介護
目次
- 1. 高齢の親はいつ避難する?「高齢者等避難」を目安に早めに動く
- 2. どこへ避難する?自宅の危険度と親に必要な環境を確認する
- 2-1. まずは親の家のハザードマップを見る
- 2-2. 安全な親戚宅なども候補にする
- 3. 移動に不安があるときは、誰とどう避難するかを決める
- 3-1. 家族だけで難しい場合は、事前に支援を相談する
- 3-2. 連絡先と避難先を、本人が確認できる形で残す
- 3-3. 訪問看護の公開記録にも、移動を支えた事例がある
- 4. 親が「避難したくない」と言うときに話し合いたいこと
- 5. すでに外への移動が危険な場合は、安全確保を優先する
- 6. よくある質問
- 6-1. 福祉避難所には直接行ってもよいですか?
- 6-2. 持ち物は何を優先して準備すればよいですか?
- 7. まとめ:親の避難を、出発から到着まで具体的に考えよう
専門家の回答
高齢の親はいつ避難する?「高齢者等避難」を目安に早めに動く

警戒レベル3「高齢者等避難」は、避難に時間がかかる人が危険な場所から避難を始める段階です。「高齢者は準備だけしておけばよい」という意味ではありません。移動を手伝う家族も、この段階で一緒に動けるよう準備します。1)
警戒レベル4「避難指示」までには、危険な場所にいる人は全員避難する必要があります。レベル5「緊急安全確保」が出るまで待たないでください。すでに外への移動が危険な場合は、後述の安全確保を優先します。1)
また、自治体の発令を待つことだけが判断基準ではありません。予報や周囲の状況も確認し、早めに避難することが必要です。気象庁などの防災気象情報と、自治体の「高齢者等避難」「避難指示」は別の情報なので、両方を確認しましょう。1)3)
親の家から避難先までの時間は、地図上の徒歩時間だけでは見積もれません。着替えやトイレ、玄関までの移動、車への乗り降りにも時間が必要かもしれません。「歩けるから大丈夫」で終わらせず、出発までに何を手伝う必要があるかも考えておきましょう。
どこへ避難する?自宅の危険度と親に必要な環境を確認する
まずは親の家のハザードマップを見る
自治体のハザードマップで、親の家に浸水や土砂災害の危険があるかを確認します。色が付いていない場所でも、周囲より低い土地や崖の近くなどは注意が必要です。地図だけで判断しづらければ、自治体の防災担当窓口に確認しておきましょう。2)
安全な場所にいる人まで、一律に外へ避難する必要はありません。ただし、洪水時に自宅で安全を確保するには、次の条件を確認する必要があります。2)
- 洪水による家屋の倒壊・崩落のおそれが高い区域の外にある
- 想定される浸水の深さより高い場所で過ごせる
- 水が引くまで過ごせるだけの水・食料などがあり、生活を続けられる
親が上の階へ移動できるか、停電や断水が続いた場合に必要な介助ができるかも考えましょう。「2階があるから安全」とは限りません。土砂災害の危険がある区域では、原則として自宅の外への避難が必要です。1)2)
安全な親戚宅なども候補にする
避難先には、自治体が指定した場所のほか、安全な地域の親戚・知人宅、ホテルなども考えられます。受け入れや予約について、あらかじめ相談・確認しておきましょう。1)
自治体の施設を選ぶときは、「近くの学校だから」と決めず、今回の水害に対応する場所か、実際に開設されているかを確認します。「指定緊急避難場所」は差し迫った危険から逃れる場所、「指定避難所」は避難生活を送る施設で、両方を兼ねる施設もあります。1)
そのうえで、親に必要な環境も確認します。例えば、入口やトイレまでに大きな段差はないか、立ち座りを手伝えるか、横になって休めるか、といった点です。場所の名前だけを決めるより、そこで過ごす様子を親と一緒に考えると、困りそうなことを具体的にできます。
移動に不安があるときは、誰とどう避難するかを決める
避難先が決まったら、自宅を出て到着するまでの段取りを整理しましょう。家族で話し合う際は、次の表をメモ代わりに使えます。本人の歩行状態や生活に合わせて書き換えてください。
| 決めること | 具体的に確認する内容 |
|---|---|
| 行き先 | どこへ行くか。使えない場合の候補はあるか |
| 動き始める判断 | 誰が予報・避難情報を確認し、親へ連絡するか |
| 移動手段 | 杖や歩行器は必要か。車などを使う場合、乗り降りをどう手伝うか |
