけに健康と運転の状態を相談するところまでを整理します。

事故歴だけで決めず、気になる変化を相談する

今回の研究は、事故だけで認知症を早期発見できると示したものではありません。一方、家族が感じた運転や生活の変化を、そのままにしてよいという意味でもありません。事故の状況、普段との違い、本人の困りごとを分けて伝え、健康面と運転面の相談につなげましょう。

出典・参考資料

  1. Joyce NRら「A Motor Vehicle Crash as an Early Signal of Alzheimer’s Disease and Related Dementias」(2026年8月6日)
  2. 国立長寿医療研究センター「認知症高齢者の自動車運転を考える 家族介護者のための支援マニュアル」第2版
  3. 警察庁「安全運転相談窓口について」

情報確認日:2026年9月11日

この記事を監修した人

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野崎理香 / 正看護師

正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。

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