介護
専門家の回答
高齢者はなぜ脱水症になりやすいのか

人は加齢によって体内の水分量が徐々に減少していきます。そのため若い人よりも脱水症になるリスクが高まります。
また、加齢によって感覚機能が低下し、のどの渇きを感じにくく水分を摂らずに過ごしていて、気がついたら脱水症に…というケースがよくあります。
さらに、夜間トイレへ行くのを避けるために水分補給を制限するという方もいらっしゃいます。
このように高齢者が脱水症になりやすい原因はさまざまです。
脱水症を予防するには?
こまめに水分補給をする
家の中でゆっくりしている状態であれば1時間にコップ一杯(100ml程度)のお水やお茶を飲むことを心がけましょう。
発汗時や喉が乾いたと感じた時には、「経口補水液」をこまめに1~2口飲むことがおすすめです。
常にすぐ手に届くところに飲み物を置いておいたり、食事中、入浴前後、など時間を決めたり定期的に水分補給を促してあげると良いでしょう。
また飲み物だけでなく、食事からの水分摂取も効果的です。スープや果物、ゼリーなどで水分を摂ることを心がけましょう。
経口補水液とは
経口補水液とは水分・塩分・糖分が最適バランスに配合された飲料です。
水分と共に必要な成分が含まれていて、汗をかいて水分と共に塩分も失った体に素早く吸収され、脱水を防ぐのに適した飲み物です。
ペットボトルで簡単に飲めるものや、パウダータイプ、ゼーリー状で嚥下機能が低下した高齢の方も飲みやすいものも販売されていますので、ご自宅に常備しておくのがおすすめです。
また、経口補水液がない場合も自宅で作ることができます。
【経口補水液の作り方】
容器に水500ml、砂糖20g、食塩1.5gを入れ、よくかき混ぜれば完成です。レモン汁やグレープフルーツ果汁を加えると飲みやすくなります。
寝る前と起きた時にコップ一杯の水分補給
夜間にトイレに行きたくなるのを避けるため、水分を控える方もいますが、就寝中はコップ1杯程度の汗をかくと言われています。
また、夏は高温多湿により脱水のリスクが高まります。
寝室に飲み物を用意しておいて、すぐに水分補給ができるようにしておくと良いでしょう。
部屋の湿度・温度を調整
暑い日はエアコンを使用して室内の温度を適温に保つことが重要です。
エアコンを使用せずに就寝することによって脱水症だけでなく熱中症を引き起こすリスクがあるため注意しましょう。
エアコンが嫌い、節電のためにとエアコンの使用を避ける方もいますが命に関わる危険もあるため積極的に使用して室内環境を整えましょう。
エアコンが嫌いという方には、エアコンを使用することで快適な室温になることを説明したり、熱中症や脱水症のリスクを軽減できることを伝えてみましょう。
また、快眠を促進したり、体温調節をサポートし体の負担を軽減する効果もあるなどエアコンの利点を説明してあげることも効果的です。
エアコン嫌いの理由が、操作が難しいということも考えられますので操作方法を簡単に理解できるように説明しましょう。
また、静音性や省エネ機能など、本人の好みの機能がついたエアコンを選ぶことも利用意欲を高めることができます。
脱水症のサイン
爪を押してセルフチェック※
①手の親指の爪の色がピンクであることを確認
②手の親指の爪を逆の指でつまみます。
③つまんだ指を離した時、白かった爪の色がピンクに戻るのに3秒以上かかれば、脱水症を起こしている可能性があります。
尿の色を見てセルフチェック※
①普段通りに水分をとりましょう。
②問題はありませんが少し給水してもいいかもしれません。コップ1杯でいいので水分をとりましょう。
③1時間以内に約250mlの水分をとりましょう。屋外、あるいは発汗していれば500mlの水分をとりましょう。
④今すぐ250mlの水分をとりましょう。屋外、あるいは発汗していれば500mlの水分をとりましょう。
⑤今すぐ1000mlの水分をとりましょう。この色より濃い、あるいは赤/茶色が混じっている場合は脱水症状以外の問題が考えられます。すぐ病院に行きましょう。
脱水症になってしまった時の対処法
軽度の場合
軽度の症状の場合、皮膚や唇のかさつきがあったり、ぼーっとしたりめまいやふらつきなどの症状が見られます。
普段の水分補給は水やお茶で良いですが、脱水症になったときには水分とミネラルを補う必要があるため、水分と塩分の両方を摂取できる経口補水液を飲むのがおすすめです。
水分補給をしたら室内の涼しい場所で休息をとりましょう。
中度の場合
中度の脱水症の場合、頭痛や吐き気などの症状が見られます。軽度場合と同じように経口補水液を摂取しましょう。
もし下痢の症状がある場合は排泄する度に水分を摂取しましょう。嘔吐したときは、吐いた量と同じくらいの経口補水液を飲みましょう。下痢や嘔吐で水分が失われるため、水分補給がより重要になります。
高度の場合
脱水症が重症化し高度の脱水症の状態になると、意識がもうろうとしたり、話しかけても反応がなくなることがあります。
このような場合、口からの水分補給だけでは対処できない可能性が高く、点滴などの医療処置が必要になるため、速やかに病院を受診しましょう。
特に意識がなくなったり、痙攣を起こしている場合は命に関わる危険があるため、速やかに医師の処置を受けましょう。
まとめ
脱水症は自覚症状が遅れ、症状が進行すると急激に体調が悪化することがあります。さらに、脱水症状は脳梗塞や心筋梗塞などの発症につながり、命を落とす危険性もあります。
また、脱水症は糖尿病や排尿障害などの病気の前兆となることもありますので、早期に発見することが重要です。
脱水症にならないために、普段から水分補給の習慣を持ち、高齢者には周りの人が声掛けを行い促してあげることで予防していきましょう。
出典
高齢になると暑さやのどの渇きに気づきにくくなり、脱水症になってしまうケースが多く心配ですよね。
脱水症の予防方法や簡単に脱水かどうかをチェックする方法をご紹介します。