| 手助けする人 | 誰が付き添うか。その人が来られないときは誰に連絡するか |
| 連絡方法 | 家族・支援者の電話番号、出発と到着を知らせる相手 |
晴れた日に無理のない範囲で、玄関の段差や移動経路を確かめておくと、必要な手助けを考えやすくなります。車を使う場合も、雨が強くなってから迎えに向かう計画にはしないでください。豪雨時は車での屋外移動も危険です。1)
訪問看護で関わった方の中には、杖や歩行器を使い、近くのスーパーまでの短い距離なら何とか歩ける、という方がいました。実際に被災した場面ではありませんが、台風が近づくと、こうした方の避難をどう支えるか、対策を考える必要を感じることがありました。
家族だけで難しい場合は、事前に支援を相談する
家族が遠方にいる、本人だけでは外へ出られないといった場合は、平時から自治体の防災・福祉担当窓口に相談しましょう。日頃のケアマネジャーなどにも、移動で困る点を共有しておくと、相談内容を整理しやすくなります。
自治体では、自力で避難することが難しい人の「避難行動要支援者名簿」や、一人ひとりの避難を具体化する「個別避難計画」の取り組みが進められています。対象や手続き、地域でどのような支援を相談できるかを確認してください。4)
台風などで訪問に行けなくなる可能性が高いときは、事前にショートステイを申し込んだり、遠方に住むご家族に来てもらったりしていました。訪問できない間をどう過ごすかも、前もって考えていたことの一つです。
これは訪問看護で関わった中での対応例です。親の場合にどのような準備ができるか、訪問が難しくなりそうなときはどうするかを、日頃の支援者と早めに話し合っておきましょう。
連絡先と避難先を、本人が確認できる形で残す
認知機能に問題のない方には、連絡先や避難先を書いたものを冷蔵庫に貼っておく対応もしていました。また、こうした支援が必要な方のリストを作り、連絡や確認ができるようにしていました。
連絡先を残すときは、本人がどこを見ればよいか分かることも確認したい点です。紙を見て一人で行動するのが難しい場合は、誰が連絡し、必要な手助けをするかまで考えておきましょう。
訪問看護の公開記録にも、移動を支えた事例がある
ウィル訪問看護ステーションがnoteで公開した2019年の台風19号の記録では、一人で避難先へ行けない人などに、看護師が移動の支援を行ったことが報告されています。一方、台風前には訪問の振替やキャンセルも調整していました。これは当時の一事業所の対応です。「当日は訪問看護師が来てくれる」と決めつけず、利用中の事業所と対応を確認しておくことが大切です。7)
親が「避難したくない」と言うときに話し合いたいこと
親が避難をためらうときは、何が気がかりなのか聞いてみましょう。家を離れることへの不安なのか、トイレや寝る場所、移動の負担が心配なのかで、家族が確認することも変わります。
例えば、「何が一番心配?」「トイレが使いやすい場所ならどうかな」と、具体的な条件を一つずつ話す方法があります。これは声かけの例であり、誰にでも同じ言葉が合うわけではありません。本人の希望も踏まえて行き先を考えましょう。
こうした話し合いは、雨が強くなる前にしておきたいことです。危険が迫ってから長い説得を続ける状況にならないよう、普段の会話の中で「大雨のときはどうしようか」と話題にしてみてください。
訪問看護では、認知機能の低下が軽くても、普段の決まった行動から外れると難しさがある方にも関わってきました。日常生活の様子だけを見て、台風のときにも一人で判断して動けると考えてよいのか、備えを考える場面がありました。
慣れた行動ができることと、避難のような普段と違う行動を進められることは、分けて確認したい点です。拒んでいるように見えても、説明が伝わっているか、次に何をすればよいか分かるかを確かめ、誰がそばで手伝うかも考えましょう。
すでに外への移動が危険な場合は、安全確保を優先する
道路が冠水しているなど、外に出るとかえって危険な状況では、無理に予定の避難先へ向かわないでください。自治体の情報や周囲の状況を踏まえ、安全に移れる範囲で、自宅の上階など、その時点で少しでも安全な場所へ移る緊急的な対応を考えます。土砂災害では崖から離れた部屋へ移るなど、危険の種類でも対応が異なります。6)
これは、安全な避難が難しくなった場合の対応で、安全を保証するものではありません。移動に手助けが必要な親ほど、雨が強くなる前に動けるよう備えておくことが大切です。
よくある質問
福祉避難所には直接行ってもよいですか?
