お金のこと
専門家の回答
親や家族の介護で会社を休む人は増加傾向に
昨今の高齢化現象に伴い、介護を必要とする人が増える中で、家族への介護の負担も増えてきています。
要介護(要支援)の認定者数は、平成27年4月現在608万人で、この15年間で約3倍と増加し、また近年増加のペースが再び拡大しています。※1 また、在宅介護は時間や労力を必要とするため、親や家族の介護で仕事を休む必要が生じてしまう人は増加傾向にあります。
介護休業給付金とは
介護休業給付制度は、介護のために仕事を休みその間の収入の補償を受けることが出来る制度のことを指します。
また介護は育児と異なりなかなか終わりが見えず正確な予測が立てられないため、長期化することはしばしば起こり得るもの。
そのため、介護休業給付制度は介護の負担を軽減し、ストレスや疲れを軽くすることで、介護者が復帰時に健康で働きやすい環境を整備することにもつながります。
介護休業とは
介護休業とは、要介護状態の家族を介護するため仕事を休むことができる制度です。
介護休業は、介護保険法によって定められており、要介護状態の家族を介護するため、安としては2週間以上仕事を休まなければならない状態のときに取得ができます。
介護休業を利用する前提条件として、介護休業後に職場復帰をする方が対象となり、介護休業後退職予定の方については介護休業は取得できません。
介護休業給付金の受給対象※2
介護休業を取得できても、介護休業給付金を受給するためには定められている条件を全て満たしていることが必要です。
介護休業給付金の受給対象について詳しく解説していきます。
介護休業給付の支給対象となる介護休業
介護休業給付金は以下のいずれかを満たす介護休業が対象になります。
- 2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族を介護するための休業である
- 被保険者が事業主に休業期間の申請を行い取得した休業であること
①2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族を介護するための休業である
怪我や病気によって、常時介護が必要とする家族を介護するための休業である必要があります。
また、その期間は2週間以上とし、「家族」は以下のいずれかが対象です。
- 配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
- 父母(養父母を含む)
- 子(養子を含む)
- 配偶者の父母(養父母を含む)
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
②被保険者が事業主に休業期間の申請を行い取得した休業であること
事業主に休業期間の初日と末日を明らかにして、休業の申請を行う必要があります。
また、介護休業は産前・産後休業中には開始が出来ないことにも注意が必要です。
介護休業中に他の家族に対する介護休業、産前・産後休業、育児休業が始まった場合、介護休業は新たな休業の開始日の前日までで終了となり、その日以降の期間は介護休業給付金の対象外となってしまいます。
介護休業給付の受給要件
介護休業を開始する前の2年の間に、12か月以上雇用保険の被保険者期間が必要です。
介護休業を開始した日より前の2年間に、被保険者期間が12か月ない場合であっても、当該期間中に本人の疾病等がある場合には受給の要件が緩和され、受給要件を満たす場合があります。
ここでいう「12か月」とは、介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月とすると定められています。
有期雇用労働者の場合は受給要件が異なる
有期雇用労働者の場合は無期雇用労働者(契約期間の定めのない方)と介護休業給付の受給要件が異なります。
有期雇用労働者は、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないことが必要となります。
介護休業給付の申請方法※2
介護休業給付金の申請先は在職中の事業所を管轄するハローワークになります。
ハローワークの開庁時間は8:30~17:15までですので注意しましょう。
下記に必要書類をまとめています。
受給資格確認に必要な書類
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 賃金台帳、出勤簿又はタイムカード(①に記載した賃金の額及び賃金の支払い状況を証明することができる書類)
支給申請に必要な書類
- 介護休業給付金支給申請書 ※個人番号欄にマイナンバー(個人番号)を記載ください。
- 被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
- 住民票記載事項証明書等(介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類)
- 出勤簿、タイムカード等(介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類)
- 賃金台帳等(①の申請書に記載した支給対象期間中に支払われた賃金の額及び賃金の支払い状況、休業日数及び就労日数を確認できる書類)
※上記の他、対象介護休業期間中に対象家族が死亡した場合には、必要に応じて戸籍抄本、死亡診断書、医師の診断書などを添付してください。
介護休業給付の受給金額について
介護休業給付の支給額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で算出されます。
給付額には上限があり、介護児休業期間中に賃金が支払われていると減額される場合があります。
給与満額での支給ではないですが、介護のために休業することを支援する制度になります。
まとめ
介護休業給付は、介護を必要とする家族のために介護休業を取得する際に支給される給付金です。
介護は身近な人を大切にするための重要な役割ですが、同時に仕事も大切ですが、介護と仕事の両立はなかなか難しく、特に緊急のケースではどちらかを選ばなければならない場合もあるでしょう。
介護休業給付制度を利用することで、介護が必要な家族を支えるための休暇を取得するための後押しとなり、休暇中に支給される一定の給付金があることで、仕事を休んだ分の収入減少による不安が和らぎます。介護と仕事の両立がしやすくなり、結果的に仕事を続けながら家族を支えることができるようになるので積極的に利用をしましょう。
出典
ムリなくできる親の介護 使える制度は使う、頼れる人に頼る、便利なツールは試す!
「介護でこれだけはやっておいたほうがいいこと」を教えます。これは誰にでも、明日にでも起こり得ることです。 本書では親しみやすい四コママンガとともに、同じ境遇に身を置かれ悩む人が実践できる介護のノウハウや「ストレスをため込まない工夫」を紹介します。
仕事と介護の両立は非常に難しいことです。
そんな時に利用できるのが「介護休業給付」という制度。今回は在宅介護をされている方々が、介護休業給付制度について理解し、活用することで、より充実した介護生活を送っていただけるよう、わかりやすく説明していきます。介護の負担を軽減し、より快適な生活を送るための手段として、介護休業給付制度を活用することができますので、ぜひ最後までお付き合いください。