誰でもそのまま行けば利用できるとは限りません。福祉避難所は配慮が必要な人を受け入れるための場所で、受け入れ対象者を事前に調整し、直接避難につなげる取り組みもあります。親の場合はどこへ、どのような手順で避難するかを、事前に自治体へ確認しましょう。5)
持ち物は何を優先して準備すればよいですか?
基本の防災用品に加え、薬・お薬手帳、眼鏡や補聴器、普段の歩行補助具、必要な介護用品など、親が普段使っている物から考えましょう。荷物を持つ人と親の移動を手伝う人も確認しておくと、当日の動きを整理できます。持ち物の確認には、高齢者の地震対策・防災グッズの記事も参考にしてください。
まとめ:親の避難を、出発から到着まで具体的に考えよう
高齢の親の避難は、普段歩けるかどうかだけでは決められません。自宅の危険度を確認したうえで、出発の準備、移動中の手助け、避難先での生活まで考える必要があります。まずは親と一緒に行き先を一つ挙げ、「誰と、どうやって行くか」を話してみましょう。家族だけで難しい点が見つかったら、雨が強くなる前の段階で自治体や日頃の支援者に相談し、具体的な準備につなげてください。
出典・参考資料(2026年9月9日確認)
- 内閣府・消防庁「新たな避難情報に関するポスター・チラシ」:避難のタイミング、行き先、屋外移動の危険。
- 内閣府「避難行動判定フロー」:自宅の災害リスクと屋内安全確保の条件。
- 気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」:防災気象情報の体系。
- 内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」:名簿・個別避難計画の取り組み。
- 内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン 主な改定のポイント(令和3年5月)」:受け入れ対象者の調整と直接避難。
- 内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」:緊急安全確保の行動例。
- ウィル訪問看護ステーション「台風19号の振り返り」(note、2020年1月24日公開):2019年の台風対応の記録。代表者のFacebook投稿をもとにまとめた記事。本文では要約して紹介。
この記事を監修した人
野崎理香 / 正看護師
正看護師として、がん専門センターおよびリハビリ病院に勤務後、訪問看護の現場に従事。
日々のケアを通じて、「本当は聞きたいことがあるのに、時間に追われて質問できない」という利用者様の声に直面し、その課題を解決するため、介護情報サービス「ケアポケ」の立ち上げに参画。
現場での実体験をもとに、看護や在宅ケアに関する実践的な情報提供と記事の監修に取り組む。
避難に時間がかかる方は、危険な場所にいる場合、警戒レベル3「高齢者等避難」で避難を始めます。雨が強くなる前に、行き先・移動手段・手助けする人を具体的にしておきましょう。自宅の危険度と、親が無理なく移動・生活できる条件を一緒に考えることが大切です。1)